Skip to main content

English

Japan

No.3 : アジアの国際金融センター

主任研究員 村上美智子

1997年3月

要旨

  1. 東アジアにおける国際資本移動は、80年代後半以降、高成長の持続や経済自由化および金融改革の進展を背景に資本流入が量的拡大を示すとともに質的にも変化し、資本形態について公的資本から民間資本へのシフトが進展したほか、域内資本移動が増加するなど移動経路についても大きく変化した。こうした変化は、域内においてNIEsが投資国として台頭する一方、ASEAN、次いで中国が投資受け入れ国として浮上してきたことに伴い生じた部分が大きかった。
  2. 東アジアの伝統的な国際金融センターである香港、シンガポールでは、国際資本移動が変化するなかで、中国、ASEANにおける膨大な資金需要の発生を受けて各々を後背地とする金融センターとしての機能が高まった。こうした展開により国際金融センターとしての地位は向上したが、香港では中国への主権返還を控え将来への不透明感が高まったこともあり、自由放任を旨とする伝統的なレッセフェールを修正する動きを強めている。一方、シンガポールでは周辺国が国際金融市場の育成に注力するようになったことを受け、金融技術の高度化に対応した市場整備を一段と進めるとともに、より広範な地域において資金仲介機能を担うことを目指している。このほか、90年代に入るとマレーシア、タイ、上海、台湾において新しい国際金融センターをめざす動きが活発化した。
  3. 80年代後半に国際金融センターとしての発展が展望された東京では、90年代に入り金融取り引きが低迷する中で市場整備の遅れが顕在化した。このため、「日本版ビッグバン」構想の下、効率的・安定的な市場を実現すべく幅広い競争の導入や制度インフラの国際標準化に向けた改革が着手されることになった。
  4. 東アジアの各市場の発展の可能性については、香港では中国への主権返還後も国際金融センターとしての機能が維持・強化されるとみられるほか、シンガポールでは通貨取り引き部門における優位性を一段と高めつつ、東アジアの国際金融センターとしてさらに発展しよう。一方、後発市場については、長期的には上海が東アジアの国際金融センターとして発展する可能性を秘めているものの、他の市場については地域限定的な金融センターとしての成長が見込まれる。東京市場については、東アジアからの調達・運用拠点としての機能の強化・拡充を重点的に進め、アジアの国際金融センターとしての地位向上を目指すことが必要であろう。