北海道大学 大学院法学研究科 宮脇 淳 著
株式会社富士通総研 公共事業部 シニアコンサルタント 若生 幸也 著
株式会社ぎょうせい
ISBN 978-4-324-10195-7
2016年8月5日発行
本体1,700円+税
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地方自治体では、歳入減少と歳出増加が厳しい財政制約を生み出し、歳出(一般会計)の約三割を占める人件費削減(定員削減)が継続的に行われてきました。この意味で、現在の地方自治体は、多様化・複雑化した住民ニーズに、少数の職員で対応する高度な職能を求められる職場となっています。
しかしながら現実的には、少数の職員による事業実施の弊害である「余裕の不足」により、既存事業や首長肝入り案件を「こなす」のが精一杯で、既存事業をより良くすることや本来必要な新規事業の要素を改めて整理するための「政策体力」が失われています。
本書では、読者の政策思考力を強化するため、政策思考の前提となる考え方や考慮すべき潮流を示したうえで、政策の科学化や政策決定プロセス、政策議論と交渉、自治体経営と政策評価に関する思考方法や踏まえるべき視点を提示します。
第1章 政策を考える前提
1 政策とは何を考えることなのか
2 政策とは何か
3 理想とは何か
4 公共性とは何か
5 政策を科学することの意味
6 政策の三大争点
7 法的思考と政策思考の融合
第2章 政策の環境変化
1 人間行動の変化
2 政策視点の質的変化
3 政策の複合化
第3章 政策の科学化
1 政策基礎力の形成
2 観察とは何か
3 分析とは何か
4 仮説設定とは何か
5 政策手段の選択
6 オッカムの剃刀
第4章 政策決定プロセス
1 政策決定の基本モデル
2 合理的政策決定モデル
3 政策思考・政策評価における二つの仮説
第5章 政策の議論と交渉
1 政策議論の実態
2 政策議論の留意点
3 共に考え、共に行動すること
4 政策交渉の視点
第6章 自治体経営と政策評価
1 自治体経営と政策評価の関係
2 創造的政策評価―政策進化への挑戦
3 政策評価を通じた政策思考の進化
4 開かれた学習
政策とは、政府、地方自治体など公的な機関が、経済社会活動に関する方針を示すことです。政策を構成する「理想」「現実の評価」「手段の集まり」の中で、最も根幹にあるのが理想です。理想がなければ現実を評価できず、現実が評価できなければ乖離を埋める手段を生み出せないからです。すなわち、経済社会活動の現実に問題意識を持ち、理想を追い求める全ての人に政策思考は有用な道具となります。
読者のみなさんにとって、本書が政策思考の基礎を作り、政策議論の一助となることを期待しています。
若生 幸也(わかお たつや)
株式会社富士通総研 公共事業部シニアコンサルタント 兼 経済研究所上級研究員
金沢大学法学部卒業、東北大学公共政策大学院修了、2008年株式会社富士通総研入社(公共事業部配属)、2011年~2013年北海道大学公共政策大学院講師(出向)、2013年より現職。自治体経営改革支援や国・地方自治体における地域政策や政策評価制度等の受託調査に取り組む。北海道大学公共政策大学院研究員・富山市まちづくりアドバイザー・岐阜県関市まちづくり市民会議アドバイザー・北海道芽室町サポーターなどを兼務。
研究員紹介ページ
【公共】
行政機関は、国民・住民の生活、福祉の向上に向けて、様々な課題を解決する必要があります。多くの経験に基づく知見やノウハウをもとに、国、地方自治体、関連団体など行政機関の抱える課題解決を支援します。
【新・地方自治フォーラム】
北海道大学公共政策大学院と株式会社富士通総研公共事業部が共同運営するサイトで、地方自治や官民連携に関する情報発信を行っています。