スマートメンテナンスの未来と現実について、
今できることと今後の展望をご紹介

インフラ・設備の老朽化やノウハウのある人材の不足などによるメンテナンスの質の低下故の発生を減らすため、ICTを活用してメンテナンス全体をデジタル化する「スマートメンテナンス」の重要性が高まっている。メンテナンスの全プロセスをデジタル化するには、「情報のデジタル化」はもちろん「データ分析・活用による予防保全の強化」といった取り組みも不可欠になる。メンテナンス領域でDXを加速するスマートメンテナンスの実現に向けた「3つのステップ」を紹介する。

スマートメンテナンスの本質

近年、道路や橋梁、ダムなど社会インフラやビル、工場などのメンテナンスの現場でICTの活用が注目されている。各種センサーを利用して様々なインフラ・設備からデータを取得し、それらビッグデータを活用してインフラ・設備の維持管理を効率化する取り組みだ。こうした取り組みは「スマートメンテナンス」と呼ばれている。

スマートメンテナンスを実現すれば、製造現場や社会インフラにおけるメンテナンスが大きく様変わりするだろう。センサーなどIoT機器により、工場内の設備、橋やビルなど建築物の状態を監視したり、異常発生時に通知されるなど、現地に行かなくても遠隔から確認できる。またそのデータの蓄積によって経年劣化の状態もAIによって管理され、効率的な計画に基づいてメンテナンスを進められるようになる。

このスマートメンテナンスの効果は、単にICTを活用してメンテナンスを効率化するだけにとどまらない。株式会社富士通研究所 プリンシパル・エキスパートの澁谷利行は、スマートメンテナンスの本質には、「事故を起こさないこと」「設計からサプライチェーンに至る作業の無駄をなくすこと」があると説明する。(注1)

インフラ・設備のメンテナンスには危険が伴うことも多く、ときには事故につながることもある。重大事故の発生は年々減少傾向にあるとはいえ、設備の老朽化、あるいは作業員の経験不足やうっかりミスに起因する事故はなくならない。その解決にはノウハウを持った人材の育成が必要だが、そもそもメンテナンスに関わる人材そのものが減少傾向にある。ICTやIoTを活用することの重要性が高まっている。

人の命に係わるような重大な「事故を起こさない」ためには、スマートメンテナンスによって、人が危険な場所に近づかずに作業できるようにすればよい。例えば、危険な場所や夜間は人間の代わりにロボットが作業し、人は遠隔でロボットを操作する。そうすることで、人が危険な場所に立ち入る必要もなくなり、「安全・安心」と「作業効率化」を両立することができる。

また、ICTをメンテナンスに活用できれば、設計段階から今後のメンテナンス内容を考慮する「エンジニアリングチェーン」を実現できる。これにより「設計からサプライチェーンに至る作業の無駄をなくすこと」が可能となる。設計段階からスマートメンテナンスを視野に入れておくことで、橋梁やビルなどの情報をデータ化しやすくなり、経年劣化の状態をAI(人工知能)で把握し、予防保全を計画するといったこともできる。

[図] スマートメンテナンスの本質

(注1)2019年11月Fujitsu Insightセミナー講演より

製造業のDX実現のカギは「ソフトウェア化」

経済産業省が2018年に発表した「DXレポート ~ITシステム『2025年の崖』克服とDXの本格的な展開~」では、「既存システムのブラックボックス状態を解消しつつ、データ活用ができない場合、データを活用しきれず、DXを実現できないため、市場の変化に対応して、ビジネス・モデルを柔軟・迅速に変更することができず」、その結果「デジタル競争の敗者になる」と指摘されている。

インフラ管理事業者やメーカーにおいても、既存のICTシステムの維持管理の負担が重く、スマートメンテナンスのためのシステム構築などの先行投資ができない状態にある。しかしそのままではデジタル競争の敗者への道が待っている。

それを回避し、新しいデジタル技術を適用していくには、ICTシステムの刷新だけでなく、既存システムからデータを収集蓄積し、サイバーフィジカル・システムを構築して、スマートメンテナンスへと到達するための見直しも不可欠といえる。

それでは、どのようにすればメンテナンスのDXを実現し、スマートメンテナンスへの道を進むことができるのだろうか。澁谷は「DXにはいろいろな考え方があるが、製造業におけるDXとは、ソフトウェア化だと理解すればいいでしょう」という。製造業においてメンテナンスの全プロセスをソフトウェア化ができれば、「コンピュータ上(サイバー)で現実の物理的(フィジカル)な問題を解決する」技術である「サイバーフィジカル・システム」を活用できるようになる。

このサイバーフィジカル・システムの構築によって、現場の実際のメンテナンス作業とサイバー空間をシンクロさせ、サイバー空間でメンテナンスの改善サイクルをダイナミックに回すことができるようになる。つまり、IoTセンサーから現実空間のデータを収集し、サイバー空間上で点検やシミュレーションをして、修繕が必要になったときだけ人間が作業現場に向かう。またデータを蓄積することで、AIを組み合わせた活用も推進しやすくなる。

それが澁谷の示すソフトウェア化であり、スマートメンテナンスのビジョンだ。

[図] 富士通が考えるスマートメンテナンス

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概要

  • スマートメンテナンスの本質
  • 製造業のDX実現のカギは「ソフトウェア化」
  • スマートメンテナンスの実現へ向けた3ステップ
  • まずはステップ2を見据えたステップ1の実現を

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