デジタル技術を活用した人流カウントと勘所

2021年2月25日公開

デジタル技術を活用した人流カウントと勘所

先日、街を歩いていると交差点でパイプ椅子に座って交通量調査をしている人を見かけました。寒空のなか防寒対策をしながら、全集中でカウンターを弾いています。ところで何のために交通量や人数のカウントをしているのでしょうか?
まず思い浮かぶのは、行政による道路整備や、民間企業による店舗オープンの事前調査などが考えられます。これらの測定したデータはマーケティングや社会問題解決など様々なシーンで活用されます。我々の生活にとって非常に価値があるデータなわけです。
そのカウントの方法は様々で、カウンターを弾いて人手で数える方法や、入場口に設置された機械で数える方法などがあります。さらに最近ではデジタル技術を活用した方法が多くなってきました。
本コラムでは、デジタル技術を活用した測定を実際に行うときに留意する点についてお話したいと思います。

デジタル技術の活用メリット

デジタル技術による測定は、人手に頼った作業から解放され、体力や経験・スキルによらない測定が可能になるからでしょう。さらに今まで数えにくかったコトもデータ化することができるようになります。例えば、マスクをしている人の測定や、その場所の密状態の測定など機械では測定が難しいコトも可能となるわけです。

実際どうやって人流カウントするのか

人流カウントの勘所をお話しする前にデジタル技術をどのように活用して人流をカウントするのか、またそれぞれの特徴について先にご紹介します。

デジタル技術を活用した測定にも様々な方法がありますが、最近ニュースでよく耳にする方法はスマートフォンのGPS情報やWi-Fi情報を活用した人流カウントです。この方法は、人の数ではなくスマートフォンの数をカウントします。そのため、その人の属性などの情報が取得しにくく、またスマートフォンを持っていない高齢者のデータが不足してしまうという特徴があります。
今回ご紹介するカメラ映像を活用した物体検出方法は、カメラ映像に映る人や乗り物などの物体を検知し、あらかじめ機械学習で学習したモノを映像内から探し出して、その数をカウントする方法です。Faster R-CNN、YOLO、SSD、EfficientNetなどのようなさまざまなアルゴリズムがあり、その技術も日々進化している状況です。この物体検出技術は、入力画像から固定サイズのウィンドウをすべての可能な位置で取得して、これらの領域を画像分類器に入力するという分類問題としてモデル化して予測します。そして、その領域に写っている人の属性や状態もあわせて推論することができるため、取得可能な情報量が多いというのが特徴になります。

それでは、物体を検出する例を画像でご紹介します。画像1はビデオカメラでリアルタイム撮影した映像になります。このカメラの映像の中からあらかじめ学習済みの物体を検出して、その位置を取得するわけです。画像2には、人や電車、ハンドバッグ、スーツケースを検出して領域を示しているがわかると思います。この検出した人を数えることで人流データを生成していきます。


画像1

画像2

この方法では、人の姿を単に数えるだけでなく、その人がどの方向に歩いていったかなど付加価値情報もデータとして取得することができます。たとえば、入場ゲートなどに設置することで時間単位の入場数を把握することができマーケティングに活用可能となります。

さて、デジタル技術でここまで測定できるとなると、さらに通りすぎた人はどんな人だったのかが気になってきますね。そのような場合、通過する人の顔を検出して性別や年齢などの属性も測定する方法があります。時間帯別に性別ごとの入場人数を調べたり、同時に入場するグループの男女比や年齢比なども調べることができます。家族、夫婦、友達といった同時に入場した人の関係性も推測することもできます。
次の画像3、4、5は、ビデオ映像から顔を検出して年齢・性別・感情などを推論している例になります。このように単に人数を数えるだけでなく、その人の属性も大まかにカウントすることが可能になります。


  • 画像3

  • 画像4

  • 画像5

さらに一歩進めるとその人の状態も推測することが可能です。最近ではwith コロナ前提の生活になってきました。外出時にはマスクを着用するのが当たり前の生活となりました。デジタル技術を活用することでカメラ映像内のマスクを検知することで、入場した家族がマスクをしていたかなど人の状態を測定する方法もあります。これらの方法はすべてカメラ映像から特徴を検出して数を測定する方法になります。
画像6、7は、マスクの有無をリアルタイムで判定する例です。あらかじめマスクをしている顔写真と、マスクをしていない顔写真を教師データとして学習することで、ビデオカメラの映像から検出した顔がマスクをしているのかをリアルタイムで推論します。最近では、この技術に加えて検温をする仕組みも多く販売されています。


  • 画像6

  • 画像7

これまで様々な地域・企業の皆さんとカメラを使った人流カウントを実施してきました。このような例を見るとカメラとパソコンだけ設置したら手軽に始められそうですが、実際に実施する場合は様々な留意点があります。これまでの私の経験から苦労した点をいくつかご紹介したいと思います。

やっぱり事前準備が必要

もちろん実施目的や結果の仮説など事前の計画は大切です。特に事前準備として重要と感じたことは、実施許可と問い合わせ窓口の設置になります。カメラを使った調査にはプライバシーの問題が常にあります。事前に関係者に許可を取るだけでなく、あらかじめ問い合わせ体制や連絡先を作成し、実施場所には目的や責任元、連絡先を提示しておくことが必要です。張り紙やパネルのような形で作成し、不都合がある人はカメラをさけてもらうような考慮が必要です。さらには、日本語だけでなく英語や中国語など多言語での表記をおこなうことが必要になります。

万が一に備える

まずパソコンとカメラを使った測定であるため電源が必要となります。小型の発電機を使うと便利です。最近ではガスボンベで発電するタイプもあり場所を取らずに電源供給が可能です。ここで重要となってくるのが消化器の設置です。場所をお借りして実施するため防災については必須となります。

2点目は若干特殊な事例となりますが、カメラの設置場所に隣接する建物の解体工事が始まったことがありました。安全面でカメラ設置場所を移動することになりましたが、カメラ位置が変更になるとデータが取得できない事態にもなりかねます。事前に隣接土地の工事計画を確認しておくことも大切です。

設置場所が難しい!?

一番苦労するのが設置場所や設置方法です。留意する観点は2つあります。それは、「安全面」と「景観」と「向き」です。

1つ目の観点は「安全面」です。先ほど発電機を使った測定についてお話しましたが、お客様によっては現地の電源をお借りする場合があります。その場合、電源ケーブルを延長することになります。環境によっては通路の反対側にコンセントがある場合があります。通過する人が怪我をしないよう可能な限りゲートの上から電源ケーブルを通すことが必要です。また、カメラを頭上に設置する場合もカメラが落下しないよう設置する必要があります。これらの対策は当日するのではなく、事前に現地調査をおこない詳細な環境設計をする必要があります。設置環境の違いにより測定できない場合があるので、念入りに調査と準備が必要です。

2つ目は「景観」です。人流カウントは店舗などで実施する場合があります。お客様サービスを第1とする店舗では、カメラやパソコンをスマートに設置する必要があります。過去に緑色の養生テープでカメラを貼り付けた時がありましが、あまりにも景観をそこなう設置方法でありお客様からお叱りをうけました。設置場所の景観を損なうことなく設置する工夫が大切です。事前に設置方法を説明して了承を得ておくようにしましょう。

3つ目は「向き」です。これはカメラの向きになります。なぜカメラ向きの考慮が必要かというと差し込む日差しです。頭上にカメラを設置してカウントするのが比較的成功するパターンですが、お客様によっては安全性への考慮や環境により通路横からの撮影になることが多いです。その場合、大敵となるのが朝陽と夕陽になります。横から差し込む太陽光で顔が暗くなってしまったり、光が入りすぎて画像解析ができなくなってしまうことがあります。太陽の方角を考えずにカメラを設置してしまうと、夕方に美しい夕陽を見ながら肩を落とす事態となってしまいます。

測定精度を上げる工夫

カメラを使った人流カウントは当然ですがカメラに対象が映ることが必須です。実は現場ではこれが非常に苦労します。街を歩く人の行動をこちらの都合で制限することはできないため、環境面で工夫して最大限の測定効果を出すようにします。
たとえばこんな事例があります。入る人と出る人が同じゲートを通る運用になっており人が重なり人数をカウントできない事態や、時間帯や混雑状態により別の入場ゲートを開いたりする場合があります。入場ゲートでは状況をみながら柔軟に運用をしているため想定外の事態が発生する場合があります。事前に入場口の運用について確認しておくとよいでしょう。
また、通路の幅が広すぎて歩く方向が定まらない場合があります。このような環境下で工夫した事例をご紹介します。1つは、正面にぬいぐるみなどを設置することです。ぬいぐるみでなくてもよいですが、目につくものを期待する方向に設置すると人はある程度その方向に歩いてくれます。この工夫で相当測定精度があがりました。2つめは、床に矢印を書くことです。テープで矢印を描いてみましたが、それまでバラバラに歩いていた人が、なんとなく矢印に沿って列ができました。これによって人が重なることなく測定ができるようになりました。ちょっとした工夫で測定精度が上がるので試してみてください。

ここまで、デジタル技術を活用した人流カウントの勘所についてご紹介してきました。当社ではこのような取り組みをお客様と共に実施しております。過去の経験を活かしつつお客様ビジネスの立ち上げをご支援いたしますので、是非ともお問い合わせをいただきたく、よろしくお願いします。

   

執筆

  • 小林 司(こばやし つかさ)

    富士通株式会社 FSTユニット DXソリューション開発センター
    プロフェッショナル プロダクトプランナー、プリンシパル ソリューション アーキテクト

    デジタル技術を活用した地域活性化、セキュリティ、ヘルスケア領域におけるソリューション企画を担当。お客様と共に現場にてビジネス企画・立ち上げを推進。

   

テクノロジーコラム一覧

ページの先頭へ


画像1
画像2
画像3
画像4
画像5
画像6
画像7
小林さん
TOP

世界のアジャイル動向を読み解く 前編 Agile
世界のアジャイル動向を読み解く 後編 Agile
アジャイル開発の士気管理 前編 Agile
アジャイル開発の士気管理 後編 Agile
アジャイル開発の進捗管理 前編 Agile
アジャイル開発の進捗管理 後編 Agile
アジャイル開発の進捗管理 番外編 Agile
アジャイル開発の原価管理 前編 Agile
アジャイル開発の原価管理 中編 Agile
アジャイル開発の原価管理 後編 Agile
大規模アジャイル開発の可能性 前編 Agile
大規模アジャイル開発の可能性 後編 Agile
大規模アジャイル開発の可能性 番外編 Agile
アジャイル開発の品質管理技法 前編 Agile
アジャイル開発の品質管理技法 中編 Agile
アジャイル開発の品質管理技法 後編 Agile
アジャイル開発とは 前編 Agile
アジャイル開発とは 中編 Agile
アジャイル開発とは 後編 Agile
デジタル技術を活かした人流カウントと勘所 dx
アジャイル開発の士気管理 前編 AgileとComing Soon
アジャイル開発の士気管理 後編 AgileとComing Soon