株式会社富士通エフサス

ITコスト削減、ITガバナンスの強化、事業継続性の確保を目指し部門サーバーを2拠点のプライベートクラウドへ統合し、2拠点間でディザスタリカバリを実施

近年、リスク管理やコスト削減を目的にクラウドの関心が高まっておりますが、中でも、システムの運用管理の問題に対する解決策として「仮想化からプライベートクラウド」への流れが進んでおります。当社は本社移転を契機として2011年4月に本社とデータセンターの2拠点にプライベートクラウドを自社導入しました。

さらに、セキュリティ対策の強化や災害対策を施すことで、「ITコスト削減」、「ITガバナンスの強化」、「事業継続性の確保」などを実現しました。

そこで、この経験を当社クラウド関連サービスに適用し、お客様へ安心・安全なクラウドシステムの構築・運用に寄与していきます。

経営層によるITシステムへの要望

ビジネスのグローバル化や環境問題などが進むにつれて、企業には社会的責任(以下、CSR)への対応が求められております。当社においても適切な企業統治、環境や個人情報の保護など、「(1)CSRの対応強化」は重要な経営目標です。加えて、「(2)社会情勢の変化に対する迅速な対応」が必須であり、実現に向けてITシステムが果す役割が年々高まっております。 そこで、ITシステムへの要望について、顧問の藤島聰行がご説明します。

1.CSRの対応強化

CSRやコンプライアンスを重視した企業経営を実践する上で、適切な情報公開や法規制への対応は必須です。実現には、「Ⅰ.ITガバナンスの強化」が必要であり、情報システム部門(以下、情シス部門)が主体となったシステム調達~運用管理の一元化への移行が欠かせません。

また、近年、外部からの不正アクセスなどによる情報漏えいが社会問題化する中で、「Ⅱ.情報セキュリティ対策の強化」の重要性が増しております。そこで、データが散在することによる漏えいリスクの高まりに対する早急な対策が必要です。

そして、企業の持続性を確保するためには、災害や停電などによるシステム停止への備えが必要です。当社の保守サービス部門は富士通と共同で事業継続マネジメントシステム規格「BS25999」を取得しておりますが、万一の場合、お客様に対する復旧体制を確保するには、他部門を含めた全社ITシステムの「Ⅲ.事業継続性の強化」が欠かせません。

さらに、「Ⅳ.省エネへの対応」です。当社では3ヵ年の環境行動計画を策定し、電力使用量の削減目標などを掲げておりますが、使用電力の大部分をITシステムが占めており、早急な対策が必要でした。

2.社会情勢の変化に対する迅速な対応

当社のビジネス強化の観点で捉えた場合、刻々と変化する顧客ニーズに対応するために、「Ⅴ.サービス提供の迅速化」が必須です。これまでサービス提供の基盤となる社内システムの調達に長時間(約40営業日)掛かっておりましたので、サーバーの調達期間の短縮が必要です。

【ITシステムへの要望】

  1. ITガバナンスの強化
  2. 情報セキュリティ対策の強化
  3. 事業継続性の強化
  4. 省エネへの対応
  5. サービス提供の迅速化
株式会社富士通エフサス 顧問 藤島 聰行 株式会社富士通エフサス
顧問
藤島 聰行

経営層からの要望の実現に向けた、情報システム部門の対応

経営層からの要望を受けて情シス部門で対応方法を検討したところ、既存システムの運用保守コストがIT予算の約70%を占めており、新規のIT投資が困難な状況でした。

そこで、社内調査を行い以下の問題が判明しました。

1.ITコストの増加

各部門が独自に業務サーバーを調達しており、更に、事業計画の策定前に購入予算を申請していたことから、オーバースペックのサーバーが乱立。また、他部門で使われなくなったサーバーやソフトウェアを流用することなく新規に購入するなど、無駄の発生と、サーバー台数の大幅増加に伴う、保守費用の大幅増加を招いておりました。

2.サーバーの運用

各部門の運用担当者(兼務)にバックアップやパッチ適用などが任されており、部門ごとに運用・セキュリティのレベル差が発生。また、サーバー台数に比例して運用工数が増加し、業務時間外の作業も増加傾向にありました。
原因は「ITガバナンス」が効いていないことからサーバーの乱立を招き、「ITコストの増加」「ITシステムの消費電力増大」「運用工数の増加」などの無駄が発生。更に、運用レベルの格差による「セキュリティリスクの増大」、バックアップの未取得による「データ損失リスクの増大」などの問題が発生しておりました。

【ITシステムの問題原因】

「ITガバナンスの不在」によるサーバー乱立と運用レベルの格差の発生

  • サーバー台数の増加に伴う「ITコストの増加」
  • サーバー台数の増加に伴う「ITシステムの消費電力の増大」
  • サーバー台数の増加に伴う「運用工数の増加」
  • 運用レベルの格差による「セキュリティリスクの増大」
  • バックアップの未取得による「データ損失リスクの増大」

プロジェクトの実現に向けた経営層への報告

経営層からの要望への対応と、ITシステムを取り巻く課題の解決を模索した情シス部門では、両方を解決する手段として、クラウドコンピューティングに着目しました。
なかでも、「プライベートクラウド」は外部のサービスを利用する「パブリッククラウド」と比較して、「初期コスト」、「消費電力」、情シス部門の「運用負荷」が掛かるものの、「ガバナンス」、「事業継続」、「セキュリティ」の強化に加えて、ノウハウ蓄積の観点で優位な点が多いことが判明しました。

クラウド ITコスト 運用工数 ガバナンス セキュリティ 事業継続 省エネ ノウハウ蓄積
プライベートクラウド
(初期費用)

(情シス以外)

(購買1本化)

(既存ポリシー運用)

(2拠点化)
パブリッククラウド
(ポリシー適用不可)

以上の検討結果から、情シス部門は経営層に向けてプライベートクラウドの導入メリットを訴求。経営層から「プライベートクラウド導入プロジェクト」のゴーサインが出ました。

プライベートクラウドの導入に向けたグランドデザイン

情シス部門は、プライベートクラウドの導入に向けたグランドデザインを作成。全社の部門サーバーを集約し、自社で構築したプライベートクラウドで一元管理する青写真(グランドデザイン)を描きました。

(1)ITガバンスの強化

  • 情シス部門による運用管理の一元化により、運用レベル格差の解消と、部門管理者の運用工数を削減
  • テンプレート化によるシステム構成や、運用プロセスを標準化し、運用管理の効率化を実現
  • システム調達プロセスの情シス部門への一元化により、サーバー乱立やライセンスの重複など無駄を排除

(2)情報セキュリティの強化

  • 部門サーバーの集約、パッチ適用など最適な運用管理により、外部からの不正侵入による漏えいリスクを削減
  • 統合認証システムや証跡管理の導入により、内部からの漏えいリスクを削減(抑止効果)

(3)事業継続性の強化

  • 情シス部門による確実なバックアップの取得と、システムの冗長化による、機器障害時のデータ復旧を実現
  • ディザスタリカバリの実施に向けて、システムの業務仕分けによる重要度と、復旧目標時間(RTO)を設定
  • 2拠点のクラウド間でのデータ連携と、ディザスタリカバリにより、万一の事態からの迅速な業務復旧を実現

(4)省エネへの対応

  • 部門サーバーの集約により、部門の空調費などの消費電力を削減
  • 仮想化による物理サーバー統合により、ITシステムの消費電力を削減

(5)サービス提供の迅速化

  • リソースプールからのサーバーリソースの提供により、サーバー調達の迅速化を実現(情シス部門による申請の承認処理から数時間でサーバーリソースを提供)
  • 利用部門からの申請内容を情シス部門が審査することにより、オーバースペックを排除し、更に計画的なシステムの拡張を実現
  • データベースなどのミドルウェアのサービス提供により、利用部門の利便性を向上

(6)クラウドサービスの提供

  • 社内実践によるクラウドの構築・運用ノウハウを習得し、クラウド関連サービス化を実施

プライベートクラウドの概要

1.数百台の部門サーバーの中から移行対象259台を選定し、2拠点のクラウド(50台)へ統合
2.本社(川崎)とデータセンター(北陸)間でディザスタリカバリを実施
3.サービス提供を実施(データベースなどのソフトウェア、機能検証環境を社内へ提供)
4.業務特性に応じた3種類のクラウド(業務システム、ファイルサーバー、機能検証)を用意

グランドデザインを基に導入プロジェクトがスタート。
全国に散在していた数百台の部門サーバーの中から、当社ノウハウに基く判断基準により移行対象へ仕分けした259台を、本社(川崎)とデータセンター(北陸)の2拠点に設置したプライベートクラウド基盤(ブレードサーバー50台)へ統合。
更に、セキュリティ対策の導入、2拠点間でのディザスタリカバリ (注1)、社内向けサービス提供 (注2)を実施。2拠点のクラウド基盤は、本社の情シス部門のクラウド管理者(3名)がリモートで運用・監視を実施しております。

導入構成(イメージ)

導入事例レポート 株式会社富士通エフサス

  • 注1
    2拠点のクラウド基盤間でデータ連携を実施。万一の震災などにより本社クラウド基盤が停止した場合は、業務の重要度によりあらかじめ設定されたデータセンターへの移行と復旧を行い、迅速な業務の再開を実現(「重要度:高、復旧目標時間:2時間」、「重要度:中、復旧目標時間:6時間」など)
  • 注2
    利用部門向けに「MS-SQL Server、サイボウズ デジエなどのソフトウェア」、「機能検証用の環境」を提供。

更に、社内調査による「見える化」や「業務特性の見極め」により、3種類のプライベートクラウド基盤を用意(業務システム、ファイルサーバー、開発・検証)

業務システムクラウド(2拠点化)

  • VMwareを活用し部門業務システムを仮想集約
  • SQL Server、サイボウズ デジエ等ソフトの提供

ファイルサーバークラウド(データセンター)

  • 信頼性の高いNAS専用装置でのクラスタ構成により、データ保全性を強化
  • ウイルス対策、証跡管理等の実施により情報漏洩対策を強化

機能検証用クラウド(本社)

  • 短期間の論理検証業務を実施できる環境を準備し、業務スピードをアップ
  • お客様要件を考慮し、他社機での検証を実施できるシステムを構築(マルチベンダ)

導入工程

プライベートクラウドの導入に向けた「グランドデザイン」に基いて、システムの「(1)企画・計画」を行い、「(2)構築・移行」によりプライベートクラウドが稼働しました。現在、「(3)運用・最適化」による稼働後の改善活動を実施しております。

(1)企画・計画

全社部門サーバーの「Ⅰ.見える化」を行い業務の実態やシステムの状況(使用率など)を定量的に把握しました。次に当社独自の移行判定基準を定義し、「Ⅱ.特性見極め」によるクラウド移行対象の選定を実施。更に、見える化により把握した業務内容や影響度、使用率を基に「サービスレベル」や「構成パターン(テンプレート)」を設定し、システムの「Ⅲ.設計(サイジング)」を行いました。

(2)構築・移行

サーバーの仮想統合に基づくクラウドの構築あたり、システム構成や運用プロセスの「Ⅳ.標準化」を実現するために「テンプレート」を用いた再構築を行いました。また、運用の効率化に向けて、「Ⅴ.自動化」ツールを導入。現在、利用部門の利便性の向上に向けたソフトウェア提供などの「サービス化」を推進中です。
なお、「Ⅵ.移行」にあたり、データ容量や回線状況よってオンライン経由の移行が困難な拠点は、移行ツールによるオフライン移行で行うなど柔軟に対応しました。

(3)運用・最適化

最後に、クラウド稼働後は運用の「Ⅶ.アセスメント」による改善活動を実施しており、アセスメントにより見えてきた課題の最適化に向けて、システムの「増強計画の立案」や、「Ⅷ.ネットワーク遅延対策」などに取り組んでおります。

次の導入ポイントで「Ⅰ.見える化」~「Ⅷ.ネットワーク遅延対策」の詳細についてご紹介します。

導入事例レポート 株式会社富士通エフサス

導入スケジュール

段階的に全社部門サーバーのクラウド化を実施。更に、サービス提供に向けた基盤作りを実施中

  • Step1(本社仮想化) : 本社の移転に合わせて、本社部門サーバーを対象に仮想化統合を実施
  • Step2(全社クラウド): 全社部門サーバーを2拠点のクラウド基盤へ統合。更に災害対策も実施

導入事例レポート 株式会社富士通エフサス

導入ポイント

1.企画・計画:定性・定量調査によるシステムの実態把握と、重要度の設定⇒「(1)見える化」、「(2)特性見極め」、「(3)設計(サイジング)」
2.構築・移行:「Systemwalker Runbook Automation+BladeLogic」による運用の自動化⇒「(4)仮想化・標準化」、「(5)自動化」、「サービス化」、「(6)移行」
3.運用・最適化:運用アセスメントによる効率的な課題解決の実現(リソース増強等)⇒「(7)アセスメント」、「(8)ネットワーク遅延対策」

1.企画・設計

全社の部門サーバーを効率よく集約・統合するには、「業務の実態把握」と「移行対象の選定」が重要です。そこで、全国160拠点の「部門サーバー」と「ネットワーク回線」の利用状況を調査しました。

(1)見える化

はじめに、「業務の実態把握」に向けて、部門の運用管理者に対して部門サーバーとネットワークの利用状況に関する「ヒアリング」を実施しました。ところが、どの管理者も「自部門の業務は重要」と答えるため、ヒアリングなどの定性調査だけでは正確な実態の把握が困難でした。
そこで、「性能調査ツール」を用いて、サーバーの稼働率やネットワーク帯域を定量的に測定することで、システムの利用状況や影響度など、「業務の実態」を客観的に把握することができました。
これにより、主な利用用途を「業務」、「ファイル」、「開発・検証」の3種類に分類。

(2)特性見極め

次に、移行対象の選定ですが、全国の部門管理者による「選定基準の明確化」に向けて、クラウドに向き不向きの業務、移行対象外の業務、廃棄対象などをまとめた「移行判断基準」を整備。これにより、数百台の部門サーバーの中から259台を移行対象に選定することが可能になりました。
更に、「業務システム」については、見える化により把握した業務内容や災害時の影響範囲を基に定義した3段階の「重要度」と「RTO(復旧目標時間)」に仕分け(図1)を実施。これにより、業務の重要度に応じた適正配置に加えて、リソースプールのサイジングが可能となりました。

<図1 業務システムのサービスレベル>

重要度 システム概要 RTO復旧目標時間 ディザスタリカバリ方式 業務システム数
顧客向けサービス提供(顧客への災害復旧業務) 2時間 自動切替 10%
全社向け利用業務(会社運営に必要な業務) 6時間 手動切替 30%
部門内利用業務(災害復旧を優先してよい業務) 1週間 - 60%

(3)設計(サイジング)

最後に、定量調査により移行対象サーバーの搭載リソースが把握できましたが、過剰なシステム構成を防ぐために、搭載容量ではなく使用率によりサイジングを実施。なかでも、業務システムは3種類の構成テンプレート(図2)により、システム構成の標準化とサイジングの効率化を実現。更に、「ミドルウェアやリソースの追加」を可能にした柔軟な設計により、利用部門の利便性を確保。

<図2 構成テンプレートのパターンとオプション対応>

パターン CPU メモリー HDD
4コア 12GB 50GB
2コア 8GB 20GB
1コア 4GB 10GB
+
オプション対応
ミドルウェア(MS-SQL Server)
ミドルウェア(サイボウズ デジエ)
リソース増設(例:メモリー+2GB)

2.構築・移行

(4)仮想化・標準化

はじめに、仮想化技術を用いて移行対象サーバー(259台)を順次、2拠点のプライベートクラウド(50台)へ「単純移行(P to V)」を実施しました。しかし、移行工数を削減できましたが、クラウド上にOSのバージョンや運用管理方法が異なるシステムが多数稼働しており、統合運用管理ツールの導入による運用自動化が困難なことから、運用管理工数を削減できない事態に陥りました。
そこで、移行工数は増加するが、性能要件に合った構成テンプレートを用いた「再構築(V to V)」へ切り替えることにより、システム構成の標準化や運用管理プロセスの標準化を実現。
これにより、統合運用管理ツールの導入が可能となり、運用管理の自動化に取り組みました。

導入事例レポート 株式会社富士通エフサス

(5)自動化

160拠点に分散していた移行対象サーバーの集約・統合に伴い、これまで部門管理者(160名)が実施していた運用管理を、情シス部門のクラウド管理者(3名)が引き継ぎました。クラウド管理者による一元管理により、IT統制の実現に加えて、セキュリティレベルなどシステムごとの運用レベル差の解消を実現しましたが、作業負荷の増加により、更なる運用管理の効率化が必要でした。
そこで、富士通やVMware社との連携により、「Systemwalker Runbook Automation」+「BladeLogic Server Automation Suite」+「VMware vCenter CapacityIQ」の組み合わせによる「運用管理自動化ツール」を導入しました。これにより、稼動状況の監視やセキュリティパッチの適用など既存の仮想サーバーに対する設定内容の一斉配信が可能になり、管理工数や作業時間を大幅に削減。更に、新規仮想サーバーの払出しは、ワークフローとの連携により、選択された構成テンプレートに紐付いたサーバーリソースの迅速な払出しを実現しました。
このように、自動化ツールの導入によるオペレーションミスの撲滅や運用管理工数の大幅削減により、3名のクラウド管理者による2拠点プライベートクラウドの一元管理が可能となりました。

導入事例レポート 株式会社富士通エフサス

<ご参考:自動化ツールの活用例>
~自動化ツールの活用による迅速なリソース提供と、審査によるシステム統制の強化を実現~

これまで、サービス提供に向けたサーバー調達に約40営業日掛かっておりました。しかし、自動化ツール導入により、システム上は利用部門の申請から配備まで「1営業日(数十分)」でサーバーリソースの割当てが可能となりましたが、利用部門からの過剰要求によるリソース不足を防ぐため、情シス部門による申請内容の審査~承認を経て、最長5営業日でのサーバー調達を実現しました。
これは、「Systemwalker Runbook Automation」+「BladeLogic Server Automation Suite」と「ワークフロー」の組み合わせによる、「申請から承認、払出しまで」の自動化により実現しております。

導入事例レポート 株式会社富士通エフサス

(6)移行

ネットワークの定量調査により、帯域が細い拠点や、データのやり取りが頻繁な部門は、既存システムからクラウドへのオンライン経由の移行は、トラフィックや移行時間などの問題から困難なことが明白でした。そこで、当社が独自に開発した「移行ツールキット(注3)」によるオフライン移行を実施しました(オフライン移行対象 : 60拠点)。
対象の部門管理者は、業務の重要度に応じたサービスレベルの設定と、業務の使用率に応じた構成テンプレートを選択し、必要なアプリやデータを用いて移行ツールキット上でシステムの再構築を実施。構築後、キットをセキュリティ便で本社やデータセンターに輸送後、クラウド基盤に「V to V」で移行しました。これにより、ネットワークの負荷による業務への影響を無くしたことに加えて、キット上にシステムを再構築し、差分データのコピーを実施するだけなので、既存の部門サーバーの停止時間を最小限に抑えること可能となりました。

導入事例レポート 株式会社富士通エフサス

3.運用・最適化

(7)アセスメント

「VMware vCenter CapacityIQ」による稼働状況の監視により、オーバースペックや利用頻度が低いシステムに対する構成見直しなどクラウド全体のリソース管理と、監視結果に基づくアセスメントを実施しております。アセスメントの結果、当初、サーバー集約率を「8仮想OS/1ブレードサーバー」と設計しておりましたが、分析の結果、メモリーの増設により「14仮想OS/1ブレードサーバー」まで拡張が可能なことが判明するなど、更なる集約率の向上を実現しました。
このように、情シス部門主導によるリソース増強計画に基づく効率的なシステム増設への移行により、各部門独自のシステム調達による重複を排除するなど、導入コストの最適化を実現しました。

導入事例レポート 株式会社富士通エフサス

(8)ネットワークの遅延対策

アセスメントの取り組み例として、ネットワークの遅延対策をご紹介します。北海道や九州など本社(川崎)やデータセンター(北陸)から遠方の拠点において、クラウドへのアクセス時にレスポンスが大幅に悪化する事象が発生しました。
「ネットワーク性能調査ツール(NDT)」による詳細調査の結果、「大規模拠点における通信量の増加」や、「MS-OfficeなどCIFSを用いた業務」が主な要因でした。そこで、ネットワーク回線状況や拠点の規模などに応じて、以下の2パターンを柔軟に選択することで、低コストと効率的なネットワーク遅延の解消を実現しました。

  • パターン1 : 大規模拠点は、ネットワーク回線を増速することにより遅延を解消。
  • パターン2 : 小規模拠点は、クラウドと同じデータセンター内に設置した「デスクトップ仮想化シ ステム」を経由してアクセスすることにより遅延を解消。

導入事例レポート 株式会社富士通エフサス

導入効果

クラウド基盤への集約・統合に伴う、「サーバー台数」、「保守費用」、「運用管理工数」、「消費電力」などの大幅削減により、セキュリティ対策やディザスタリカバリなどの新規のIT投資が可能となりました。これにより、新規投資分を含めて「TCO:△30%削減」を実現しました(Cost)。

(1)ITガバナンスの強化(Quality)

サーバーの集約・統合に伴い、部門管理者による機器の「調達」、「運用管理」を情シス部門へ一元化。これにより、機器の調達は利用部門からの申請に応じて、リソースプールから構成テンプレートに紐づいたサーバーリソースを割当てますが、申請内容を情シス部門が「審査」することにより、オーバースペックやライセンスの重複など無駄の排除を実現。更に、専任のクラウド管理者によるパッチ適用、統合バックアップ、トラブル対応などの実施により、運用管理レベルが大幅に向上。
これにより、部門管理者が本来の業務に専念できるようになりました(管理者:160名から3名に削減)。

(2)情報セキュリティ対策の強化(Security)

社内に散在していたファイルサーバーの集約と一元管理により、部門ごとのセキュリティレベル差の解消と、外部からの不正アクセスによる情報漏えいリスクを大幅に低減。更に、認証基盤や、操作ログ取得の新規導入による内部からの不正持ち出しに対する抑制に加えて、仮想ファイアウォールによる部門間での安全な情報共有を実現しました。

(3)事業継続性の強化(BC)

本社とデータセンターのクラウド間でのディザスタリカバリの導入により、万一どちらかが災害などによるシステム停止に追い込まれた場合、業務の重要度が高い順にもう一方の拠点へ業務の自動切替で行うことにより、安全・確実な業務の復旧を実現する仕組みを整えました。

(4)IT消費電力の削減(ECO)

サーバーの集約・統合により、サーバーの消費電力や拠点の空調費が△70%、拠点の設置スペースが△60%と大幅削減。これにより、大幅な「Co2排出量の削減」と「コストの削減」を実現しました。

(5)審査による統制強化と迅速なリソース提供の実現(Delivery)

これまでサービス提供に向けたサーバー調達に約40営業日掛かっておりましたが、申請から最長5営業日でサーバー調達が可能になりました(サーバー調達期間が1/8に大幅短縮)。

導入事例レポート 株式会社富士通エフサス

  • Quality
    • クラウド管理者による一元管理により、運用レベル差を解消
  • Cost
    • 5年間累計で比較した場合約30%のコストダウン!!
  • Delivery
    • 機器調達プロセスの改善により、早期のリソース提供40日を5日に削減
      (注)審査期間含む
  • ECO
    • 消費電力70%削減
    • 設置スペース60%削減
  • Security
    • データ集約+認証、操作ログ取得による内部漏洩の抑制

ご参考 : 震災時の対応について

当社は事業継続性の強化を目的に、プライベートクラウド基盤の2拠点化と、2拠点間でのディザスタリカバリの実現に向けて、「VMware vCenter Site Recovery Manager(以下、SRM)」導入に取り組みました。2011年2月末にはSRMを構築し、テストを実施しておりましたが、同年3月11日の東日本大震災において、本社(川崎市)のクラウド基盤で稼働している重要業務を、SRMにより、データセンター(北陸)のクラウド基盤へ自動で切替る「ディザスタリカバリ」を行いました。
そこで、SRMの導入工程ならびに、震災当時のディザスタリカバリの対応についてご紹介します。

(1)SRMの導入工程

はじめに、業務システムクラウドの災害対策(ディザスタリカバリ)の実現に向けて、業務の内容や影響度を考慮して3段階のサービスレベル(重要度)を設定。これにより、重要度:高の業務システムは全体の10%、中の業務は30%、低の業務は60%に分類しました。

<図1 業務システムのサービスレベル>

重要度 システム概要 RTO復旧目標時間 ディザスタリカバリ方式 業務システム数
顧客向けサービス提供(顧客への災害復旧業務) 2時間 自動切替 10%
全社向け利用業務(会社運営に必要な業務) 6時間 手動切替 30%
部門内利用業務(災害復旧を優先してよい業務) 1週間 - 60%

次に、本社やデータセンターのクラウド基盤上に、業務の重要度に応じて最適配置を実施(図2)。これにより、クラウド基盤のリソースプール(空きリソース含む)のサイジングが可能になりました。なぜなら、通常業務における利用部門からのリソース申請に対して払出すための領域(5%)と、万一の事態に、別のクラウド基盤上の「重要度:高の業務」を受入れる領域(5%)を確保するために、空きリソースを「10%」に設定することで、クラウド基盤全体のサイジングが可能となりました。

<図2 2拠点クラウド基盤の業務の最適配置>

導入事例レポート 株式会社富士通エフサス

最後に、3段階のサービスレベルの内、ディザスタリカバリの実施対象は「重要度:高、中」です。全業務システムをディザスタリカバリの実施対象に設定するのは、ストレージ容量やライセンスなどコスト面から困難なので、周りへの影響度の少ない重要度:低の業務はシステムを停止します。
また、空きリソースを10%に設定したのは、復旧目標時間(以下、RTO)がポイントです。なぜなら、重要度:高の業務は、早期復旧(2時間以内)が求められているので、万一の際には、SRMによる自動切替により、迅速・確実なディザスタリカバリが必要です。なお、重要度:中の業務は6時間以内の復旧目標なので、切替先の重要度:低の業務を15%分(切替元の重要度:中の業務を受入れる領域)停止させた後、SRMを手動で起動し、ディザスタリカバリを実施します。

(2)震災当日の対応

本社のクラウド上で稼働中の重要業務(重要度:高・中)を、SRMを用いてデータセンターへネットワーク経由によるディザスタリカバリを実施しました。

  1. 重要度「高」のシステム(発生後、1.5時間)
    本社の「重要度:高」の業務を北陸の空きリソース(10%)へSRMによる自動切替を実施(図3)
  2. 重要度「中」のシステム(発生後、4時間)
    北陸の「重要度:低」の業務を停止し、本社の「重要度:中」用の空きリソース(15%)を確保。
    本社の「業務度:中」の業務を北陸の空きリソースへ手動でSRMを起動し切替を実施(図4)

(注)重要度「低」のシステムは、そのまま本社のクラウド上で稼動(ディザスタリカバリ対象外)

導入事例レポート 株式会社富士通エフサス

(3)計画停電への対応

3月14日以降、本社(川崎市)で実施された計画停電に対して、本社のクラウド上に残した「重要度:低のシステム」を、毎日変わる計画停電スケジュールに合わせて「停止から再起動」を実施。

導入事例レポート 株式会社富士通エフサス

今後の取り組みについて

当社はクラウド化によるシステム運用をグループ会社へ展開すること予定しており、大規模クラウド化に於ける更なるノウハウを蓄積してまいります。(サイボウズ デジエなど社内向けSaaSサービスを提供中。今後、課金サービスなどの提供に向けた取り組みを推進しております)
更に、社内実践導入で培ったノウハウをツール化し、当社のクラウドソリューションである「プライベートクラウド安定稼働サービス」に適用することにより、お客様に安心・安全・安定したサービスを提供させていただきます。是非、当社のクラウド関連サービスをご活用ください。

本事例に関するお問い合わせ

ページの先頭へ