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2011・2012年度経済見通し(東日本大震災後改訂)

2011年4月6日
株式会社富士通総研
経済研究所

 

当社は、東日本大震災の発生を受け、経済見通しを改訂しました。震災は当初は、生産や輸出を停滞させることにより経済に悪影響を及ぼすと考えられますが、やがて復興需要が顕在化してくれば、経済にプラスの影響を与えていくと考えられます。前回予測(3月10日)に比較して、2011年度の実質成長率は0.6ポイント下方修正、2012年度の実質成長率は0.4ポイント上方修正しました。

実質成長率: 2010年度 3.0%、2011年度 0.9%、2012年度 2.6%

【悪影響を過大視すべきではない】

震災が経済に与える影響としては、企業活動の面では工場の被災や物流の寸断、さらには電力不足による生産活動の停滞がどの程度続くと見るかが重要となる。また、消費者行動の面では、雇用悪化やマインド悪化に伴う消費停滞の度合いが問題になる。以上のような面で震災は当初は経済にマイナスの影響を及ぼすが、やがては復興需要によってプラス面が顕在化してくると考えられる。

東北地方の生産の停滞で深刻と考えられているのは、電子部品や情報関連、自動車などの中間財の生産である。電子部品や情報関連については、東北地方は近年、工場を積極的に誘致することで、生産シェアを高めてきた。電子部品・デバイス・電子回路の東北6県の出荷額のシェアは12.3%、情報通信機械の東北6県の出荷額のシェアは14.4%を占めている(2009年)。東北6県のうち、岩手、宮城、福島の被害は甚大で生産がストップし、これらの県の工場からの部品供給によって生産している他地域の工場の生産も止めざるを得ない状態となっている。自動車部品に関しては、供給が途絶えたことによりアメリカなど海外メーカーも減産を余儀なくされている。

当面、こうした状態が続くと考えられるが、メーカーの間では、復旧を急ぐとともに東北の工場で生産していた部品の生産を他地域に移管するなど、着実に対応を進めており、おそらく数か月以内にはかなり態勢が整っていくと思われる。

一方、電力不足による計画停電の影響については、製品によっては、短時間でも停電すると生産が成り立たないものもあり、メーカーは対応に苦慮している。この問題については夏場の電力が賄えるかという点が最重要課題となっているが、各企業は停電の影響を受けないような稼動方法に切り替えたり(夜間や休日操業、自家発電設備の導入など)、西日本への生産移管を進めており、夏場までにまだ時間があることから、工場稼働状況を震災前の水準に戻すのは無理にしても、ある程度は対応できるようになっていくと思われる。特に、電力不足は今年だけの問題とは考えられないため、西日本への生産移管は今後真剣に考えていかざるを得ないと考えられる。

生産については、現状の深刻さに目を奪われがちであるが、企業の対応力の強化によってある程度は克服できる性質のものであり、日本経済に長期にわたって悪影響を及ぼすものではないと考えられる。3月途中からの生産急減の影響は、4~6月期のマイナス成長に表れるが、それ以降については徐々に悪影響が解消する方向に向かっていくと思われる。

【復興需要により2012年度は上方修正】

一方、生産減少が長引けば、所得の低下、さらには消費の低迷というルートで経済に悪影響を及ぼすが、生産減少が長引かなければ、影響は最小限にとどまると考えられる。消費の問題は所得面よりはマインド面であるが、自粛ムードの高まりで不要不急の消費を控える傾向が強まっている。一方では震災直後は日用品の買いだめに走る傾向も見られ、今後は買いだめした商品の売れ行きが鈍ることも懸念される。消費が不規則な状態から脱却するためには、半年程度はかかると考えられる。

余震や原発問題が収束すれば、復興に取り組むことができる環境が整う。順調に推移すれば2011年度後半には復興需要が本格的に出てくることになる。阪神大震災時は、3回の補正予算で計3.2兆円を支出し、復興資金は10年間で総額16兆円あまりが投入された。今回の場合、住宅や道路、港湾などのストックの被害額が阪神大震災時の2倍になるとすれば、復興資金もまた2倍は必要になる。本予測では、2011年度、2012年度にそれぞれ5兆円ずつ公共事業が追加されると想定した。

以上から、2011年度の実質成長率は0.6ポイント下方修正、2012年度は0.4ポイント上方修正した。

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