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No.46 : マレーシアの金融危機

主任研究員 村上 美智子

1999年4月

要旨

  1. マレーシアの金融部門では、98年に入り、通貨安定のための緊縮政策に伴う景気後退を背景に不良債権が急増した。今回、銀行危機が発生した背景には、短期資本の流入増大に伴って生じた資産価格バブルの崩壊があった。資産価格の急落は、当該部門への貸出の焦げ付きと担保価値の下落という2つの経路を通じて金融機関の資産内容を悪化させたが、とりわけ今回の危機では、不動産価格ばかりでなく、株価の下落に伴う不良債権の増加が大きな問題であった。
  2. マレーシアでは、経済成長に加えて、低所得層であるブミ(マレー人)の経済的地位の向上が政策課題の中心に据えられ、その一環として、株式市場を通じてブミによる資本の所有が政策面から後押しされた。このため、マレーシアの金融システムでは、80年代後半から、商業銀行を中心とする間接金融に加えて株式市場の役割が拡大したが、政策手段としての市場の利用は価格形成を歪めて市場の肥大化をまねく結果となった。
  3. 金融再建については、不良債権の買い取りや管理・処理を目的とするダナハルタ、金融機関への資本注入を担うダナモダル、および企業債務リストラ委員会が設置され、そのもとで不良債権の処理や金融機関の資本再構築が本格始動している。また、98年9月に為替管理の強化と固定相場制への移行が行われ、金融・財政の緩和による景気の早期回復や金融再建コストの軽減が目指された。こうした措置を受け、景気動向にも明るい材料が散見されるようになったほか、現行の為替レートは当初の割高感が解消しつつある。こうしたなか、為替管理の部分的緩和が発表され、直接的な規制措置の長期化を回避する姿勢が明らかとなった。
  4. 東アジアのなかでも直接金融への移行という点で先行していたマレーシアの今回の危機は、途上国が直接金融の役割の拡大を図るうえで、間接金融とのリンクがはらむリスクを改めて認識させたほか、市場に対する政策的な中立性の確立や機関投資家の育成の重要性を浮きぼりにした。マレーシアの金融再建の見通しについては、大きな状況の変化がなければ、所要資金の調達は相当程度、国内での対応が可能とみられるものの、一次産品価格の動向が不透明要因となっている。日本としては、新宮沢構想のもとで、金融再建機関への金融支援ためのファシリティーの設定や、外貨流動性に対する支援の表明を急ぐべきであろう。さらに、景気回復にむけてアブソーバーとしての機能を提供すべく、日本自身の景気回復を急がなければならない。