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  5. 制度移行期の中国農業制度改革の方向性 —「農業問題」と「農民問題」の考察を中心に

No.139 : 制度移行期の中国農業制度改革の方向性

—「農業問題」と「農民問題」の考察を中心に

主任研究員 柯 隆

2002年8月

要旨

  • 中国の農業制度は計画経済から市場経済への移行段階にあり、これからの人口増加に伴う食糧需要の拡大に対応するには、食糧の増産が必要である。それは作付面積の拡大を見込めない前提で、単位面積当たりの生産性の向上を図ることで食糧の増産が実現されなければならない。食糧を中心とする農産物の増産計画は、単なる量的拡大(quantity)だけでなく、品質と安全性の確保も必要不可欠である。
  • 農業問題に悪影響を与える要因として農民の収入減が上げられる。ここ数年、豊作が続いているが、農民の収入はそれほど増えておらず、都市部との所得格差は逆に拡大している。農民の収入が減少している背景には、食糧価格の低下もあるが、それよりも地方政府による様々な付加費徴収がある。農民の収入減という問題を解決しなければ、農民の生産意欲が減退し、将来において食糧危機に繋がり、大きな社会不安がもたらされる恐れがある。
  • WTO加盟により農業への影響が懸念されているが、農業改革がどこから着手するかは政府がそのビジョンを明確に示していない。農業の競争力と効率化を図るためには、まず行われなければならないのは農業行政の改革である。現在の農業行政の問題は、機能別(生産、流通など)に分割された組織になっており、総合的な(comprehensive)農業政策と農業戦略の実行には向かないことにある。したがって、総合的な「農業委員会」の設立が求められている。
  • 県(county)以下の地方自治体(郷や村など)は正規の資金調達手段を持っていないため、農民から様々な名目で付加費を徴収している。中央政府はこの問題を重くみて付加費の徴収を禁止する通達を出し、安徽省など一部の地域でテストしている。しかし、この問題を根本的に解決するには、現在村レベルで実施している民主的な選挙をその上層レベルにも適用する必要がある。
  • 人口動態予測によると、中国の総人口は2010年に14億人、2030年に16億人に達すると予想されている。そのために、耕地面積が増えない前提において食糧の増産を図る必要がある。ここで、考案しなければならないのは、新しい農業の将来像である。具体的に農業の市場化、情報化と産業化(agribusiness)を積極的に推進していく必要があると思われる。従来の農業生産体制は、消費者のニーズを十分に考慮していない問題を抱えている。これからの新しい農業は、情報通信技術(IT)を利用して、情報の非対称性を無くし、より生産的な農業システムの構築が求められる
  • 長期的にみて、農業問題は一国単位で解決されるものではなくて、地域のレベルで解決策を模索すべきであると思われる。日本と中国はアジアの大国であり、食糧の安全保障の枠組みを構築するために、対話を強化する必要がある。これは政府レベルに限らず、民間レベルの交流強化も重要な役割を果たすものと思われる。

全文はPDFファイルをご参照ください。

制度移行期の中国農業制度改革の方向性 —「農業問題」と「農民問題」の考察を中心に [601 KB]