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Japan

No.158 : 政府債務累増の帰結

-歴史的考察

主任研究員 米山 秀隆

2003年3月

要旨

  1. 政府債務比率(長期債務残高/GDP)が140%に達するなど、財政赤字の累増に歯止めがかからない。この先どのような形で政府債務が解消されるのかについては、明確な展望を描けない状況にある。
  2. 本研究においては、過去の先進諸国の歴史において政府債務が累増したケースで、それが最終的にどのような形で解消されたかを検証した。とりあげたケースは、アメリカ(第一次大戦後、第二次大戦後、80年代後半)、イギリス(ナポレオン戦争後)、ドイツ(第一次大戦後)、イタリア(90年代初め)、スウェーデン(90年代初め)、日本(第二次大戦後)の合計8つのケースである。
  3. 8つのケースは、1.政府債務累増の要因は何か(戦費調達か大きな政府か)、2.政府債務の累増の歯止めとなったきっかけは何か(通貨の信認低下が起こったか否か)、3.政府債務比率の低下要因は何か(国債償還か成長か物価上昇か)、という観点からいくつかに分類できる。
  4. 政府債務の累増に歯止めがかかるきっかけとしては、通貨暴落など通貨の信認低下が起こったケースが多い。こうしたケースでは市場の圧力を契機に危機感が高まり、改革が一気に進められた場合が多い。他方、例外的ではあるが、外圧ではなく、内圧によって改革を漸進的に進めたケースもある。
  5. 財政当局の力だけで財政再建が困難と思われるケースでは、中央銀行と協調し、国債市場をある程度買い支えることによって、政府債務比率をソフトランディングさせた場合がある。ただし、それがうまくいったケースでも、通貨の信認は維持された。通貨の信認が完全に失われたケースでは、ハイパーインフレが起こった。
  6. 政府債務の解消問題は、理論的には、政府の予算制約式を誰が満たすように行動するのかという問題に帰着する。すなわち財政当局が責任を持つのか、中央銀行が責任を持つのかという問題である。この点は過去の事例においても、そのいずれかあるいは両者の協調によって、政府債務が解消されたことが確認された。
  7. 現在の日本については、当面は、通貨暴落や国債市場暴落など、市場の圧力が働く可能性は低く、また政治状況をみても、内圧が高まって財政改革が進む可能性も乏しい。この先、市場の暴力的な反応を避け、通貨の信認を損なうことなく、政府債務をソフトランディングさせるためには、第一義的には、国民に危機感を共有させることと、政府が確実に実行可能な財政再建と成長の道筋を示すことが必要である。その過程では、中央銀行のサポートも必要になる。

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政府債務累増の帰結 -歴史的考察 [442 KB]