Vol.5IT業務・プロセスの改革

ITサービスのダイナミックなQCDコントロール

当社の調査によると、企業の情報システム化投資の70%以上が運用・保守プロセスに費やされていることが明らかになっています。IT部門にとって、この領域の合理化は永年の命題ですが、思うように進んでいないのが実状でしょう。

では、どのようなことが合理化の障害になっているのでしょうか?それには大きく二つの要因が考えられます。一つには運用・保守業務が労働集約型になっており、なかなか自動化が進まないことです。機器の運転に関する自動化技術は日々進歩しているものの、業務(利用者接点)の領域では、いまだ革新的な手法が確立されていません。担い手を替えるオフショアの活用も、中長期的にはその効果は限定的と考えられます。このような状況を鑑みると、合理化の糸口は、この領域の業務をいかに知識集約化するかに収斂するでしょう。

もう一つの要因は、利用者のITサービスへの要求を運用・保守業務へと迅速に反映できていないという問題です。開発したシステムの利用期間を考えると、当然利用者の要求するサービス内容とレベルは刻々と変化します。本業のビジネスに貢献するITサービスを、過剰部分を削ぎ落として無駄なく提供するには、経営・利用部門からのサービス要求と期待値を常に把握すること、事実を知ることが肝要です。さらに、その緻密な分析を行う仕組み作りと、それに基づいたQCDコントロールを、ダイナミックかつプロアクティブに実施する体制作りが不可欠でしょう。

利用部門とIT部門とのインターフェース改善が不可欠

一例として、ある製造業の企業では、月間数百件にのぼる利用部門からのインシデントをカテゴリ別の詳細な傾向を分析し、その結果から利用部門にとって何が問題なのかの本質を突き詰めることで、恒久的な問題解決につなげています。この活動は付随効果として「良い運用・保守プロセス」に関するIT部門での共通認識を醸成しています。運用・保守の業務は、単純な要求対応でなく、事実の分析と自律的な改善活動の繰り返しであるという意識改革が、業務の特性そのものを知識集約型へと転換するマイルストーンとなっています。

さらに、利用部門の要求変化を迅速に察知する仕組みとして、ITサービスに関する利用者満足度調査を年一回定期的に実施しています。本社部門の他、工場・研究所の利用部門責任者から実務担当者まで総勢約400人から「利用部門との対話レベル」「利用部門のITスキル向上への活動状況」「システムの使いやすさ」「現状サービスの改革要求」など約50項目について、その評価結果を収集し、IT部門のサービス価値向上とその改善に役立てています。

これからの時代には、運用・保守プロセスにおけるかなりの領域がサービサー責任で実施されるようになるでしょう。しかし、企業におけるシステム利用効果を最大限に発揮するためには、上記のような利用部門とのインターフェースの改善が不可欠です。サービスとしての利用範囲を拡げ、同時にコストの最適化を図るには、自らが必要なサービスを見極め、ダイナミックにそのコントロールを行う仕組み作りが、とりわけ大切になっていくと考えられます。

ページの先頭へ