GTM-MML4VXJ
Skip to main content

English

Japan

  1. ホーム >
  2. 調査・研究成果 >
  3. 研究レポート >
  4. 2011年 >
  5. 住基ネットはなぜ『悪者』となったのか(共通番号[国民ID]を失敗させないために)

住基ネットはなぜ『悪者』となったのか (共通番号[国民ID]を失敗させないために)

―住基ネット報道におけるセンセーショナル・バイアスと外部世論の形成に関する研究―

主席研究員 榎並 利博

2011年3月

要旨

共通番号(国民ID)の実現へ向けた議論が活発になっているが、この番号制度とは、これまで曖昧であった国民の受益と負担の関係を明確にし、国民が納得して新たな社会制度を構築していくための重要基盤として期待されている。しかし、10年前に同様な期待を担って構築された住基ネットは、共通番号になることを閉ざされてしまった。今回の共通番号が住基ネットの二の舞にならないようにするために、我々(政府・自治体、国民、マスコミ)はどうすれば良いのかという疑問が本論文の問題意識である。

住基ネットがこのような経過を辿った理由として、新聞の住基ネット報道においてセンセーショナル・バイアス(読者に衝撃を与えるような偏向性)が存在したために偏向した外部世論が形成され、その影響で政治家や官僚が住基ネットの推進に対して躊躇するようになったのではないかという仮説を立てた。

仮説検証方法として、全国紙5紙の新聞記事を分析のための基礎データとし、住基ネットを第1期(制度設計期)、第2期(稼働期)、第3期(運用期)に分割し、それぞれの期間においてどのようなセンセーショナル・バイアスが存在したのかを明らかにした。検証の結果、センセーショナル・バイアスが確認できたのは第2期だけであることがわかった。そして、第2期では5紙のうち4紙でバイアスが確認されたが、量的なセンセーショナル・バイアスと否定的表現によるセンセーショナル・バイアスによって外部世論の形成に影響を与えたと考えられるのは2紙であることがわかった。

この検証結果をもとに考察を加えると、新聞報道の影響によって訴訟や反対運動というかたちで外部世論が形成されたと考えられる。特に最も大きな影響を与えたのが住基ネット訴訟であり、訴訟は政府や自治体の関係者を忙殺させただけではなく、最高裁による合憲判決が下されるまで、政治家や政府・自治体関係者の動きを封じ込めることとなった。この間に起きたのが失われた年金納付記録問題であり、社会保障番号の議論が社会保障カードの話へとすり替えられ、番号論議が封殺されてしまった。その後も「住基ネットは悪者である」というイメージが付きまとい、共通番号の設計にも影を落としている。

住基ネットにおけるリスク報道を教訓に、共通番号が社会における統一的な番号として社会制度の基盤となり、国民の豊かな生活を実現していくため、政府・自治体は次の点に留意しながら番号制度を推進すべきことを提案する。

  • 共通番号制度やシステムは一斉稼働を避け、順次稼働させていくこと。
  • 政府と自治体間の協議の場を早急に設け、相互の協力関係を構築すること。
  • 国民のコンセンサス形成は、政府だけでなく民間とも連携して実施すること。

全文はPDFファイルをご参照ください。

住基ネットはなぜ『悪者』となったのか(共通番号[国民ID]を失敗させないために)―住基ネット報道におけるセンセーショナル・バイアスと外部世論の形成に関する研究― [2,532 KB]