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No.27 : グローバル・キャピタルとアジア通貨危機-通貨の交換性と資本取引の自由化について

茨城大学助教授 勝 悦子

1998年3月

要旨

  1. 昨年7月に始まるアジアの通貨危機の特徴は、(1)一国の経済に対する「信用」が急速に低下するなかで通貨価値が暴落し、自国通貨建ての対外債務が急増したり、あるいは株価が暴落したことに伴って金融機関の資産が急速に劣化し、信用収縮が起きて経済危機が一層深刻化したこと、(2)一国の危機にとどまらず、他のエマージング・マーケットへも伝搬し、半ば連鎖的に起きていること(contagion)である。
  2. 今回の危機が周辺諸国や他のエマージング・マーケットへも飛び火したことは、冷戦構造の終結や世界的な金融市場統合の潮流のなかで国際的資金フローが飛躍的に増大したことが危機の根底にあることを示している。先進諸国における「機関化」や「規制緩和」に伴う競争激化、更には、途上国における資本取引の急速な自由化(外資取引の自由化)が急速に進んだことを背景に、とりわけエマージング・マーケットと呼ばれる新興経済国への資金の流入が90年代に入り急増した。
  3. このように国際的資金フローが急増するなかで、適切な為替レート調整を行わずに対外資本取引の自由化を急速に進めたことが今回の危機の主因であることを勘案すると、通貨の交換性と資本取引の自由化という文脈でこれを解釈する必要がある。経常取引における通貨の交換性は、世界貿易の増大のためには必要不可欠であり、現在全世界の7割強の国が交換性を回復している(IMF8条国)。しかし資本取引における通貨の交換性は慎重な判断が必要であり、なかでも国内金融システムの整備、適切なマクロ経済政策、および適切な為替政策の遂行などが必要条件である。
  4. このように、今回の危機が極めて「金融的」な危機であることを勘案すると、従来の緊縮型のIMF調整プログラムだけでは不充分であり、とりわけ銀行制度改革を含めたアジア地域における産業構造改革の一層の推進が必要不可欠である。わが国も知的援助、技術援助を積極的に行うことに加え、内需主導型の経済成長経路にわが国経済が再び移行していくことが急務であろう。