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コンサルティング事例「最適化技術を活用した物流戦略における意思決定支援─物流拠点の立地の見直し─」

最適化技術を活用した物流戦略における意思決定支援

~物流拠点の立地の見直し~

掲載日:2017年4月27日

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概要

富士通総研では物流分野において最適化技術を活用した意思決定支援コンサルティングを数多く実施している。最適化技術を活用することにより大規模な施策においても定量的な評価が可能であり、施策の効果や複数の施策の優劣を明確にし、意思決定にかかる時間を短縮することができる。本稿では、輸配送全体を俯瞰した施策の1つである「物流拠点立地の見直し」に最適化技術を活用した意思決定支援コンサルティングについて述べる。

課題

輸配送全体を俯瞰する大規模施策の定量的評価が物流コスト削減の課題

物流コストは販売費や一般管理費の大きな割合を占めており、その削減は企業の最重要課題の1つとなっている。中でも輸配送にかかるコストは物流コストの50~60%を占めており、その注目度は高い。また、企業の合併や買収が増加する昨今、合併や買収後の物流網の見直しは非常に大きな課題であり、輸配送全体を俯瞰したドラスティックな改善が必要となる。しかし、輸配送全体を俯瞰する大規模な施策については、その効果を定量的に評価できず、実施を判断しきれないのが現実である。

富士通総研では、物流分野において最適化技術を活用した意思決定支援コンサルティングを数多く実施している。高度な最適化技術を活用して算出された定量的評価は、輸配送における意思決定の絶対的な根拠となるものである。また、定量的な評価により、施策の効果や複数の施策の優劣が明確になるため、意思決定にかかる時間を大幅に短縮することが可能となる。

解決策

物流拠点の立地見直し施策の意思決定支援に最適化技術を活用

輸配送全体を俯瞰し、戦略的に解決するための施策として、物流拠点の立地の見直しが挙げられる。例えば、倉庫の利用率や車両の積載率の改善には、倉庫や物流センターの統廃合が有効である。ただし、物流拠点の統廃合にも様々な施策があり、図1のように物流拠点を2か所から1か所にする場合でも、どちらかの拠点を廃止するべきか、両方の拠点を廃止して新たに拠点を建設すべきか、最も効果的な施策を判断する必要がある。物流拠点の立地を見直して物流拠点を適切な位置に建設することにより、物流の効率化が図れ、輸配送コストや輸配送にかかる距離を削減できる。そのため、物流拠点の見直しは多くの企業にとって重要な経営課題となっているが、定量的に分析・評価する方法は確立されておらず、大半は定量的な根拠を持った意思決定がなされていないのが現実である。

図1:
【図1】物流拠点の統廃合の施策

例えば、複数の物流拠点を統合して新規に物流拠点を建設する場合は、まず候補地(地域)を列挙し、その中から適切な建設場所を決定する。そして、輸配送や現場オペレーションに関する実地検証を行うのが一般的な手順である。物流拠点の建設場所の選定には、輸配送コスト、必要在庫量、キャパシティ、オペレーションの実行性などを考慮する必要がある。しかし、実際にはこれらの厳密な試算ができず、無駄に広い敷地の確保や、必要以上に都心に近く地価の高い場所の選定が行われている。物流拠点の見直し施策を評価する際に最も重要なことが、輸配送に関する評価である。在庫量やキャパシティなどは輸配送ネットワークが決定することで初めて試算が可能となるものであり、輸配送ネットワークの設計が疎漏であれば、その後の試算はすべて不正確なものになってしまうからである。しかし、輸配送に関する評価は様々なパターンを比較評価する必要があり、厳密な評価が困難である。

このような現状を踏まえて、富士通総研が提供する物流拠点見直しに関する意思決定支援コンサルティングでは、特に輸配送に関する評価に注力しており、複数の拠点候補地、多数の輸配送ネットワークシナリオに対して最適化技術を活用し、より厳密な数値評価を行っている。

最適化技術を活用した数値シミュレーションの内容

物流拠点の立地見直しにおける数値シミュレーションは、物流拠点の立地シミュレーションと配送ルートシミュレーションを組み合わせることで、さらに具体的なシミュレーション結果を提供している。

物流拠点の立地シミュレーションは、配送先の分布状況と需要量などから効率的な物流拠点の建設数とその位置、さらに各拠点の担当エリアを求めるものである。現場担当者の経験や勘、または条件や情報量を絞った簡易的な計算によるものとは違い、厳密なシミュレーションを行うことにより信頼性の高い数値結果を提供できる。配送ルートシミュレーションとは、物流拠点から複数の車両が複数の配送先を巡回して荷物の配送などを行う際に、どの車両がどの配送先をどういう順番で巡回すれば効率的かを求めるものである。これらのシミュレーションを組み合わせることで、物流拠点の立地シナリオに対する配送車両の必要台数などを算出することができ、日々の運用までを含めた、より具体的なシミュレーション結果を得られる。また、これらのシミュレーション結果は数値だけでなく、地図上に表現することも可能であり、「見える化」による視覚的理解も容易なため、お客様の意思決定に貢献できる。

物流拠点の立地シミュレーションと配送ルートシミュレーションの結果イメージを図2、図3に示す。

図2
【図2】物流拠点の立地シミュレーションの結果イメージ

図3:
【図3】配送ルートシミュレーションの結果イメージ

拠点立地シミュレーションでは、物流センターや物流ハブなどの拠点の効率的な建設位置をシミュレーションする(図4)。

図4
【図4】拠点の効率的な建設位置をシミュレーション

単純に物流センターから配送先に荷物を配送する場合の物流センターの立地や、工場から物流 ハブを経由して配送先に荷物を運ぶ場合における物流 ハブの立地シミュレーションなど、様々な物流形態に 対応することが可能である。この問題を解決するため には、物流拠点の固定費、物流拠点のキャパシティ、配送先の需要量、物流拠点と配送先間の道なり移動距 離、輸送にかかる変動費などを考慮する必要がある。これらすべての条件を考慮して膨大な量のパターンを 評価することは、人間の手計算では非常に困難である。配送ルートシミュレーションでは地域内の効率的な 配送ルートをシミュレーションする。配送だけでなく集 荷(ミルクラン)や集荷先から配送先への移送といったモデルをシミュレーションすることも可能である。この問題では、車両の最大積載量、荷量、指定配送時間、 配送先間の道なり移動距離・移動時間、荷物の積降作 業の時間などを考慮する必要がある。車両数や配送先 数が増えると、その組み合わせ数は爆発的に増加し、こちらも人間の力では答えを算出することは非常に困難である。

富士通総研では、このような組み合わせ最適化問題に対してメタヒューリスティック解法という最適化技術を用いることで効率的に問題を解決している。メタヒューリスティック解法とは、膨大な量の組み合わせパターンから効果的な組み合わせを効率よく見つけ出すための代表的な手法である。

成果

最適化技術を活用した数値シミュレーションによる効果

あるお客様の事例では、企業の合併後、それぞれの物流拠点から配送を行う担当エリアの見直しシミュレーションを行った結果、車両台数を11%削減できることが分かった。また、別のお客様の事例では、仕分け作業を行うための物流ハブを外部に設けるべきかどうかの経営課題に取り組んだ際に、既存の物流拠点を活用し、さらに新規に物流ハブを設けた方が現状に比べて輸配送コストが6%削減でき、新規に設けた物流ハブの維持費を差し引いても十分コストの削減が図れることが分かった。その他、当初有力と考えられていた施策は想定よりコスト削減量が低いことが分かり、逆に有力視されていなかった別の施策の効果が大きかったために、その施策に対する実証実験や導入検討が進められた例もある。

このように、実施を躊躇していた施策の効果が明確になり、意思決定に貢献することはもちろん、想定とは異なる現実が明らかになることも多々ある。



拡大する最適化技術の活用分野

本稿では、最適化技術による拠点立地シミュレーションと配送ルートシミュレーションを活用した物流分野の意思決定支援コンサルティングについて述べた。最適化技術を活用することにより、物流分野だけでなく、SCM全体、生産計画や日々のスケジューリング、勤務シフト表の作成など、様々な分野の問題を解決することができる。

また、ビッグデータ、IoT、AIといったキーワードを背景にハードウエア、ソフトウェアともに新たな技術の開発が進んでいるが、富士通総研ではこれらの技術を最適化技術と組み合わせる取り組みを行っている。この取り組みにより、単純に数値的に最適な結果ではなく、より人間が導き出す答えに近いシミュレーション結果を求めるニーズにも対応できることを目指している。


  • 本事例中に記載の数値、社名・固有名詞等は掲載日現在のものであり、このページ の閲覧時には変更されている可能性があることをご了承ください。
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本記事の執筆者

ビジネスアナリティクスグループ
チーフシニアコンサルタント

太田 崇

 

2001年 富士通株式会社入社、株式会社富士通総研へ出向。主に、物流分野や環境分野おいて、最適化技術を活用したコンサルティング、システム化支援、技術教授などに従事。

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