株式会社ラスコ 様

空気や熱など、目に見えない対象を可視化
開発スピードが向上し、顧客からの信頼とビジネスの拡大に貢献

半導体の製造には、温度・湿度などの極めてデリケートな環境が要求されます。その最適な環境を作り出すための装置を開発、販売する株式会社ラスコでは、富士通の3次元CADシステム「iCAD MX」、「iCAD SX」を導入し、設計に活用してきました。その3次元データを活用するために、富士通九州システムズ(以下、FJQS)より熱流体解析ソフトウェア「Autodesk CFD」を導入しました。

解析を通じて空気の流れという目に見えない対象の動きが可視化。これにより顧客に対して設計の根拠を示せるようになり、顧客からの信頼向上とともに、次のビジネスのきっかけにもなっています。また、開発スピードが向上し、パターンテストや試作機を作成する頻度も半分程度に削減。さらに、試作レスで開発が進められるケースも出ているなど、多くの成果が生まれています。

課題
効果
課題空気の流れや熱という目に見えない対象を解析・検証して、設計に活かしていきたい。
効果見えない対象の動きが可視化されたことで、顧客に対して設計の根拠を示せるようになった。設計者がしっかり説明できることで、顧客からの信頼と合わせ、次のビジネスのきっかけにもなっている。
課題熱流体解析を外部に委託したことがあったが、さまざまな解析をすると追加コストが非常に高価になってしまう。
効果開発スピードも向上し、パターンテストや試作機を作成する頻度も半分程度になった。さらに、試作レスで開発が進められるケースも出ている。
導入の背景

蓄積した3次元データの活用をめざす

超精密工作機械、半導体、FPD(フラットパネルディスプレイ)、医薬品産業機器等では、生産品質や効率向上を図るために一定の温度に保たれた空気や水を供給できる高効率・高精度な熱源機が不可欠です。ラスコの環境チャンバーは、温度・湿度・振動の精密制御によって温度変化が発生しない高効率・高精度な加工環境を実現しています。

「例えば、半導体製造プロセスにおいて、環境チャンバー内では1/100度、1/1000度以内での温度制御が求められます。そこには空気という見えないものを管理する難しさがあり、半導体の高集積化に伴い、より高精度な制御が要求されるようになっています」と管理部 企画課の蓮見 雅史課長は説明します。

同社では、2002年より富士通の3次元CADソフトウェア「iCAD MX」を導入し、2次元設計から3次元設計への転換を進めてきました。その後、2017年には、超高速3次元CADソフトウェア「iCAD SX」を導入しています。「当社製品は約3万点もの部品で構成しています。その3次元データを回転させるなどの処理をすると、操作にかなりのタイムラグが生じるため、トップアセンブリの管理、製品を組み上げた全体構造の確認などにSXの超高速処理を活用しています」と蓮見課長。

現在では、3次元設計への転換が進み、図面を使用しない設計が主流となりました。そうして蓄積した3次元データを活用するため2004年に導入したのが、FJQSが提供する熱流体解析ソフトウェア「Autodesk CFD(当時はCFdesign)」です。

ラスコでは、液晶の流体解析を実施するため、かつて外部の専門企業に業務委託したことがありました。当時で、一度の解析に相当なコストが掛かり、さらに、違う視点からの解析を追加すると、1件ごとに多額の費用がさらに必要になりました。「かつては数千万円もの投資が必要であった流体解析システムも、かなり価格が下がってきたこともあり、それほどのコストが掛かるのであれば、自社導入した方がメリットが大きいと考えました。また、解析の外部委託は、当社のノウハウが詰まったデータを相手に渡すことにもなるので、それを避けたいという考えもありました」と蓮見課長。

「Autodesk CFD」の導入に際して比較した他社の提案は、解析機能自体が劣っていたことに加え、コストでも3倍もの差があり、搭載可能なメモリーが足りないため、専用ハードを複数台導入する必要がありました。「3次元CADと異なるベンダーの製品を採用して、システムがマルチベンダー構成になると、トラブル時の切り分けが大変です。加えて、原因究明に当たって外部委託と同様にデータを渡すことを避けるためにも、設計、解析に関わる全システムを富士通のソリューションで統一することにしました」

株式会社ラスコ
管理部 企画課 課長
蓮見 雅史 氏
株式会社ラスコ
管理部 企画課
富田 翔太 氏
導入の効果

ビジネスチャンスが拡大し、開発スピードも大きく向上

「Autodesk CFD」による解析作業は当初、設計者には任せず、設計者の要望を受けて蓮見課長が一人で担当していました。設計者に任せると、どうしても凝った設計を志向するようになり、生産性を落とす原因になるからです。現在は、メカ設計メンバーの全員が自らの設計に反映できるよう、ライセンスを追加しました。ただし、設計者本人ではなくチーム内の専任担当者が解析作業を行っています。

設計者に「Autodesk CFD」の操作を指導し、専用のマニュアルを作成した管理部 企画課の富田 翔太 氏は、「『Autodesk CFD』は、設計者が直感的に使用できるように、さまざまな配慮がされています。実際、わかりやすいビジュアルなど、画面を含めてユーザインタフェースが分かりやすいですね。それに、さまざまな種類の解析の適用事例を紹介しているチュートリアルが充実していますし、コミュニティを通じて他のユーザーと知識やアイデアを共有することもできます」と評価します。

空気の流れや熱に関する種々の検証に「Autodesk CFD」を活用することで、多くの成果が生まれています。

「何より大きいのは、空気の渦を巻く動きなど、見えないものが可視化されてはっきり確認できるようになったことです」と蓮見課長は強調します。解析を通じて、設計者が自信をもってお客様にこのような設計した根拠を明確に説明できるようになったことで、お客様の信頼が今まで以上に大きくなっているといいます。「例えば、お客様からは、それならばこんなことができないかと相談を受けるなど、次のビジネスのきっかけになっています。そこで、営業に設計が同行してお客様を訪問する機会も増えました。『Autodesk CFD』はエンジニアの心をくすぐるツールだと思います」

製品開発のスピードも大きく向上しています。パターンテストや試作機を作成する頻度は半分程度にまで減少し、さらには試作レスで開発が完了できるケースも出てきました。

さらに、複数の設計者からの提案について比較検討して採用を決定するといった場合でも、解析結果を示すことで公平感を与えられることから、設計者をしっかり納得させられるといいます。

今後の展望

解析結果を理想像として、製品設計を進める

「Autodesk CFD」の導入からこれまでを振り返り、蓮見課長は次のように語ります。「導入当初は、一切のノウハウがなく、ほとんどFJQSの坂本さんに頼りきりでした。頻繁に電話してサポートを受けたことで、スムーズな活用につながりました」

「我々も、ラスコ様と一体となってノウハウを学び、解析方法についてのさまざまな提案に活かしてきました。それが成果となって表れたことに喜びを感じています」(FJQS:坂本 哲朗)

今では、「Autodesk CFD」の解析結果を理想像として、それに近づける設計をしていくような方向に転換しているといいます。さらに今後は、液体の解析や他の熱を発生させる要素についても解析も手掛けていく方針です。また、熟練者個人が持つ技術とノウハウを若手へ継承するという難題についても、多くの解析結果が蓄積していくことでノウハウが可視化されることを期待しています。

「当社は『かたちにしていく力』を企業方針に掲げるように、世界にまだ無いものを造ることを追求しています。そのため従来の延長でモノを造るのではなく、まったく新しいことに挑戦していますが、『Autodesk CFD』の解析を大いに活かしたいと思います」と蓮見課長は展望を語ります。

「我々としても、ラスコ様に喜んでもらえる製品をご紹介できたことはとても喜ばしいことです。これからもラスコ様の新しいチャレンジにぜひ、貢献していきたいと思います」(富士通マーケティング:扇谷 和宏)

株式会社富士通九州システムズ
エンジニアリングソリューション本部
HPCソリューション部
坂本 哲朗
株式会社富士通マーケティング
関東・信越営業本部
関越支社 産業営業部
扇谷 和宏

左から、FJQS 坂本・株式会社ラスコ 蓮見 氏・富田 氏・富士通マーケティング 扇谷

株式会社ラスコ 様

事業内容半導体・液晶業界向けのクリーン環境・温湿度制御装置の開発、設計、製造、販売
設立1964年10月
所在地本社:埼玉県加須市北平野807番地2
代表者代表取締役 橋口拓郎
資本金6500万円
ホームページhttp://www.rasco.co.jp/
概要1964年に食品業界向けの冷凍・冷蔵庫の設備工事を業務として創業。1970年代の終盤から、現在の主事業である半導体・液晶業界向けのクリーン環境・温湿度制御装置の製造をスタートした。企業方針に「かたちにしていく力」を掲げ、「環境制御装置」でトップクラスのシェアを持ち、半導体機器分野の世界的な大手企業を主な取引先としている。

[ 2019年3月26日掲載 ]


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