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共創により「学びの改革」に取り組む長野県教育委員会様

共創により「学びの改革」に取り組む長野県教育委員会様

掲載日:2018年2月1日

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概要

共創により学びを変革する

少子高齢化、グローバル化の進展に加え、人工知能に代表される技術革新が、公教育にも非常に大きなインパクトを与えています。

長野県教育委員会様では、全ての高校が予測困難な時代に生きるために必要な「新たな社会を創造する力」を育成できる学びの質を保障できるよう、高校改革に取り組んでいます。その取り組みの一つが、「探究的な学び」の実践です。具現化に向け、富士通総研では、富士通グループとともに、ICTを活用した新たな学びの実証研究プロジェクトを長野県教育委員会様と共創で推進しています。互いに協働し、学び合いながら、新たな学びの創造にチャレンジしています。プロジェクトを通じ、一般的な講義形式の授業では得られない、「思考力の向上」、「情報活用能力の向上」、「キャリア発達への寄与」といった学習効果が確認できました。また、今後本格化する「エビデンスに基づく教育」の実現に向け、データ活用モデルの構築に取り組むなど、更なる学びの変革に取り組んでいます。

課題

人工知能に負けない、地域の未来を切り拓く力を育成する

長野県教育委員会様では、高校教育の改革を進めています。改革の基本方針をまとめた「学びの改革 基本構想」では、目指すべき方向性として、生徒一人ひとりが「新たな社会を創造する力」を身に付け、新たな社会の創造に貢献できるようにしたいとしています。

背景には、経済社会環境の急激な変化があります。少子高齢化とグローバル化の進行に加え、「知識基盤社会」の本格的な到来により、公教育には本質的な変化が求められています。「知識基盤社会」は、「新しい知識・情報・技術が、政治・経済・文化をはじめ社会のあらゆる領域での活動の基盤として飛躍的に重要性を増す社会」と定義されています(注1)。また、数年前には、10年以内に現在人間が行っている仕事の多くが人工知能などに置き換えられ、雇用の半分が失われると予想した論文が話題になりました。国も新学習指導要領において、これからの社会を「予測困難な時代」としたうえで、未来を切り拓くために必要な資質・能力を「知識・技能」「思考力・判断力・表現力等」「主体的に学習に取り組む態度」の3つの柱として示し、これらを確実に身に付けることが重要であるとしています。

このような背景を踏まえ、長野県教育委員会様では、地域の未来を切り拓くための資質・能力を育む高校教育の実現に向けた施策の一つとして、「探究的な学びの県内高校教育への浸透」を掲げています。この探究的な学びは、新学習指導要領で示されている、教科横断的な「主体的・対話的で深い学び」と共通するものです。学校がこの探究的な学びを実践するためには、「核」となる教育モデルを構築する必要があるとし、これを、社会と協働した学びの環境やICTを活用した学びの環境の整備と併せて推進することを課題としました。そして、富士通グループと共に課題解決に向けたプロジェクトに取り組むことになりました。

解決策

答えのない課題に共創で取り組む

プロジェクトは、2016年度に長野県松本県ヶ丘高等学校をモデル校に選定し実施した「RESAS(国が提供する地域経済分析システム)を活用した地方創生のための探究型学習推進事業」からスタートしました。同校の1年生8クラスを対象に「総合」及び「情報」の時間を活用し、地域を題材に自ら課題を発見し解決に向けた方策をまとめる、いわゆる「問題解決型学習」の授業を実施しました。授業のゴールは、政策提言と発表です。各生徒は、自ら地域の課題を発見し、その課題解決に向けた施策を提案書として取りまとめます。

また、授業では、ICTを積極的に活用します。生徒は、授業の中でインターネットを活用した調べ学習に加え、RESASを活用し、統計データをもとに定量的な分析を行います。教員は指導にあたり大枠の手順等は説明しますが、基本的には生徒が自ら判断し学習の進め方そのものを決める必要があります。

しかし、このような授業は、幾つかの事例はあるものの高校教育で日常的に行われているものではありません。教育プログラムの作成と実践は、未だ明確な答えがない課題であると言えます。この答えのない課題に取り組むためには、様々な知見を有する人々が仮説を立てながら実践と検証を繰り返し、より良いものになるよう小さな変化を継続的に起こしていく、共創のアプローチが有効です。試行錯誤を繰り返すことで考えを深め、長野県の実態に合った授業を創ることが期待できます。

そこで、教員、教育委員会に加え、地域課題の解決に向けた活動に取り組んでいる地域企業と富士通、社会人向けの教育プログラムの作成と実践に取り組んでいる富士通ラーニングメディア、ならびにICTを活用した教育の研究に取り組んでいる富士通総研が、それぞれの担当者の専門性を活かしたアイデアを出し合いながら、カリキュラムや教材を形にしていきました。それぞれの担当者自ら講師として授業を実際に行うとともに、指導方法や教材の内容などが適切であったかを、指導者、学習者の双方の観点から客観的に評価するため、「エビデンス」の収集と分析を行い、軌道修正を行いながらプロジェクトを推進しました。

ICT環境の構築と運用のみならず、指導方法、教材などを含めた教育のデザインと実践、評価に積極的に関わることで、ICTを効果的に活用した探究学習の授業モデルを構築することができます。(図表1)は、プロジェクトを通じ策定したカリキュラムです。授業を担当する教員は、このカリキュラムと各時限で活用する教材を「核」として、生徒の習熟度等を踏まえ、授業を独自にデザインすることができます。

プロジェクトは2017年度から対象校を13校に拡大し、現在も共創のアプローチを継続して実施しています。小さな更新を繰り返すことで、生徒が深く考える機会を増やすようにするなど、カリキュラムはより良いものに進化しています。

図表1 RESASを活用した探究学習の授業の流れ
【図表1】RESASを活用した探究学習の授業の流れ

(出典)富士通ラーニングメディア

成果

これまでの講義では得られない学力を育成する

プロジェクトの成果は、まず生徒の学習成果として表れました。何組かの生徒のグループが、内閣府地方創生推進室が主催する「地方創生☆政策アイデアコンテスト2016」に応募し、全国の学生たちと政策アイデアを競い合いました。2組が地方予選を通過し、さらにその1組は最終審査会に進出し最優秀賞である「地方創生担当大臣賞」を受賞しました。また、生徒アンケートの結果からも、「深く考えることができた」、「長野県についての理解を深めることができた」などの肯定的意見が多数挙げられています。教育現場におけるお客様の様々な課題解決に取り組んできた富士通グループの担当者が学習指導に直接関わることで、生徒に新たな刺激を与え、これまでの授業では得られない学習体験を提供できたと考えています。

第二の成果は、教員の取り組み姿勢の変化です。教員アンケートの結果からは、9割以上の教員が、探究学習の学習効果について肯定的な評価をしています。さらに「知的好奇心の向上」、「思考力の向上」、「情報利活用能力」といった資質・能力の育成に役立つとの評価も多数挙げられています。本プロジェクトでは、授業の最後に生徒ひとりひとりが自らの学習活動を自己評価し、その結果をアンケートシステムに入力しています。これは、生徒ひとりひとりの学習過程の把握だけを目的に実施しているものではありません。当社が教育の情報化の様々なプロジェクトに取り組んできた経験から、問題解決の資質・能力を高めるためには、自らの活動・思考を振り返り評価する「メタ認知」が有効であるとの調査仮説を導き出し、それに基づき、実施しているものです。調査そのものを資質・能力を高める機会にする新たなアプローチが、教員の高い評価に繋がっているのだと考えています。

第三の成果が「エビデンスに基づく教育」の基盤の構築です。このプロジェクトでは、個々の生徒がどのように自らの学習を評価しているかを分析できるよう、調査データを収集しデータベースとして蓄積しています。このデータを分析することで、情報リテラシーの習熟度と探究学習の成果の関係など、これまで捉えられなかった学びの姿を客観的に分析できるようになりました。問題点や課題の所在をより正確に捉えることで、教育の質向上に向けた取り組みをより効果的に行うことが期待できます。

これらの成果は、現場に根差した「実践」と、エビデンスを収集し分析する「研究」のシナジーにより生まれた価値であり、コンサルティングとシンクタンクの双方の機能がある富士通総研だからこそ提供できるものです。

今後も、富士通総研は、富士通グループ内外の様々なパートナーとの共創を通じ、新しい価値提供の創出に取り組んでいきます。

注釈

  • 注1:
    中央教育審議会答申「我が国の高等教育の将来像」(2005年1月28日)

関連コンテンツ

関連リンク

文部科学省様委託調査「校務の情報化等に関する研究」
PDF 教育の情報化に関する取組・意向等の実態調査(2016年3月)

総務省様様委託調査「教育分野における先進的なICT 利活用方策に関する調査研究」
PDF 教育分野における先進的なICT 利活用方策に関する調査研究(2015年3月)

  • 本事例中に記載の数値、社名・固有名詞等は掲載日現在のものであり、このページの閲覧時には変更されている可能性があることをご了承ください。
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本記事の執筆者

経済研究所
主任研究員

蛯子 准吏

 

東京理科大学理学部物理学科卒。ボーズ株式会社、長野オリンピック冬季競技大会組織委員会、富士通株式会社を経て富士通総研に出向(富士通株式会社文教ソリューション事業部兼務)。専門分野は、情報学、教育の情報化、行政学。2007年~2009年に内閣府地方分権改革推進委員会事務局に上席政策調査員として出向。2012年~2014年に北海道大学公共政策大学院に教授として出向。2015年4月より現職。地域社会、教育、行政を情報という共通の観点から分析し、社会システムと情報システムのあるべき姿をデザインする実践的研究に取り組んでいる。

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