tempo3 「塩梅」2021秋号


甘すぎず、辛すぎず。近すぎず、遠すぎず。
物事の程度が過不足なくぴったりと澄み渡ったときの感触は、
生きる喜びそのまんま。
慣れ親しんでいるものでも、はじめましての人でも、
相対したその瞬間から、ちょうどいい具合、ちょうどいい距離感、
ちょうどいい加減を探しては、手繰り寄せる時間が動きだしていきます。
美味しい、嬉しい、楽しい、気持ちいい。
思わず目が合うようなタイミングを発見しては、手放して、
私のテンポ、私の塩梅は、身体に染み付いていく。
ときにはバランスを取るために、バランスを崩すこともあります。
一歩踏み出した視線が捉えるのは、
綿密に計画しても、積み上げた術を以てしても、出合えない景色。
本来の、そのままの自然のかたち。
コントロールすること、できないこと。
風向きを読みながら見つけ出すさじ加減は、独りでに始まるものだから、
すくいとっては世界と分かち合いたくなります。
第3号のテーマは“塩梅”。
あの人に、あの場所に、染み付いた術と自然。
止まらない時間のなかで絶えず循環、更新していく、
ちょうどいい加減を観察しました。