Vol.3ITコスト構造の改革

ITコストの可視化

IT部門が経営の要請に応えるためには、まず全てのITコストを正しく把握し、その説明責任を果たすことが必要でしょう。しかし一般企業では、人的リソースにかかるコストや生産性についての管理ノウハウが十分とはいえません。ITコストの分析には、要員の活動特性に即した特殊な管理会計が必要となるからです。当社がこれまでに取り組んだ事例では、当社の管理会計の仕組みを使って、人の生産性や稼働率を管理できるようにしています。これまでの経験では、この管理メソッドにより15%~20%の生産性向上が可能となることが分かっています。

管理会計導入には、人的リソースの現状を示すデータ取得の仕組みが必要になります。これについても、やはり当社SE部門における工数実績管理の仕組みをベースとして、お客様IT部門の作業内容に合わせたものを構築しています。この結果どういった作業に工数がかかっているのか、実施した施策の結果、思ったとおりの工数削減ができているのかなどのことが明らかになりました。

ITのQCDコントロール

次に取り組むべき課題は、コストに影響する要素の明確化、つまりコストドライバの特定です。企業のIT部門ではQCD(コスト・品質・納期)のコントロールが大きなミッションですが、コストドライバを明確にすることでより細やかなQCDコントロールを実現できると考えています。また、今後クラウドサービスを採用する際にも、コストドライバとその影響範囲を知っておくことは不可欠です。なぜならば、クラウドの導入効果は、現行のサービスレベルおよびコストとの相対でのみ評価が可能となるからです。

無駄をなくすという意味でのコストダウンは当然のことですが、導入当初から無駄なシステムは少ないでしょう。ITの無駄は、事業そのものの変化に拠ることも多くあります。このため、コストダウンとは、事業の要請に基づきITサービスのQCDバランスをコントロールすることに他ならないといえます。すなわち「必要以上の品質を排除し、投資効果が最大になるような適正品質をダイナミックに求めること」です。

コストを正しく把握する「可視化」と、それをコントロールできるだけのマネジメント能力は、これからのIT部門にとって、もっとも重要な機能といえるでしょう。

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