ヒマシ油から作ったプラスチック

富士通では、ヒマシ油から作るポリアミド11を主成分にもったプラスチックの研究開発を行っています。繰り返し曲げても白くならない、かつ量産性に優れているこの植物性プラスチックは、材料に含まれる植物原料の割合が非常に高いため、たくさん使うことで石油資源の使用量を減らして地球環境への負荷を小さくします。

ご利用にあたっての注意

この講座の内容は、2007年当時の情報 です。予告なしに更新、あるいは掲載を終了することがあります。あらかじめご了承ください。

最終更新日 2007年6月1日

「ヒマシ油」ってなんだろう

「ヒマシ油」はヒマ(トウゴマ)という植物の種子から抽出される油です。 原産地は熱帯東部アフリカやインドで、この油の多くは化粧品や下剤、塗料などに使われています。

この油から作ることができる「ポリアミド11」から、植物性プラスチックができます。

ポリアミド11の製造工程

ポリアミド11は次のような工程で植物から作られます。

植物:ヒマ(トウゴマ)の「種子」を使います


絞って「ヒマシ油」を抽出します


ヒマシ油を分解し「11アミノウンデカン酸」を生成します


結合させて「ポリアミド11」を作ります

400粒のヒマの種(200g)からおよそ40gのポリアミド11が作れます。

特長

植物性が高い

ヒマシ油を使うことにより、トウモロコシを原料とする場合と比較して、植物性プラスチックに含まれる植物由来の原料の割合を高くすることができました。
例えば、試作に成功したノートパソコンのカバー部品では、植物成分を60~80%も含んでいます。 ポリアミド11は熱によって分解される際の温度 (=耐熱分解性) が高いため、植物成分を多くしても高い耐熱性が得られます。そのため、植物性を高くできました。

植物性プラスチックに含まれる植物の割合、トウモロコシプラスチックは50パーセントに対して、ヒマシ油プラスチックは60から80パーセントです。

柔軟性がある

1万回繰り返し曲げても屈曲部が白くなりません。これは屈曲部に細かな亀裂がないことを意味します。そのため、他のプラスチックに 比べて簡単には折れません。折れない理由は、結合されたポリアミド11に可塑剤(説明-1)と柔軟成分を加えると、分子が互いに結んでいる力が弱まり組織全体の規則性が緩むからです。 性質は、ゴムとプラスチックの中間くらいです。

(説明-1) 可塑剤
ある材料に柔軟性を与えたり、加工をしやすくするために添加する物質のことです。

食糧と競合しない

ポリ乳酸の原料となっているトウモロコシやサトウキビは、人間の食糧でもあるため競合が問題になりやすいといわれています。 ヒマシ油は工業材料なので、こうした心配がありません。

応用と今後の課題

応用:富士通のノートパソコンに採用

07年春モデルより、MG55U、MG50U/V、MG50Uのコネクト部カバーに使用されています。引き続き夏モデルでも適用されています。

後の課題:強い植物性プラスチック

強度を上げるために充填剤(説明-1)を高濃度で添加すると、高い耐衝撃性を保つことができます。それにより、パソコンの筐体部分への採用が期待できます。その他、携帯電話への小部品への適用や、大型部品への適用を検討していて、それに向けて研究を進めています。

(説明-1) 充填剤
ある材料に、老化防止・補強などの目的で加えられる化学物質。プラスチック、ゴムなどに用いられる。

小話

屈曲性能テストで筋力アップ

折り曲げても白くならないという特性をテストするため、試作品を作っては自らの指で折り曲げてテストを繰り返していたF研究員。
これが意外と大変なんです。試作品の両端を持ち、あとは腰を落として力の限りマッチョポーズ。(かどうかは定かではないが)
こうして、筋トレ・・いえ、テストを終え、無事に製品としての一歩を歩み始めたヒマシ油から作ったプラスチックなのでした。
もちろん何万回という屈曲性能テストには機械を使いますよ。

おまけ(硬度の話)

モノの硬さを表す単位を「ショア硬度」といいます。
硬さは「ショア硬度計」と呼ばれる機械を使っています。
ショア硬度計は一般に反発硬度計と呼ばれるものに属し、重さ約36gのダイヤモンドハンマーを約19mmの高さから落下させ、ハンマーの反発高さによって硬度を測定します。

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