スマートフォンで立体(3D)画像撮影

今使っている携帯電話やスマートフォンに小さな部品を取り付けるだけで、簡単に立体(3D)画像が撮影できる技術を紹介します。

人間の「目」が物を立体(3D)に見る仕組み

人間は、右目と左目で実は違う画像を見ています。知っていましたか?

ちょっと試してみよう

まず、画面から1メートル位はなれて、腕を伸ばしてイラストのコップの中心を指でさしてみてください。
その腕をそのままにして、目を片方ずつ閉じてみてください。右目だけで見たとき、左目だけで見たときと比べてみて、指している位置がずれていませんか?

あなたは、どちらの目が両目で見た時と同じように見えましたか。

(おまけ)両目で見た時と同じように見えた目が、あなたの「優位眼」になります。優位眼は人それぞれ違います。視力の良い方が優位眼というわけではありません。

私たちの目

私たちの2つの目は、左右約5~6センチメートルはなれたところにあります。そのために、目の前にある「コップ」を見たとき、左目と右目では、それぞれ違う角度から見ています。
左目と右目で見た画像をまとめて、ひとつの立体に見せてくれるのが「脳のはたらき」です。

スマートフォンを使って立体(3D)写真を撮る仕組み
その1、立体(3D)画像が撮れるアタッチメント

立体(3D)にするには、右目用と左目用の画像が必要です。私たちの目と同じく、2つの画像は同じ高さで、横に数センチメートルずらして撮影したものです。そんな画像が簡単に撮影できるアタッチメント(部品)を開発しました。

アタッチメント

スマートフォンのカメラのレンズ前に取り付けます。アタッチメントの中には、4枚の鏡が入っています。これを使うと、右目用と左目用の画像を同時に撮影することができます。このアタッチメントは手のひらに乗る大きさです(縦1.4×横5.7×高さ1.4センチメートル)。

アタッチメントの構造

アタッチメントの中には向いあう鏡が左右に1セットずつ配置されています。スマートフォンを対象物に向けると、アタッチメントの左右の鏡が、対象物からやってくる光をそれぞれに反射します。
その結果、視点が水平方向に数センチメートル異なる2つの画像が、スマートフォンのカメラに一度に映し出されます。

スマートフォンを使って立体(3D)写真を撮る仕組み
その2、見やすい立体にするために、コンピュータで歪みを補正

アタッチメントをスマートフォンに取りつけて撮った画像には、少し歪みがあります。この歪みをきれいに補正すると、見やすい立体になります。

歪みをきれいに補正

具体的に「歪みを補正する」というのはどういうことか説明します。
まず、異なる視点から撮影した直後の「E」の画像が2枚あります(歪みがわかりやすいように英字の「E」という文字を使います)。左目用の「E」の文字の一番上の横棒を見ると、右下がりになっています。また、右目用の「E」はは、一番上の横棒は左下がりになっているので、この2枚は「歪んだ画像」になっています。そこで、左右それぞれの「E」の文字の一番上の横棒をまっすぐにそろえて、歪みを補正します。

その歪み補正をコンピュータにやってもらいます。

難しい作業はコンピュータにおまかせ

歪みを補正する作業は、クラウド上のコンピュータで行わせることにして、スマートフォンには特別な処理を必要としません。そのため、スマートフォンは皆さんの持っているものを使え、撮影した歪み付きの写真をインターネットで送ると、立体写真(3D)に直してくれます。

クラウド上のコンピュータ(クラウドコンピューティング)

ネットワークにあるコンピュータ資源を、利用者がインターネット経由でアクセスして利用する形態のことをいいます。立体(3D)撮影では、スマートフォンをインターネットへのアクセス手段として用いています。

スマートフォンを使って立体(3D)写真を撮る仕組み
その3、立体(3D)に見るために必要なアナグリフメガネ(赤青メガネ)

角度が違う2枚の画像を、左目と右目のそれぞれで見るために、赤色と青色のフィルムがついたメガネを使います。このメガネを「アナグリフメガネ」と言います。

アナグリフメガネ(赤青メガネ)

メガネのレンズ部分に赤と青のフィルムがついたメガネを見たことがありますか?メガネの枠に、左に赤色セロファン、右に青色セロファンをはめたもので代用することもできます。

赤色セロファンを通して、白地に「赤」で書かれた線を見ると、白い部分と区別できなくなり見えなくなります。白地に「青」で書かれた線を見ると、光がさえぎられ、黒く見えます。
青色セロファンを通して「青」の線と「赤」の線を見ると、赤色セロファンの時と同様に、「青」の線は白地と区別できなくなり、見えなくなります。そして赤色の線だけが黒く見えます。

アナグリフメガネで見る画像

左右異なる角度から撮影された画像を、それぞれ赤と青の光で重ねて再生します。その画像を赤青メガネで見ると、左目は青色がついた左目用の画像を見て、右目では赤色がついた右目用の画像を右目で見ることになります。人間の脳はそれら2つの画像の違いに基づいて、前後方向の広がりを計算し、立体感を産み出します。

立体(3D)画像を見る方法はいくつかあります。ここでは、アナグリフメガネで見る方法を紹介しました(講座の3ページと4ページの撮影方法の場合、3Dを見る方法は問いません)。

その他の立体技術

ホログラムも立体画像

物体にレーザー光を当て、その反射光を特殊な材料(感光材)に記録します。それにまた光をあてて見ると、立体として再現された物体の像を見ることができます。
この時の材料(感光材)をホログラムといい、ホログラムを用いた立体表示技術をホログラフィといいます。ホログラフィは、理想的な立体表示技術といわれていますが、同時に非常に難しい技術です。

ホログラムは例えば、銀行のキャッシュカードやクレジットカードなどに用いられています。カードの表面にあるピカピカ光っている部分です。ホログラムの複製はとても難しいので、偽造を防ぐためにホログラムが用いられているのです。このことは、ホログラフィ技術の難しさを示していると言えるでしょう。

小話

疲れる立体

私たちの目は左右についていますが、上下にはついていませんね。左右の画像の違いは、脳が立体に見せてくれますが、上下に大きくずれた画像を左右の目に見せた場合、無理やり立体にしようとして脳が疲れてしまうので、「疲れる立体」になります。

娘の夏休みの自由研究

ある団体から、子供向けに授業をしてほしいと頼まれ、この講座の内容(スマートフォンで立体映像撮影)を授業することになりました。
普段、学会などで発表することになれている研究員ですが、さすがに子供向けに説明をしたことがありませんでした。そこで、作った授業の資料を使って、まず自分の娘に授業してみることにしました。すると、今までお父さんの仕事について、あまり知らなかった娘でしたが、授業をしたことで、「お父さんの仕事」を知る良い機会になりました。そしてさらに、娘が夏休みの自由研究の課題に困っていたので、お父さんの仕事がヒントになり、自由研究を仕上げることができました。

もちろん、本番の子供向け授業も「3D写真ってこんな風に撮れるんだね、知らなかった」と言っていただき、大好評でした!

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