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Japan

No.4 : アジア太平洋における経済・技術協力の新展開

研究員 杉浦 恵志

1997年3月

要旨

  1. 自由化・円滑化・協力の有機的関連を通じて各参加国の自発的貢献を求めるAPECは、地域経済統合の新しい可能性を秘めている。APECはその生成過程及び円滑化の経験を通じて三本柱を貫く暗黙のルールを蓄積してきた。このルールは、昨年の「経済協力・開発強化に関する枠組宣言」によって、ようやく経済・技術協力でも明文化されたれ。過ルールなきメカニズム作りは迷走したが、今年は環境分野で期待がかかる。それは、すべての参加国及び環境問題のあらゆ対象・原因・範囲に共通な「環境行動指針」に向けて合意を形成し、具体的な問題は各国の「環境個別計画」に委ねられる、といったようなものになるだろう。
  2. 日本の援助が、円借款を中心に相手国の物理的・制度的な市場基盤の整備に貢献し、持続的成長に対する制約を緩和したことはまず間違いない。しかし、経済的相互依存がますます深まりつつある現在、独自のあるいは不透明な市場制度の移植は、その国の産業の競争力を強化するメリットよりも、その国に投資したり安価で質の良い製品・サービスを輸入したりする際に生じるリスクやコストを増加させるデメリットの方が大きい。また、電力や通信インフラのように市場基盤自体が民間投資の対象になると、援助の貿易・投資歪曲効果も厳しく追及されざるをえない。さらに、制約を緩和するために日本から移転される技術や政策の費用対効果も、相手国の現状に照らして厳しく評価する必要がある。
  3. しかし、そうは言っても、先進国主導で設定された自由化目標や多国間ルール、環境・省エネ基準を途上国がそのまま受け入れるのは容易ではない。そこで、経済・人材・知識・情報の交流を通じて多様な手段をプールし、共通の目標・ルール・基準を達成するためにこうした手段を必要とする国が、自発的努力を補完できるように適宜プールから取り出して組み合わせる。共通プールへの独自アイデアの供出、すなわち「調和の中の多様性」、これこそが日本の目指すべき「援助から協力への脱皮」の原理原則である。