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  5. 外航海運業にみる製造業の収益改善継続への示唆

No.206 : 外航海運業にみる製造業の収益改善継続への示唆

主任研究員 木村 達也

2004年9月

要旨

  1. わが国経済は、本格的な経済の拡大に踏み出したようにみられるが、バブル崩壊以降の長期低迷をもたらした需要構造変化に対する供給の対応の遅れなど構造的な問題の改善は緩慢である。また製造業では、エレクトロニクス製品などにおいてデジタル化、モジュラー化、オープン化に伴う競争激化が生じており、現在の収益回復の継続にはこれらの障害を乗り越えて行く必要がある。そのための方策を検討するにあたって、外航海運業での経験が参考になる。外航海運業の収益は、03年度に著しい改善が注目された。この背景には、中国などによる活発な荷動きがあるのは事実だが、その改善は94年度以降の顕著な収益回復のトレンド上にあり、80年代に経験した大きな収益悪化以降に実行された対策があって、はじめて実現したものである。
  2. 本稿での分析対象の中心は、外航海運業に現存する中核船社の3社およびこの3社に集約されてきた中核船社の単体である。中核船社の収益は81年度をピークに大きく落ち込み、80年代後半から90年代にかけては収益の回復もみられたが、本格的な回復は94年度以降である。収益の悪化は、売上高の減少、売上高に対する売上原価の変動費部分の比率上昇が主に影響しており、この背景には1.85年のプラザ合意後に円ドル為替レートが円高方向に変動したこと、2.わが国の産業構造の変動による原材料輸入の減少、3.アジア諸国・地域、共産国船社の台頭、4.定期船部門でのコンテナ船の急速な普及がサービスを擦り合わせ型からオープンなモジューラー型に転換し参入障壁を低下させたこと、5.定期船部門で独占禁止法の適用除外とされていた国際的なカルテルの海運同盟の拘束力が、84年米国新海運法を機に弱体化したことがある。
  3. 外航海運業の収益回復は、売上原価のうち固定費部分の削減が80年代から大きく寄与しており、また94年以降は売上高増加の影響も大きい。さらに一般管理費の削減も収益を下支えしている。これらについて実際に行われた対策の効果は、まず売上原価のうち固定費部分の削減は、必要乗組み船員数を削減した近代化船への取り組みや、船籍を海外に移すフラッギングアウトや日本籍船での混乗による外国人船員の活用で労務費を削減したことなどによるところが大きい。売上高増加は、3つの事業部門、定期船部門、不定期船部門、タンカー部門の各々の取り組みに効果がみられ、1.定期船部門では、海運集約体制の見直し、グローバル・アライアンス、現地化の推進による発地・揚地とも外国である三国間輸送の増加、2.不定期船部門では自動車船による三国間輸送の増加、3.タンカー部門ではLNG輸送への取り組み——によるところが大きい。一般管理費の削減は、陸上従業員の削減に加え、経営計画や全社的なプロジェクトとしてのコスト削減への継続的な取り組みによるところが大きい。
  4. 外航海運業の経験から、製造業の収益改善継続のために重要であると示唆される方策には、1.外国人労働者の活用の検討、2.現地化の推進、3.継続的なコスト削減への全社的な取り組み——がある。外国人労働者の活用の検討は、国内生産とアジア諸国・地域などでの生産の優劣を判断する際に国内生産のコスト面でのデメリットを緩和し、メリットを生かせるかの検討のために必要である。外国人労働者の導入にあたって問題とされる、1.社会的費用の発生、2.文化、習慣、宗教の相違による摩擦、3.職場内の意思疎通——などについては、外航海運業での外国人船員の活用から示唆される点が多い。現地化の推進は、欧米先進国の顧客の高度な要求に応えた製品を開発することによる競争力の強化、BRICs諸国のような高成長の見込まれる大市場での需要の獲得のために不可欠であり、そのためには外航海運業にみられる海外に設置した企業の徹底した現地化が重要である。また継続的なコスト削減への全社的な取り組みは、外航海運業では取り組み開始から10年以上経過しても、コスト構造改革運動の遺伝子としての定着化に向けた取り組みが続けられているように、製造業でも近年の収益回復で緩むことのない着実かつ継続的な取り組みが求められる。

全文はPDFファイルをご参照ください。

外航海運業にみる製造業の収益改善継続への示唆 [1.46 MB]