「守る」技術

手のひら静脈認証

本人を確認する技術として、暗証番号やICカードなどを利用しておりますが、盗難、忘却、偽造などの危険性があります。そこで体の中にある血管(静脈)を使った認証技術を紹介します。

静脈認証ってなんだろう

静脈認証とは、手のひらの静脈を使って本人かどうか判断する技術です。

登録と照合

あらかじめ登録しておいた静脈模様と、照合する静脈模様を比べて判断します。

  • 登録

  • 照合

  • 非接触型
    手のひら静脈認証センサー

    (サイズ)幅2.9cm、高さ1.12cm、奥行2.9cm
    (認証速度)撮影1秒、照合0.5秒
    ・グローバルスタンダード対応

静脈のあれこれ

  • 静脈の役割

    静脈とは、血管の種類の中の一つです。
    二酸化炭素や老廃物など不要なものを含んだ血液を心臓へ戻す働きをします。

  • なぜ静脈なんだろう

    体には指紋や網膜、顔面など個人を区別できる部分が沢山あります。血管(静脈)は体の中なので、簡単に他人に知られることはありませんので、個人認証に適しています。

  • どうして動脈ではなく、静脈を使うんだろう

    近赤外線を手のひらに照射した際、静脈は動脈に比べて皮膚側に近いので読み取りやすいからです。また、静脈中の赤血球が特定の近赤外線を吸収するという特性を利用しているため、動脈ではなく静脈の模様だけを読み取ることができるからです。

なぜ手のひらを使った認証なんだろう

体の他の部分ではなく手を使う理由

  • 静脈の本数が多く、模様が複雑

  • 個人差が出やすい

    (静脈の線のカーブや分岐などが複雑な分、個人情報量が多くなり認識率が高い)

手の甲ではなく手のひらを使う理由

  • センサーに手のひらをかざす動作が自然

  • 安定した情報を得られる(静脈を読み取る時に障害となる体毛がないため)

原理-読み取り

読み取りの原理

  • (1) 近赤外線を発光して、手のひらに当てます

  • (2) 手のひらから跳ね返った近赤外線をセンサーで受けます

ポイント

静脈に流れている赤血球の中のヘモグロビンは酸素を失っています。このヘモグロビン(還元ヘモグロビン)は近赤外線(波長については「赤外線-波長」をご覧下さい)を吸収します。そのため、手のひらに近赤外線を当てると静脈がある部分だけ反射が少なく、映像上、暗く映し出されます。 つまり、反射した近赤外線の強弱で静脈の位置を認識しています。

(3) 読み取った静脈画像の静脈だけを取り出します

  • 元画像

  • 近赤外線画像

  • 静脈画像

  • 読み取った画像の中で、シワやおうとつなどの黒い影と、静脈の黒い線は、どうやって見分けているの?

  • 黒くなる濃さの変化具合が違うので、見当がつくんですよ

原理-照合

照合の手順

(1) 画像の選出

毎秒約20枚連続撮影した照合画像の中から、登録画像と一致する最適な画像を瞬時に選び出します。

(2) 自動照合

登録画像と照合画像、二つの画像を重ね合わせて静脈の模様が一致しているか自動で判断します。
(分かりやすいように、照合画像に色をつけていますが、実際に色はついておりません。また、静脈の模様特徴を抽出し、特徴同士を比較しています。)

【本人と認証する場合】

【本人と認証しない場合】

最新技術

センサーがとても小さくなりました

従来の静脈認証センサーと比べると、厚さは11mmから5mmと薄くなり、容積は80%も減すことができました。薄型化が進むタブレット端末などのモバイル機器にも組み込むことができるようになります。

(そもそもセンサーってどんな部品からできているのかな)

私たちがセンサーと言っているのは、広角レンズと拡散照明部品、イメージセンサ(とらえた光を1枚の画像にする部品で、レンズの下に付いています)をまとめた総称です。

サイズは小さくなっても、性能は変わらない!

サイズが小さくなっても性能が落ちるようでは、活用の場が限られます。そこで、性能は従来の高精度なまま、サイズだけを小さくする技術を2つ開発しました。

1. 広角レンズと拡散照明の改良で、広範囲を歪みなく

レンズのサイズを小さくすると、画像を取り込む際に端の部分に歪みができ、正しい画像情報を取り込むことができませんでした。そこで、レンズを改良し、歪みのない正しい画像を取り込むことができるようになりました。

また、照明部品そのものが小さくなっても、広がる光の範囲を広げたので、 手のひら全体に光を当てることが可能になりました。

2. イメージセンサに画質補正をプラス

イメージセンサを従来のサイズから小さいサイズにすると、センサの中の1画素が小さくなるため、光(赤外線)を受け取れる量が少なくなり、画像が暗くなり画質が低下します。そこで、補正をかけて、小さくても従来サイズと変わらない認証精度にすることができました。

応用

銀行、病院、大学で使用した場合の応用例をご紹介します。

銀行のATMで使った場合

なりすまし防止機能(生体認知機能)があるので、安心です。他人が自分の口座からお金を引き出すことは不可能ですが、逆に自分の手をけがしてしまった場合はどうしたら良いのでしょうか。
例えば、予備としてもう一つ別の手のひら静脈の情報を登録できるところもあります。 例えば、本人の右手と左手や、もしくは配偶者の手など、登録してある手のひらを怪我等で使えない場合などに予備のデータを登録してあると安心ですね。
(注意)銀行によってサービス方法が異なります。

病院で使った場合

非接触型なので、病院でも衛生上、安心してお使いいただけます。
例えば、病院内で薬品庫のような入室できる人が限られているところに設置した場合、衛生面とセキュリティ面の両方を兼ねそろえることができます。

学校で使った場合

ICチップ搭載の学生証を持つと各種証明書を自動発行できて便利です。

(利用方法)
  • ICチップ搭載の学生証をカードリーダーに近づけて、次の認証に必要な名前や静脈の情報などを伝えます
  • 静脈を認証させます
  • 本人であることが確認されると、成績証明書を受取れます

小話

毎日計測しています

静脈認証技術を研究しているグループは、何年にも渡り毎日自分自身の静脈を計測しています。
それは、この認証技術が開発されてから長い歴史があるわけではないので、自分達の静脈を計測することで、季節の変化や普段の行動によって、認証にどのような影響を与えるかを自分達で確認するためです。この結果、手のひらの静脈は環境の影響を受けにくく、非常に安定した認証が可能であることを確認しています。

(研究員の娘さんも協力)

静脈のパターンは子供の頃から大きくは変わらないと言われていますが、それを実証しようと、娘さんの手を毎週、計測しているそうです(研究員はすでに大人なので、実証できない)。幼稚園児の時から、小学5年生になった今でも計測を続けていて、研究員にとっては「今は娘の成長記録のひとつになっているんですよ」とのことです。もちろん、計測を続けた5年間、静脈パターンは変わっていないそうです。

中国でも大人気


ある学会での出来事です。通常、発表者に質問があると、発表後に発表者のまわりに人が集まります。その発表内容が興味深いものであれば、あるほど人だかりになります。
富士通研究員が中国で開催された学会で発表を終えたあと、沢山の学生に囲まれ質問攻めにあったそうです。数年前までは、静脈認証の話をしてもキョトンとされるばかりでしたが、静脈認証が広まるにつれて、大学での研究も盛んに行われるようになったようです。


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