「支える」技術

CPU間の送受信回路

多くの家庭用パソコンやスマートフォンは、CPUを1個だけ使っています。それに対してスーパーコンピュータやサーバなど、速い計算をしたり大量のデータを扱ったりするコンピュータでは複数のCPUが同時に働いています。それらのCPU間のデータ送受信(以下、これをデータの「転送」と呼びます)を従来の2倍に速める技術をご紹介します。

CPUってなに?

この講座ではCPU同士のデータ転送を速くする技術を紹介します。その前に、CPUとは何なのか、説明しましょう。

CPUの役割

コンピュータに使う部品で、何億個ものトランジスタ(スイッチ)が集積された電子回路です。
コンピュータの中で「頭脳」の役割を持っています。マウス、キーボード、ハードディスク、メモリ、周辺機器などからデータを受け取り、計算し、判断し、その結果をディスプレイやメモリ、ハードディスク、プリンタなどに送り出します。
CPUとは、Central(中央) Processing(演算処理) Unit(装置)の頭文字です。

CPUはパソコンやサーバのみならず、さまざまな家電や自動車など、身のまわりの多くの電気製品を見えないところからコントロールしています。

CPUの写真

CPU同士のデータ転送

スーパーコンピュータや次世代のサーバなど、速い計算をしたり大量の情報を処理したりするコンピュータには、複数のCPUが入っています。

富士通サーバ「SPARC Enterprise(スパーク・エンタープライズ) Mシリーズ」は、最大64個のCPUを使って計算をしています。それらのCPUは単独で動いているのではありません。お互いに必要なデータや計算結果をやり取りし、更なる計算を重ねています。
今回開発したのは、CPU同士でやりとりされる膨大なデータを効率よく転送する送受信回路です。

例えば

やさしい技術講座を書く場合も、一人でコツコツ全てを書くのではなく 数人で分担した方が、原稿が早く仕上がります。その際、それぞれが勝手なことを書いていては、ストーリーに統一性が無く、伝えたいことが伝わらない講座になってしまいます。そこで、お互いにどんな文章やイラストを使って書くのか相談しながらかきます。それと同じで、CPUもお互いに必要なデータをやり取りしながら、計算結果を出しているのです。

CPUの中にある送受信回路

サーバに複数個のCPUが入っている場合、必ずCPU内に送受信回路が入っています。

送受信回路はどんな仕事をしているの?

CPUの中にある送受信回路は、サーバに入っている複数個(例えば64個)のCPU同士をつなげて、CPUのデータをやり取りするのが仕事です。それぞれのCPUには、送信回路と受信回路が内蔵されていて、CPU同士を銅配線でつないでいます。

速い送受信回路が必要になってきました

近年、サーバが扱うデータの量が多くなるとともに、CPUの計算速度がどんどん速くなっています。それと同時にCPU同士のデータのやりとりも、同じように速くする必要があります。そのためには送信回路と受信回路の両方がその速さに対応できなければなりません。

例えば、

運動会のリレーでそれぞれの選手が速く走っても、バトンの受け渡しに時間がかかってしまうと、結果的に遅くなってしまいますよね。それと同じです。コンピュータを結果的に速く動かすには、CPU内の処理速度を上げるだけでなく、CPU同士のデータのやりとりも速くする必要があります。

そこで、データ転送速度を2倍にする回路を開発しました。次の項目で紹介します。

受信回路

富士通ではCPU間の送信回路と受信回路の両方を開発しています。この講座では、「受信回路」についてご紹介いたします。

ちょこっとメモ!~そもそもCPUの信号ってどんなもの?~

CPUの信号は「0」と「1」の集まりです。信号を送る際には、数字のゼロやイチではなく、電圧の高低によって「0」「1」を作って送ります。信号を受け取る際には、電圧が低い状態であれば「0」、電圧が高い状態を「1」と判断します。信号が「0101」の場合、電圧の高低が交互にあらわれる矩形波(くけいは)になります。

受信回路の構造

CPU内部の送信部から発信された「0」「1」信号は、銅配線の中を伝わった後、次のCPUの受信回路で受け取られます。 受信回路には、信号入力回路、損失補償回路、「0」「1」判定する回路、信号出力回路が入っています。

受信回路の役割

送信回路から発信された信号は「0」「1」の電圧変化がはっきりした矩形波(くけいは)でした。しかし受信回路に到着するころには電圧変化がゆがんでしまい、「0」「1」判定できなくなった状態になっています。 その理由は、銅配線の中で信号がぶつかりあったり、 配線材料の銅の特性で一定の周波数成分が吸収されたりしてしまうからです。 そこで、「0」「1」を判定する回路の前に、「損失補償回路」を使って、信号を元の矩形波に近い状態に戻してから「0」「1」判定をして、出力します。

次の項目で富士通で開発しました 「損失補償回路」を説明します。

開発した損失補償回路

損失補償回路って?

受信回路にある「損失補償回路」は、歪んでしまった電圧変化を信号が読み取れるよう元にもどす技術です(損失を補う回路)。例えば、送られてきた信号を3つの周波数領域に分けます。従来技術では、どうしても元に戻せない変化(中周波数領域:0.1から1ギガヘルツ)があるために、データの転送速度が低く抑えられていました。(「0」「1」判定に時間がかかっていたからです)
そこで富士通では、従来技術では元に戻せなかった中周波数領域を元に戻す回路を開発し、送信時に送られたデータに近い状態に戻すことに成功しました。それは「0」「1」判定の時間の短縮につながるため、速いデータ転送をする際に大変有効です。

クマのイラストを使って「補償回路」を説明してみましょう

例えばイラスト情報を1秒間に隣のCPUに何枚送れるかを試したとします。そのイラストは3種類の情報、「色」「パーツ」「輪郭」に分けて送られます。従来の受信回路の場合、イラストの「色」と「輪郭」を表す情報はきれいにして受信可能でしたが、「パーツ」を表す情報はぼやけていたため、そのイラスト情報が示すものはなにか判断するのに時間がかかっていました。
今回の新しい回路を受信回路に追加した場合、イラスト情報の「色」「パーツ」「輪郭」情報のすべてをきれいにすることができるため、何が描いてあるのか判断する時間が短くなりました。

その結果、

今まできれいにできなかった「パーツ」情報もきれいにできます。そのため、送信側の情報を瞬時に判断でき、2倍の情報を受け取れることができるようになりました。

具体的に私たちの生活がどう変わるの?

データベースの検索が速くなります。

お客さまの希望にタイムリーにこたえます

例えば、携帯電話やスマートフォンの販売店では、店内の限られたスペースにお客さまの希望の商品を欠品することなく、常に店頭に並べておきたいですよね。またお客さまも品揃えの良い販売店に行きたいものです。今までなら人気機種、人気カラーが売り切れた場合、販売店から発注しても、本店のサーバが夜中にデータ処理をして、数日後に納品ということもありました。
もし、本店のサーバのデータ処理が速い場合、午前中の人気機種の売れ行き具合をみて、店長がお昼前には発注、数時間でデータ処理、その日の午後には納品ということが可能になります。
お客さまの希望にタイムリーにこたえられる人気店になりますね。もちろん、お客さまだけでなく、販売店側も商品の在庫管理をなくすことができ、販売店の売上管理、スタッフの勤怠管理、新規商品の検索など毎日の業務がスピーディーにできるので一石二鳥です。

ネットワーク販売のお客さまのイライラをなくします

例えば、大きなイベントのチケットを購入するために、ネットワーク販売開始時間前からパソコンやスマートフォンの前で待機したことありませんか?
販売開始時間になって購入しようとしても、購入画面が反応しなくなってしまい、購入できるのかできないのかわからず、そのままパソコンの前でじっと我慢することがあります。これは大勢の人が一斉にアクセスしたため、チケット販売会社のサーバが混乱してしまい、処理がおいつかなくなってしまったために起きてしまう現象です。
そこで、処理能力が速いサーバならサーバが混乱することなく、スムーズに処理ができ、その場でチケット購入結果がわかります。つまり反応しなくなってしまった画面の前でじっと待たなくも良いので、お客さまへのサービスの向上につながりますね。

小話

研究員の悪夢?

研究所では、実験用のシステムボード(サーバの中で、CPUやメモリなどを搭載するボード)の上で動作を確認をしながらLSIを開発しています。
何度も実験を繰り返し、徹底的に動作確認を行った後、工場にて、開発したLSIをサーバに組み込むことができます。工場で行う動作確認の際には、新サーバに関わった人たちが勢ぞろいします。 その際、たくさんの部品にひとつでも不具合があると新サーバに影響します。そのため、研究所内でどんなに徹底的に確認していようとも、実際の工場で行われる動作確認の前日には新サーバのLSIを開発した研究員は、「関係者がみている前でLSIが動かない夢」を見るそうです。
「夢で良かった…」とため息とともに目覚めた日は、いよいよ本番のシステムボードの上で動作を確認することになります。開発したLSIが新サーバで無事動作するとわかった時は、本当にうれしいそうです。


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