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Japan

No.59 : 公会計改革の方向性

主任研究員 岸 道雄

1999年9月

要旨

  1. 99年2月に公表された経済戦略会議の答申において、政府・自治体の会計改革に関する提言が盛り込まれた。また、新東京都知事となった石原慎太郎氏は、東京都の貸借対照表を作成することを公言し、実際に7月下旬に公表されるなど、公会計改革への動きが広がりつつある。
  2. 現行の政府・自治体会計は、単式簿記、現金主義であり、その弊害は、(1)支出の先送りによる表面上の効率化策が取られがち、(2)フローとストックが分離、(3)一覧性の欠如(連結の欠如)、(4)決算軽視、予算との非連動性、(5)真の行政コストの算出が困難、(6)長期的な政策コストの把握が困難、等が挙げられる。
  3. こうした弊害に対して、これまで数多くの優れた研究・提言がなされてきたが、全体的な傾向としては、自治体全体あるいは国全体の行財政改革と関連付けて、どのような公会計改革が望まれるのかについて踏み込んで論じられたものが少ないように思われる。とりわけ、貸借対照表から得られる情報をいかにして政府・自治体の行財政運営に生かすのかといった視点がやや軽視されているようである。したがって、貸借対照表を作成しさえすれば、政府・自治体は効率的かつ効果的な行財政運営を実現できるのか、ということが問われているのである。
  4. こうした点を検討するうえで参考になるのが、公会計改革において先進国と言われる、ニュージーランド、イギリス、米国の改革の目的、内容とその意義である。
  5. ニュージーランド、イギリスは、基本的にすべての固定資産を時価で計上、資産保有コストを各省庁に賦課し、業績測定情報とリンクさせ予算配分の意思決定へ反映させるシステムを構築している。固定資産の効率的利用、各省庁におけるミクロ・マネジメントを重視していると言える。これに対し、米国の財務会計報告は「アカウンタビリティの確保」に主眼が置かれている。ただし、大きなフレームワークとしては、米国も業績情報と財務報告をセットにして、予算配分の意思決定に生かそうとする動きがあり、財務会計情報の活用の仕方において、米国も他の2国と同様の方向へ向かっているようである。
  6. 3国の先進事例を踏まえて、我が国の公会計改革の方向性としては、(1)発生主義会計導入は、結果志向の行財政管理体制の中に位置付けられるべきであり、(2)アウトプットに基づくマネジメント体制を重視し(予算、決算、業績測定の統制の中心をアウトプット・ベースにする)、(3)活動基準原価計算(ABC)を導入、(4)固定資産は原則として時価評価、(5)限定的でも資産保有コストを導入、(6)行政マネジメントにおけるインセンティブの仕組みを明確にする、といったことが求められよう。