2008年8月21日
本システムは、当社内だけではなく、サプライヤーとのトータルなSCMを実現したシステムです。受注から出荷まで生産活動にかかわる社内の全部門と、部品の調達先を含めたすべてのプロセスを対象にインターネット技術との融合で全体最適化を図ったリアルタイムSCMシステムの実運用は、国内で初めてと考えます。
すべてのプロセスの「一気通貫」を目指して全体最適化を行い、そのリアルタイム処理を可能にしたことで、従来最大14日間ほど要していた納期回答や受注から部品発注までの処理が即日で行えるほか、以下のような管理業務の大幅なスピードアップと効率化が図れます。
- 納期の即日回答や受注後、部品発注業務の即日処理(従来最大14日間→24時間以内)
- 業務オペレーション人員30%削減
- システムランニングコスト半減(グリーンIT化を含む)
- サプライヤーとの情報のリアルタイム共有化
- 内部統制への完全対応(アクセス権限の付与、アカウント管理の徹底等)
システム運用の定着後には、サプライヤーとの間で、小日程計画、納入指示、所要計画、調達物流の時点情報など生産活動に有益な情報を共有する機能拡張を行います。また、本年3月に発表した「RFIDを活用した部品供給管理システム」との連携やサプライヤー間との情報共有を予定しており、さらにその先には、本システムをベースに海外製造拠点も含めたグループ全体でのさらなる情報共有の推進を計画しています。
今後も改良や機能強化を続け、本システムで得られたノウハウは社内適用のみならず、将来的に製造業等のお客様に幅広くソリューションとして役立てていきたいと考えています。
システム導入までの経緯
当社は今まで、受発注、入出荷といった各部門の業務に適合した部分最適型の生産システム(合計8システム)でITの整備を進めてきました。しかし、部門を中心としたシステムでは、個別業務の効率化は進んだものの、各部門のシステム間の情報にタイムラグが発生し、それまでの個別のIT化で情報の流れが一本化されていなかったために生じる在庫の滞留や、在庫不足により発生する後追い作業など、さまざまな面で非効率が顕在化してきました。
そのために、サプライヤーを含む各部門間で発生する情報の不整合の補正に人手が介在せざるを得ないなど、ビジネスのスピードアップや業務の効率化が阻害されることが課題となってきました。
これを解決するために、生産システムの抜本的な見直しを行い、大きく次の4つのアプローチによる新しいシステムの構築を推進してきました。
(1)全体最適化
従来の部門最適で発生していた、情報や運用の流れが複雑に絡みあった状態(スパゲティ化)
を解消するための、機能、情報、および運用の重複レス化(シンプル化)の徹底
(2)人依存からの脱却
エラーフォローの撲滅、各事象に合わせた調整や判断を、できるだけ人間系からシステム系へ
移行すること
(3)サプライヤーとの情報連携強化
サプライヤーと必要な生産情報を共有することによる、イレギュラーな処理への対応の迅速化
(4)内部統制対応の一環
アクセス権限や更新ログの取得、認証や改ざん防止のためのワークフローの導入
以上の課題に対応するために、従来の8システムを1つの統合システムとし、インターネット技術との融合で全体最適化を実現しました。実現に向けての主な施策として、システム間のインターフェース数の70%削減、帳票の種数の76%削減、データベースのシングル化、マスターファイルの統廃合、サプライヤーとの情報連携を意識したインターネット技術の全面導入などがあげられます。

リアルタイムSCMシステム「iTOS」の主な特長
本システムは、長期的な視野に立ち、生産プロセス全体で調和のとれた効率のよさを目指して、当社内の業務だけではなく、サプライヤーとのトータルSCMを実現したシステムです。これにより、納期の即日回答や、受注後の部品発注業務の即日処理、棚卸資産回転率の向上、業務オペレーション人員30%削減、システムランニングコスト半減(グリーンIT化を含む)、サプライヤーとの情報のリアルタイム共有化などが可能となりました。本システムの主な特長は次のとおりです。
1. 全体最適化(リアルタイムSCM)を実現
システム要件として、計画系(シミュレーション)+受注系+生産系+調達系+製造系+入出荷系+サプライヤーとのB2B系の全体を最適化し、リアルタイムに統合する必要がありました。これを実現するために、各部門システムの機能統合とデータベースのシングル化、および各マスターファイルの一元化に加え、サプライヤーとのリアルタイムの情報連携と共有化を達成しました。これにより、全体最適化による「一気通貫」が実現し、受発注情報などの情報の流れの滞留を取り除くなど、ビジネスのスピードアップや日々変化する生産活動への俊敏な対応が広範囲で可能になりました。
また、全体最適化によりシンプルなSCMを構築することができ、開発投資の大幅な抑制にもつながりました。
2. インターネット技術の全面的導入によるサプライヤーとのリアル情報連携を実現
本システムは、社内およびサプライヤーからもリアルタイムに情報の連携と共有化が可能になるようにインターネット技術の全面的導入と基盤の確立を実現しています。これによって、本システムは今後、生産活動にかかわる社内の全部門とサプライヤーのみならず、組立協力会社を含めたさらに幅広い全体最適化が図れ、フレキシブルな適用拡大を実現していく環境が確立できました。例えば、サプライヤーが自社のシステムを利用しているかのように、本システムの機能の一部を公開しています。
3. 内部統制に完全対応したシステム
本システムは、内部統制に対応するため、次の4つを装備しました。
(1) アクセス権限(画面参照/更新権限を利用者ごとに付与)
(2) アカウント管理の徹底(定期的にパスワード変更、パスワード暗号化保存、アカウントの棚卸
し機能)
(3) システムログの取得(画面操作のログ記録、データベースおよびマスターファイルの更新処理
のログ記録)
(4) 承認ワークフローの導入(更新の認証/証跡/改ざん防止)を充実させたことによって、人間系
中心の運用ルールからシステム系中心の電子ルールによるシンプルな管理体制を確立しまし
た。
なお、本システムが設置されているサーバルームの入退室管理には、当社が開発・製造した手のひら静脈認証装置を採用し、操作端末には、同じく手のひら静脈認証によるログインで動作するパソコンを使用しています。これにより、システムのセキュリティ確保に万全を期しています。
今後は、生産活動にかかわる社内外を含めた全体最適化を狙ったリアルタイムSCMシステム「iTOS」のノウハウを、社内適用のみならず、製造業などのお客様に幅広くソリューションとして役立てていきたいと考えています。
用語説明
(注1) リアルタイムSCM
SCMは、Supply Chain Managementの略で、企業活動の管理手法の一つ。リアルタイムSCMは、製造業や流通業において、原材料や部品の調達から製造、流通、販売という一連の流れにおいて、それに参加する部門・企業の間で情報のタイムラグをなくし、相互に共有・管理することよってプロセスの最適化を行うSCMを指す。