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FRI コンサルティング最前線(本文)Vol.03 2010

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特集:人がつくる知恵の連鎖

社会の中で役立つICTは、人が知恵を創出し、共有・共感するためのカタリストになれることだろう。逆に言えば、単に社会の中のプロセスを繋ぎ、自動化させるだけではICTが暴走してしまう恐れがある。ICTが繋げるのは情報であって、知恵ではない。ましてや知恵を連鎖させて価値を増大させたり変化させたりできるのは人だけだ。ICTの特性や限界を見極めながら、人が嬉しくなる知恵を育んで行くことが、成熟した世の中には必要ではないだろうか。

徳丸嘉彦(とくまる よしひこ)


政治状況の変化や金融不安、環境問題への対応など企業を取り巻く環境は一層厳 しいものとなっている。製造業においては従来よりあらゆる企業が製造コストの改 善に真剣に取り組んでおり、このような環境においてもなんとか対応でき得る知恵と企業体力を持ち合わせている企業は多い。しかし、本社の間接部門の改革となると企業によってその取り組み度合いは異なるようである。本社・間接部門の改革が進まない理由の一つとして、どのように改革を進めればよいかわからないといったことや、自社で取り組みを進めても効果が見えないなど 成果に確実に結びつけるための明快なプロセスが存在しないことがあげられる。本稿では、化学品製造業のお客様における本社・間接部門改革の取り組みを支援 したコンサルティング事例を取り上げ、本社・間接部門改革の取り組みを確実に成果に結びつけるためのポイントについて紹介する。

大原宏之(おおはら ひろゆき)、菅野 智(すがの さとし)、岡部亮一(おかべ りょういち)

日系企業の海外生産拠点への生産管理システム導入に際しては、現地における様々な要件への対応よりも、日本などで実績のあるシステムをベースにとにかく稼動させ、現地では、そのオペレーションの徹底のみが求められる場合が多い。従って、システム導入の目的や意義に理解が得られないまま、また、その効果を実感することも無いまま、次第に十分活用されない状態に陥っている場合が散見される。本稿では、その対応策として、海外拠点のローカルメンバーを巻き込み、その参画意識を高めるとともに、自ら気付き・考え・行動することを促す、意識改革の取り組みの重要さについて述べる。「そもそも生産管理とは何か?」といった生産の基本を、ポイントを絞った知識取得や、実務課題に即した実践的なテーマでの検討演 習を行うなど、従来の生産業務改革/生産管理システム導入の取り組みとは異なるアプローチを紹介する。

郷 保直(ごう やすなお)、松山正樹(まつやま まさき)

ERPの導入により経営効率の向上とシステム基盤の最適化を実現するためには、業務パッケージや手組みの場合に比べて広範囲に亘る改革が必要となる。しかし、現実には導入過程で改革への抵抗が起こり、ついにはシステムの構築自体が目的となってしまうことが多い。このような状況はERP導入をこれまでのシステムと同じように捉えていることに端を発している。ERP導入は、本質的には企業全体の革新であり、そのためにERPには制約があるという特徴がある。本稿ではそれらを踏まえ、ERPを導入し企業革新を実現するために従来とは異なる2つのアプローチを紹 介する。1つは企画段階からERPを最大限活用し新業務を創造するために経営・業務の目標と施策、ERPを体系化したリファレンスモデルの活用であり、もう1つは企業革新に対する人の抵抗を抑え積極的に参加するように導く変革のマネジメント(チェンジマネジメント)である。

亀岡朋徳(かめおか とものり)

学校(教員)だけでなく、保護者・地域が協力して、子供たちを育てるという「協育」の実現を目指し、経験と勘で小学校の改革を行った校長がいる。我々は、この取り組みの普及を支援すべく、経験と勘で生み出した知恵である校長の取り組みの意図や工夫、その連鎖を富士通独自の手法(リザルトチェイン)で紐解き、取り組みの全体像を独自の観点(日本経営品質賞の枠組み)で体系化することを試みた。例えば、代表的な取り組みとして「よいとこみつけ」がある。これは教員が日々子供を観察し、褒めてあげるべき言動を記録し、通知表の所見欄に反映する仕組みである。この例では、取り組みを行う前提として、教員のゆとりが必要であることなどを紐解くことができた。そして、ゆとりを作るために、校長が率先してよいとこみつけを行う、あるいは保護者の対応を校長が行うなどの工夫も紐解くことができた。また、体系化では、「協育」を実現する出発点は「教員のゆとりづくり」であり、その上で改革の根本である「よいとこみつけ」を軸に、子供や教員の主体性を醸成し、子供・教員の学びあい、保護者・地域の参加意識を醸成しているという知恵の連鎖を明らかにできた。さらにICTのよさを上手く活かして、全体を支えていることも明らかにできた。本稿では、紐解いた校長の取り組みの意図や工夫と、体系化した結果について述べる。

古門勝也(ふるかど かつや)、富永敬之(とみなが たかゆき)

全国の他の地域と同様、厳しい経済社会環境下にある鳥取県では、地域特性等も踏まえた、将来の県経済・県民生活等に活力を与える新たな成長に向けて、専門家により構成される戦略会議を設置した。それとともに、関係部門によって構成されるワーキンググループの設置を行い、県職員の方々自ら各種調査・分析、県内事業者へのインタビュー等を経て戦略をとりまとめた。富士通総研は、戦略策定にあたって、共通の目的意識、課題意識のもと、県事務局とパートナーシップ関係を構築し、ワーキングの運営、各種分析手法を活用したデータ分析・とりまとめ等、臨機応変に、迅速かつ実効的に支援を行った。その成果とプロセスを紹介する。

高橋誠司(たかはし せいじ)

幾つかの企業が事業承継危機に直面している。理由の一つは、事業承継に対する経営者の認識が不十分であり、計画立案ノウハウが不足している点にある。しかしながら、経営者が単独で認識し計画を立案することは、立場的にもノウハウ的にも難しい。そこで、富士通総研(FRI)では、経営者、後継者のパートナーとして、事業承継支援コンサルティングを提供している。その特色はJQA(※)の経営革新の考え方を適用した点にある。これにより、経営者は容易に事業承継計画を立案でき、後継者は容易に今後の方向性を策定できることを実現している。本稿では、オーナー経営企業での事例を通して、JQAの知恵を応用した事業承継ノウハウを紹介する。
※JQAとは本来、日本経営品質賞(Japan Quality Awardの略)を指すが、ここでは経営品質向上プ ログラムを指す。

庄司弘直(しょうじ ひろなお)

富士通総研(FRI)は、2010年4月に『BCM訓練センター』を開設した。このセンターは、災害発生時の緊急対応や事業継続対応だけでなく、危機広報やリスク管理全般にいたるまでの、人と組織の育成強化を目的とした、国内初の専門センターである。 企業において、組織の危機対応能力向上のためには、いかなる事態においても、臨機応変な対応ができるスキルをもつ人材の育成が急務である。トップマネジメント自らが人材育成方針を決定し、その有効性と効果を評価することで、組織を危機対応能力のあるものに発展していくことができるのである。 本稿では、組織の中に事業継続マネジメント(BCM)を段階的に定着化させていき、組織の危機対応能力を高めていくための方法を、具体的な訓練手法を交えて紹介する。

中山亜佐子(なかやま あさこ)


経営革新(ビジネス・トランスフォーメーション)

既存のシステムは果たして有効に機能しているのか。営業業務という戦略目標の遂行に直接関わると同時に競争優位性が求められる業務のシステムは、戦略目標達成に向けた活動の質的向上を支える役割を担うが、たとえこれが戦略的に重要なシステムであっても事務合理化目的のシステムのように導入効果と必要性を金額換算して説明することは非常に難しい。富士通総研(FRI)では、システム導入の効果について関係者への説明性を確保するとともに、既存のシステムが経営戦略や業務に対する有効性という観点からどのような問題を抱えているのかを浮き彫りにし、システムの有効性向上施策を導き出すことが、システム投資効果を最大にするために必要と考えた。本稿ではビジネスアナリシスのアプローチを取り入れた、A銀行営業支援システムの「システム有効性評価」に係る取り組みおよび手法について紹介する。

半田智子(はんだ ともこ)

XBRL(Extensible Business Reporting Language)はグローバルなビジネス報告のための技術標準であり、国内では企業開示、税務申告、金融監督の分野で採用され、欧米、アジア各国の政府、公的機関でも採用が進んでいる。今後、さらなるXBRL適用が世界各国で行われることが予想されるが、各国のXBRL実装方法の差異に起因した対応コスト増加などから、報告を行う提出者、公的機関、投資家などの利害関係者が、国際標準適用のメリットを享受できない可能性が指摘されている。本稿では、当社がリードし立ち上げた、日米欧の3極による利害関係者の便益を重視したXBRL共通実装方式検討プロジェクトであるITAプロジェクトの事例を通 じて、グローバル技術のベストプラクティス策定の方法論と同プロジェクトにおける当社の役割について紹介する。また、将来のXBRLを使用したIFRS開示についても展望する。

小泉 誠(こいずみ まこと)


業務改善(プロセス・イノベーション)

金融機関では営業店の効率化を進めてきたことと、2007年の金融商品取引法の改正により不公正取引等への厳正な対応(コンプライアンス)が求められるようになっ たことなどから、各営業店から本部への問い合わせが急増し、本部の対応負荷が著 しく高まった。一方、新しい技術としてテキストデータの内容からキーワードの出現傾向が似た文章をグループ化する事例寄せ技術も現れ、テキストデータの分析も可能となった。A銀行様において本部への問い合わせ件数のゼロを目標に、富士通独自の事例寄せ階層型クラスタエンジンを適用した。問い合わせ内容の傾向を分析し、問い合わせ業務の課題抽出と解決施策案の導出を行った。この結果、継続的にPDCAサイクルを回す業務改善の仕組みに止まらず、蓄積されたナレッジから2次情報としての発展的利用の可能性も見えてきた。問い合わせテキストデータからの課題を発見する事例寄せ技術と適用事例を紹介する。

大本秀樹(おおもと ひでき)

企業経営において、物流コストの削減は大きな課題の1つである。特に昨今のよう な経済状況においては、部分的ではなく、輸配送全体を俯瞰したドラスティックな施策の実行が必要である。しかし、輸配送全体を俯瞰する大規模な施策については、その効果を定量的に評価できず、実施を判断しきれない場合が多い。そして、それに伴う経営判断の遅れが企業に致命的なダメージを与えかねず、迅速な意思決定が重要となっている。 富士通総研(FRI)では、物流分野において、シミュレーション技術を活用した意思決定支援コンサルティングを数多く実施してきた。この高度なシミュレーション技術を活用することにより、大規模な施策においても定量的な評価が可能であり、施策の効果や複数の施策の優劣を明確にすることで、意思決定に係る時間を短縮することができる。 本稿では、輸配送全体を俯瞰した施策の1つである物流拠点の立地の見直しにおける意思決定支援コンサルティングの内容と、その裏付けとなるシミュレーション技術について紹介する。

太田 崇(おおた たかし)

高度外国人材活用の阻害要因やその対応は企業文化に応じて様々であり、他社事例に学びつつも、自社に合わせた方法を練ることが欠かせない。本稿では、様々な事例を紹介するとともに、独自方策策定のポイントとなる3つの提案を述べる。1つ目は、経営戦略と整合した外国人材ならではの価値の定義や波及効果も含めた活用の目的を明確化することである。2つ目は、経営層のコミットメントを明確にし、外国人材に対する思い込み、その他相互の誤解を解き、積極的な受け入れ姿勢の醸成を図ることである。3つ目は、人材育成方法と労務管理の現状を、外国人材の活用という観点で総点検し、多様な人材が働きやすい環境整備のための変革を行うことである。 これらの取り組みは、外国人材の活用にとどまらず、日本人自身の働き方や組織のあり方を見直し、より気持ちよく仕事ができて、協調して働ける職場環境を作る組織イノベーションの礎にもなる。

杉浦淳之介(すぎうら じゅんのすけ)、狩野史子(かのう ふみこ)

近年、企業のグローバル化によりわが国経済への海外の影響が強まり、経営環境の変化が加速している。このような変化に対して、企業は迅速に対応する必要がある。しかしながら、多くの企業は、近年のような急激な環境変化に対して、収益計画やそれに付随する各種事業計画の修正を行う意思決定が遅れがちである。その最大の原因は、判断基準が定性的だったり関係者間で異なったりすることだと考える。富士通総研(FRI)では、事業におけるさまざまな意思決定を時価という定量的かつ一貫した基準で行い、経営のスピードを高める手法ERO(Enterprise Resource Optimization)を開発してきた。本稿では、EROの考え方について、業務への適用例をまじえながら紹介していく。

佐々木正信(ささき まさのぶ)


新規事業(ビジネス・クリエーション)

米国オバマ政権のグリーン・ニューディール政策を背景に、日本国内においても「スマートグリッド」に注目が集まっている。筆者らはこのスマートグリッドを3S(スマートメーター、スマートグリッド、スマートホーム)の3つの領域で構成されると捉え、スマートホーム市場においてホームネットワークサービスが拡大すると考えている。筆者らは、富士通社会基盤BGを支援する形で、通信事業者が提供するホームネットワークサービスのビジネス化について検討した。通信事業者がホームネットワークサービスのプラットフォーム事業者となることにより、通信事業者間の競争はラストワンマイルからプラスワンマイルにシフトする。今後、通信事業者によって比較的収益性が高いサービスから順次、ホームネットワークサービスが展開されていくものと期待される。

鈴木佐俊(すずき さとし)、栢 武司( かや たけし)、福 浩邦(ふく ひろくに)

本論文では、既存メディア事業者(放送、新聞社等)に対して筆者が行った「メディア事業者の新たな収入源開拓検討アプローチ」の手法について記述する。2010年現在、マスメディア(新聞・テレビ・ラジオ・雑誌)各社は、いずれも収入が大きく落ち込み、抜本的な事業戦略の変革、ビジネスモデル転換の必要性に迫られている。筆者は、メディア事業者の経営革新の一助として、業界に特化したマー ケティングアプローチを考案しており、これについて紹介を行う。本モデルは、複数メディア事業者へのコンサルティング活動での活用をはじめ、2009年8月には、新聞・放送業界、約100社の役員層が参加した日本新聞協会主催「2015年メディア戦略セミナー」で発表を行い、業界でも高い着目を浴びている。

三木言葉(みき ことば)

2008年に国の環境モデル都市に選定された横浜市様では、368万人の市民力による脱温暖化の実現に向け取り組みが推進されている。同年1月に策定した横浜市脱温暖化行動方針では、2025年までに再生可能エネルギー10倍化を目標として掲げて おり、これを強力に推進するための事業主体である「横浜グリーンパワー」の設立を構想している。富士通総研では、横浜市様からの委託を受け、この事業主体の設立に向けた事業化可能性調査を行った。ここでは、再生可能エネルギーを普及促進させるための事業モデルを検討し、関係主体へのヒアリング等を通して、これらの事業スキームの検討や収支シミュレーション等を実施した。富士通総研では、行政が進める地球温暖化防止に向けた施策に対して様々な支援を実施しており、本稿では、これらの一事例として横浜市様における取り組みを紹介する。

坂野成俊(さかの なるとし)、上保裕典(うわぼ ゆうすけ)、池田佳代子(いけだ かよこ)


リスク管理(ビジネス・アシュアランス)

2009年6月に、金融庁から「我が国における国際会計基準の取扱いについて(中間報告)」が公表され、日本におけるIFRSのアドプションの流れは一気に強まった。当局による強制適用の判断は2012年に行われる予定だが、2015 ~ 2016年とされる適用時期を前提にすると、すでに3~4年の対応準備期間しかない状況である。IFRSは、銀行に対して業務・システムの面で、特に大きな影響を及ぼす可能性が大きい。また、そのインパクトは、一般事業会社などとは大きく異なるものである。本稿では、IFRS導入作業の端緒となる、会計データフロー調査について、実際の調査事例を含めてご紹介する。会計データフロー調査は、銀行の会計業務に関して、システムや勘定科目などの観点からデータフロー等を整理するもので、ムービング・ ターゲットであるIFRSについても、現時点で着手できる点が特徴である。後半は、金融商品に関するIFRSの改定スケジュール(ワークプラン)とその留意点を示し、また、銀行業における主なIFRS対応課題について、特にシステムの観点から整理している。

金高 篤(かねたか あつし)

社会基盤・企業活動におけるICTの重要性、ICTへの依存度は高まる一方である。その反面、ICT障害が様々な業種で発生している。ICT障害の根本的な原因の分析や、そこからの知見のフィードバックが重要視されている。そのためには、安全への取り組みで先行している航空・鉄道・医療・電力分野が重要視しているヒューマンエラーの視点を取り入れ、障害の根本的な原因を明らかにし、個人・組織全体で 防止策を検討しなければならない。本稿は、従来のなぜなぜ分析にヒューマンエラーの視点を融合させた、ICTの障害向けヒューマンエラー分析手法について紹介する。併せて、金融機関のシステム開発・運用部門へ導入した事例を紹介する。このヒューマンエラー分析手法は、様々な業種に適用したことによって多様性・多 面性を増しており、ICT障害リスク管理のリファレンスモデルといえるものである。

上野伸一(うえの しんいち)

これまでの企業の内部統制整備への対応と関心は、財務報告の適正性確保を目的とした金融商品取引法対応に偏重してきた。一方、コーポレートガバナンス強化を目的とした会社法対応の内部統制整備は、内部統制構築の手順、構築すべき内部統制のレベル、評価方法等が規定されていないこともあり、形式的な対応にとどまり、自社の特性に応じた取り組みができている企業は少なかった。今回、我々は、金融商品取引法対応の内部統制プロジェクトの経験から得たノウハウをもとに、会社法対応の内部統制整備のフレームワークを策定し、企業への適用を試みた。本フレームワークは、全社統制評価シート等のツール類を活用し、企業個々の課題に応じた内部統制整備を可能とするものである。今後、本フレームワークを整備・拡充した上で、大企業のみならず、善管注意義務の一環としてコーポレートガバナンス強化に取り組む中堅・中小企業のお客様に幅広く提供していく予定である。

喜多川学(きたがわ まなぶ)

全上場企業グループがコスト面で多大な負担を強いられた内部統制報告制度は3年目を迎えた。制度の初期対応としては一段落したように思われる。しかし、本制度は一旦対応すれば終わりではない。本制度が継続される中、企業グループは個々の事情に応じたレベルアップを図りながら、IFRS等の会計制度変更、あるいは企業グループ自身の事業再編やM&A等、内外の環境変化に対応し続けなければならない。 また、制度の3年目を迎え、各企業の要望も踏まえた金融庁による制度自体の見直しも始まっている。本稿ではそういった動向も踏まえ、企業グループが制度対応を継続的に行いなが ら、より有益かつ効果的に内部統制を維持、あるいはレベルアップしていくための視点を整理し、今後の企業グループの戦略的対応について確認する。また、その対応の例として、多くの企業グループで充分な対応がとれず、課題の一つとなっている中小企業の内部統制構築を取り上げ、その対応手法の一端を紹介する。

喜多全好(きた まさよし)

近年、日本企業もグローバル化が進むと共に、企業が直面するリスクも多様化しており、様々なリスク対応を行う企業において、自社の事業継続性を確保するための取り組みが本格化するにつれて、推進上の課題が表面化している。これらの課題は、平時と非常時といった場面で存在し、それぞれの課題を解決するための方法の一つとしてBC関連ツールの適用がある。近頃では日本でも利用可能なツールの種類が増加しており、実用的な選択肢として検討可能な状況にある。様々なツールが存在するが、どういう場面に適用すべきかはあまり知られておらず、そのような状態で企業にツールを導入しても期待した効果が得られない恐れがある。 本稿ではBC関連ツールの種類を挙げ、ツールの有効性や留意点から、どういう課 題に適用したら効果的かを考察し、最後に今後の課題を提起する。

多田隆志(ただ たかし)、玉置千愛(たまき ちあい)