“レガシー”財務経理業務をデジタル改革へ
富士通とみずほ銀行がタッグで推進

各業界・業務でデジタルトランスフォーメーションが進む中、請求書の発行や入金の消込といった財務経理業務のデジタル化は取り残されている。“レガシー”ともいえる財務経理業務の問題を感じながら既存の仕組みに捉われている状況を変えようと、富士通とみずほ銀行がタッグを組んで財務経理業務のデジタル化プロジェクトを開始した。ただ、財務経理業務のデジタル化は、1社単体では意味がない。取引先65社を巻き込み、プロジェクトを進め、2019年3月にそれが完成した。ただ、真のゴールは、社会インフラとして日本の企業全体が利用し、財務経理関連のすべての取引業務をデジタル化することだ。本プロジェクト の経緯を追い、その利用価値や意義を明らかにする。

2019年3月、富士通とみずほ銀行が実施した「請求支払業務電子化・売掛金消込自動化サービス」の共同開発が完了した。同サービスは、電子請求と金融EDIの技術を活用することで、企業における請求・支払・売掛金消込など財務経理業務の大幅な効率化を図るものだ。両社が2016年2月から2018年12月まで共同で進めてきたPoC(実証実験)の結果を踏まえ、多くの企業が参加できるサービスの開発に取り組んできた。今回の開発完了を受け、富士通が2019年4月にサービスの提供を開始する。

本サービスの発端は、富士通自身の業務効率化を狙ってスタートしたもの。だが、サービスによる収益化が本来の目的ではなく、日本の財務経理業務をデジタル改革することを真の狙いとする。なぜ、このサービスの開発に着手したのか、みずほ銀行や取引先を巻き込んで何をしたのか、何を作り上げたのか、利用すればどのようなメリットがあるのか、見ていこう。

「年50万通もある請求書発行を何とかできないか」

「財務経理部門の債権管理業務で、最も多くの工数が掛かっていたのが紙の請求書を発行する作業でした。年間50万通もの紙の請求書を、人手で1 通1 通印刷・封入・投函しています。今やデジタルの時代なのに、いまだに前時代的なマニュアル作業がまかり通っている現状に、『なぜデジタル化できないのか?』と忸怩たる思いを抱えていました」。富士通財務経理本部 財務部 営業財務部長 浜俊明は、プロジェクト立ち上げに向かった想いをこう語る。

請求書発行と並んで負担が大きいのが「入金消込」だ。入金消込とは、売掛金などの債権の情報と、会社の口座に振り込まれた入金情報とを照合し、特定の債権が回収されたかどうかを判別する作業。「この製品・サービスを売った代金は、きちんと支払われたのかどうか」を確認する。

一見すると単純な作業で、容易にシステム化できそうだが、実際にはそうはいかない。「どの顧客にいつ、どんな製品・サービスをいくらで売ったか」という個別の債権は、請求書番号などのID情報によって一意に特定される。しかし、顧客からの代金振り込みに付随する情報には、せいぜい振込金額や振込日、振込名義人ぐらいしかない。つまり、個々の債権と入金を明確に対応付ける「キー」となるID情報が存在しない。

しかも大抵の場合、代金の振込は月に1 回、複数の取引金額を1つにまとめた合計金額のみが振り込まれる。個々の債権と入金を対応付けるID情報がない中、合計金額の内訳をひも解き、「この振込で回収できた債権はこれと、これとこれ……」といった具合に1つずつ特定しなくてはならないのだ。

実際には、債権と振込それぞれの付随情報を突き合わせる名寄せ処理によって、ある程度の自動照合は可能だ。しかし100%のマッチングは難しく、人手による照合作業が残ってしまう。実際、富士通でも、ひと月当たり約1万3000件の入金のうち、システムによって売掛金と自動照合できるものは全体の6 割ほど。残りはすべて「どの債権に対応する入金なのか」を1件1件、入金元に問い合わせたり、入金元との過去のやり取りの記録をひも解くなどして売掛金との照合を行っており、多大な工数が掛かっていた。

「こうした課題を解決するには、まず紙の請求書を電子化すること。加えて、入金消込作業を100%自動化するには、バイヤー側(製品やサービスの受け取り側、支払処理を行う)からサプライヤー側(製品やサービスの提供側、請求書を発行する)への代金振り込み時に、入金と売掛金を正確にマッチングさせるための何らかのキー情報を受け渡す必要があります。そのためには、振込サービスを提供している銀行の協力を仰ぎ、銀行が取り扱う振込データの中に何らかの形でキー情報を埋め込んでもらうのがいいのではないかと考えました」

銀行が提供する総合振込サービスでやり取りされる振込データの中には、ユーザーが自由に扱える20ケタのデータ領域(EDI情報)が含まれている。この中に、入金と売掛金をマッチングさせるためのキー情報を埋め込んで、代金振込時にバイヤーからサプライヤーに手渡すことができれば、サプライヤー側での入金消込処理を100%自動化できるのではないか──。浜らはこうしたアイデアを念頭に、みずほ銀行に相談を持ち掛けた。

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“レガシー”財務経理業務をデジタル改革へ
富士通とみずほ銀行がタッグで推進

概要

  • 「年50万通もある請求書発行を何とかできないか」
  • 富士通とみずほ銀行で共同検証プロジェクトを発足
  • プロジェクトの参加企業を説得して回る
  • 参加企業からのヒアリング結果を基に共通プロセス・データモデルを策定
  • クラウドを介在させることで支払請求・入金消込業務を大幅に効率化
  • サプライヤー・バイヤーともに大幅な業務効率化を達成
  • 多くの企業が参加する「情報連携プラットフォーム」を目指す

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