Vol.7IT企画力の強化

業務知識希薄化による企画力低下

昨今、IT部門が抱える課題の顕著な例として「IT企画力の低下」を挙げる企業が増えています。情報システムのユーザー団体であるJUASが行った「企業IT動向調査2011」によると、IT部門要員に必要な能力の充足状況で、「不足している」と回答されている項目の上位は「IT戦略策定・IT企画」「ビジネスや商品、サービスの改革提案」「業務システムの改善提案」などです。

クラウドサービスの導入によって、こうした問題を完全に解決することができるでしょうか?確かにSaaSのようなアプリケーション一体型のサービス利用が進めば、システムの設計能力を問われることは少なくなるでしょう。しかし、世に数あるサービスから自社業務に適した選択を行う力、また、採用したサービスに合わせてビジネスプロセスを変革する能力は、従来にも増して重要視されるでしょう。このような能力の基盤は、自社業務の構造や課題を誰よりも熟知していること、さらに次々とベンダーが送り出すサービスを常に研究し、その良否についてわかり易く経営や利用者に説明できることにあります。今後クラウドサービスがますます充実していくことが予測されます。だからこそ、戦略や業務企画といった上流領域の能力強化が、いっそう強く求められると言えます。

企画力の強化に向けた取り組み

前述の能力開発に向けては、「利用部門との人材ローテーション」「研修受講」などによる能力開発施策が最低限必要となりますが、本質的な意味で企画力を発揮するにはそれだけでは十分ではないでしょう。知識を活かした実践により、経験知を蓄積していくことで初めて実効性の高いノウハウとして装備でき、また組織知としての型化も可能となります。

富士通では、IT部門の企画力強化を目的として「経営・利用部門との協働体制作り」「IT部門の自律的・能動的意識の醸成」メカニズムの構築に取り組んでいます。この試みは、IT戦略策定から要件定義までの、いわゆる「超上流プロセスの標準化」と「利用部門を巻き込んだ企画構想立案」を中核としており、企業内におけるIT部門の価値、プレゼンスの向上に繋がっています。

経営層/利用部門

クラウドサービスやビッグデータといったIT技術の急速な変化により、企業経営のパラダイムが転換する中で、IT部門には自社業務の深い理解によるもう一段高い課題へのチャレンジが期待されています。IT部門が企画立案のプロフェッショナル部隊へと変貌することが、今後益々期待されるのではないでしょうか。

ページの先頭へ