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  5. アジア地域におけるCDM実施の現状と課題

No.197 : アジア地域におけるCDM実施の現状と課題

上級研究員 濱崎 博

2004年5月

要旨

  1. 1970年代の二度にわたるオイルショックを契機に、我が国企業と政府は産業部門における省エネルギーの推進を行ってきた。その結果我が国は世界でも類を見ない、エネルギー効率の高い経済となった。しかし、1997年京都で開催された気候変動枠組条約第三回締約国会議(COP3)において、我が国は、2008年~2012年に1990年比6%もの温室効果ガスの削減が必要となった。既にエネルギー効率の高い我が国にとって、京都議定書に定められた温室効果ガス削減目標は非常に高い目標であり、削減目標達成により、経済の衰退・空洞化を招く危険性がある。京都議定書ではこういった過剰な費用負担を避ける手段の一つとして、発展途上国と共同で温室効果ガスを削減するクリーン開発メカニズム(CDM)が認められている。我が国はCDMを活用することにより温室効果ガス削減目標達成と安定した経済成長の両立が可能となるばかりでなく、CDM最大のホスト国であると期待されている中国を含むアジア地域でのCDMプロジェクトの実施により、アジア地域での酸性雨などの環境問題の影響低減につながる。さらにはエネルギー安全保障などの側面から中国などアジア諸国における省エネルギー、再生可能エネルギーの推進は必至であり、今後温暖化に関連するビジネスの拡大が期待でき、将来の巨大市場への先行参入の契機ともなる。
  2. 以上のような問題意識により、本研究ではアジア地域でCDMを行うことにより、我が国経済活動、及び労働市場への便益に関して一般均衡モデル(CGE)を用いた評価を行った。さらには、最大のCDMホスト国であると期待される中国でのCDM実施に関して、CDMの受け入れ態勢の整備状況、対象となるプロジェクト、CDMプロジェクト実施に伴うリスクに関して検討を行った。
  3. 我が国が、アジア地域でCDMを実施せず、京都議定書の削減目標を達成するためには、削減費用は、107.3US$/トン・炭素の費用が必要であり(ちなみに、これは石炭価格を200%、電力価格を6%、ガソリン価格を8%上昇させる)、そのためエネルギー多消費産業における生産は減少する。鉄鋼業で2.5%、化学・ゴム・プラスティック業で2.4%生産が減少する。GDPは約1.1%低下する。さらには、現在雇用されている人の1.3%が職を失う可能性がある。以上まとめると、京都議定書の削減目標は深刻な経済・社会影響を与えるといえる。アジア地域においてCDMを積極的に実施した場合には、削減費用はわずか4.1US$/トン・炭素であり、我が国経済・社会への影響は軽微である。計算結果によるとCDMの最大のホスト国は中国であり、中国以外のアジアにおけるCDMによる二酸化炭素削減量と比較しても、中国におけるCDMによる二酸化多炭素削減量は大きい。以上の計算結果より、中国を中心としたアジア地域でのCDM実施は、京都議定書の削減目標の達成と同時に、我が国経済・社会への影響を最小化する。
  4. 次に、実際にCDM最大のホスト国になると思われる中国においてCDMを実施する際の対象となるプロジェクト、中国受け入れ態勢、中国CDMのリスクに関して検討を行った。そもそもCDMプロジェクトを実施するには、ホスト国政府の承認を得る必要がある。中国政府の承認を得るためには、中国の第10次5ヵ年計画(2001~)に合致する必要がある。第10次5ヵ年計画からCDMの対象と思われるものとしては、1)エネルギー転換、2)バイオマス、メタンガス、3)フロンガス、4)産業部門省エネルギー技術などがある。これらの分野の中国の対応は遅れており、プロジェクト発掘は比較的容易である。中国側のCDM実施のための体制も、オランダと共同による内モンゴルでの風力発電CDMを実施するなど整いつつある。しかし、中国政府はCDMプロジェクトへの投資に関して、投資に伴うリターンは排出クレジットに限るとしている。投資者は現状では相場が形成されていない排出クレジットの価格リスクを全面的に負うこととなる。さらに、京都議定書は未発効であり、ロシアの批准を待っている段階である。京都議定書が発効しない場合、排出クレジット自体が紙くずになるリスクもある。
  5. まとめると、最大のCDMホスト国である中国において、温暖化関連ビジネスは非常に大きな市場へと成長するポテンシャルを持つばかりでなく、アジア地域でのCDM実施は、我が国の京都議定書削減目標の達成と削減に伴う経済・社会への影響の最小化の上で、必要不可欠である。中国側もCDM実施に関して受け入れ態勢が整ってきているなど、CDMプロジェクト実施のための環境は整備されつつある。しかし、一方でCDMプロジェクト実施には、1)価格形成がなされていない排出クレジットがリターンであるリスク、2)京都議定書発効リスク、などのリスクがあり、これらのリスクを全て投資者が負わなければいけない。オランダと中国共同CDMも、オランダ政府のクレジット買い上げスキームであることを考えると、我が国においても、炭素基金などCDM自体のリスクの分散化のための環境整備が早急に必要である。

全文はPDFファイルをご参照ください。

アジア地域におけるCDM実施の現状と課題 [730 KB]