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政党Facebookコミュニティで意見の過激化は起こったか?
―コメントの極性分析で見るSNS時代の情報消費―

政党Facebookコミュニティで意見の過激化は起こったか?

―コメントの極性分析で見るSNS時代の情報消費―

発行日:2018年9月5日

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要旨

  • 近年、ニュース情報を獲得するソースに変化が見られる。年齢が若くなるほどSNSをソースとする割合が高いNewmanら(2017)。今後ニュースの情報源としてSNSの重要性が増すと考えられる。一方で、SNSでは自分が好む限定的な情報に接しがち(選択的接触)となり、それが集団に及ぶと、意見が過激化し、社会の分断を生むかもしれないことが懸念され、現在さかんに議論されている。
  • しかし、わが国では、SNSの書き込みの意味まで分析して検証した研究はこれまでほとんどなかった。SNS上の実際の書き込みや反応を分析することで、その実態を把握し、知見を創出できた意義は大きい。
  • 本稿では、2017年10月の衆院選での2つの新党のFacebookページへの参加者のコメントが、他の参加者たちにどのような影響を与えているか、意見の過激化が起こったかを調べた。
  • その結果、たくさんコメントする参加者は、終始一貫してネガティブか、ポジティブかのいずれかに寄ったコメントをしていること、また、他者に与える影響力が必ずしも強いわけではないことがわかった。コミュニティ内で同じような意見が繰り返しまわることで、個人や集団の意見が過激化することは確認できなかった。

1.情報源として高まるSNSの重要性

  • FacebookやTwitterなどSNS上のやりとりが、社会変革や大きな社会運動につながる契機となることはよく知られている。たとえば、少し前の話ではあるが、Facebookの情報交換を契機として“アラブの春(注1) ”をもたらしたことや、最近では“#DeleteUberキャンペーン(注2) ”など、SNSの影響力の大きさを示す事例は多くある。
  • SNSは個人のコミュニケーションの形態を変えてきただけでなく、今では様々な情報の獲得の主要な手段として重要な役割を果たすようになってきている。Newmanら(2017)(注3) の調査では、米国のサンプルにおいて、55歳以上では51%がテレビを主要なニュースの情報獲得源としているのに対して、若年層(18~24歳)は64%がインターネットをニュースの主要な情報獲得源としており、そのうちSNSの利用は33%となり、テレビの24%を上回ることが明らかになっている。我が国でも、同様の指摘が見られ、ニュースの情報源としてのSNSへの依存度は年齢が若くなるほど高まることから、今後の情報獲得源としてのSNSの役割と重要性はさらに増していくと考えられる。

2.SNSは我々の情報消費にどのように影響を与えるか?

  • 一方で、SNSでは、その情報の信頼性や伝搬の影響がしばしば問題として指摘される。例えば、トランプ大統領がさかんに話題にするフェイクニュースの問題や、ケンブリッジ・アナリティカの情報操作疑惑(注4) など、SNSの悪用の懸念が高まっている。また、別の側面では、情報活用に関する人間の心理的特性上のネガティブな影響の懸念もしばしば挙げられる。その一つがエコーチャンバー(Echo-chamber)と呼ばれる現象である。
  • エコーチャンバー現象とは「同じ意見を持つコミュニティ内では、同じような意見が何度も繰り返されることで意見が過激化すること」を指す。SNSでは個人が好む限定的な情報に接しやすくなる(選択的接触)可能性があり、同じような情報を求める人たち、同じような意見を持つ人たちとの結びつきを深め、特定の志向に偏ったコミュニティの形成を加速させるのではないかなどの懸念がある。
  • しかしながら、これらの懸念を含め、実際にSNSでやりとりされる情報がどのように消費され、社会や個人の活動や意見に影響を及ぼしているかについては、まだよくわかっていない。それらの影響や特性を理解した上で、SNSの有効な活用を考えていく必要があるだろう。
  • SNSの情報や意見の交換は、生のデータとしてSNS上に残されている。筆者らは、こうしたSNSの生のコメントデータを分析し、SNSにおける情報消費と伝搬の影響、その特性やメカニズムについて検討を行っている。本稿ではその成果の一部を紹介する。SNSの影響が様々に議論される昨今において、とくに、SNS上で意見の過激化が起こる可能性がある実社会的活動(イベント)に関するSNS上で行われた実際のやり取りを分析し、その実態を明らかにした点で意義が大きいものと考える。

3.調査:SNSにより政治的な意見は過激化したのか?

  • 2017年10月20日投開票の衆議院選挙は、小池東京都知事が率いた希望の党の設立や民進党の希望の党への合流、立憲民主党の設立などわずかな期間で目まぐるしい変化がある選挙であった。それと同時に、選挙活動に関する情報の発信と議論の場としてSNSが本格的に活用された初めての選挙でもあった。希望の党と立憲民主党の両党は、党設立とともにFacebookページを立ち上げ、情報発信を図り、多くの閲覧者とそのコメントを得た。
  • これら両党のFBページでのやり取りは、同じ意見や志向を持つ者たちが集まるネット上のコミュニティが形成されたと捉えることができる。そこで、各党がFacebookを通じて発信した情報(ポスト)に対して、コメントをした閲覧者を各党のコミュニティへの参加者と考え、コミュニティ内の情報の伝搬と消費について分析した。具体的には、両政党のFacebookページの投稿に対するコメントを分析することで、コミュニティ参加者の意見が過激化していたか、そのメカニズムとしてコミュニティ内で情報が回っているか、どんなコメントが影響を持ったか、などを調べた。
  • この2つの政党は志向を異にしており、それぞれのコミュニティの志向に沿った意見の過激化が見られる可能性がある。また、選挙期間から選挙後の活動に至って、両党には様々にセンセーショナルなインシデントがあった。各党Facebookコミュニティにおいても様々な意見の分裂が起きた可能性がある。このような対象を本稿の関心となる視点を持って分析する意義は大きいだろう。
  • Facebook上のポスト、コメント情報については、Facebook Graph apiを活用することで収集した。各党FBページ開設時から2017年11月30日までのデータを対象とした。具体的に利用したデータは、ポストに対するコメント内容、参加者(コメントの記入者:ID化したもの)、コメントされた時間、各コメントへの賛同(「いいね」の数)である。ただし、公表不可で設定されている情報は対象外とした。
  • 次に、Facebookでの各コメント内容については、それぞれがどのくらいネガティブか、どのくらいポジティブかで測ることとし、それを数値化することで客観的に評価した。ネガ・ポジの数値化(NP値)は、-1~1の間の数値を連続的にとり、-1が最もネガティブであり、1が最もポジティブとした。ネガ・ポジの数値化の方法については、まず各コメントを形態素解析(注5) し、単語レベルに切り分けた後に、各コメントに含まれる単語をもとに、高村ら(2006)の単語感情極性対応表(注6) を用いた極性分析を行うことで、各コメントのNP値を算出した。

4.結果:情報はどのように消費されたか?

(1) 意見は集約されていったか?エコーチャンバー現象は見られたか?

  • 意見が過激化したかの判定は、先行研究であるDel Vicairo(2016)を参考にする。Del Vicairo(2016)では、Facebookコミュニティへの参加度合いが高まる(コメント回数が増えることを参加度が高まると捉えている)に連れ、NP値の多様性(ばらつき)が減少し、一方向にNP値が集約していくかで判定している。そして、その状態を意見が過激化したことと捉え、エコーチャンバー現象によりそれが起こったと解釈している。
  • 図表1は、本稿で分析した各党Facebookページの参加者のコメント回数と、コメントした参加者ごとのコメントのNP値の平均を示している。限られたサンプルサイズでの結果ではあるが、この結果からコメント回数が増加するとともに、意見の多様性が減少し、ネガ・ポジ評価が集約されていることが見て取れる。Del Vicairo(2016)に従えば、両政党のFacebookページコミュニティにおいて、意見が過激化したと解釈できそうである。
  • 一方で、はたして、これはDel Vicairo(2016)の言うように、意見が過激化し、それがエコーチャンバー現象によるものなのかについては疑問が残る。そこで、深掘りの分析を進めた。

図表1 コメント数とNP値の関係(左図:立憲民主党、右図:希望の党)
図表1:コメント数とNP値の関係(左図:立憲民主党、右図:希望の党)

(出所:調査に基づき富士通総研作成)

(2) Facebookコミュニティへの参加度が高まることで意見が過激化したのか?

  • 意見の過激化については、もう少し詳細を深掘りする必要がある。なぜなら、意見の過激化が、集団として意見が集約されたことによるのか、個人の意見が単に過激化したにすぎないのかがわからないためである。
  • 図表1は、1つのドットがコメントした参加者1人のNP値の平均を示している。各党で多数のコメント(希望:715人1632コメント、立憲民主1769人4764コメント)があった中で、複数回コメントをした人数は限られる。各党で同様の傾向が見られ、コメントが1度きりだった参加者はおよそ7割、5回までの参加者でおよそ9割5分が占められた。つまり、何度もコメントした参加者はごく一部であった。
  • 集団としてではなく、個人が過激化していった可能性が考えられる。そこで、各党コメント回数が多い上位10名参加者に絞り込み、そのNP値の分散(NP値の上下の揺れ幅と回数を追った変化)を調べた。すると、両党ともにコメント数が多い上位の参加者はNP値の分散は極めて小さかった。つまり、一貫してネガ・ポジのいずれかに偏ったコメントをしていたことにり、意見が集約的に変化したとは言えないようである。

(3) どんなコメントに影響を受けたか?コミュニティ内で同じような情報が回ったのか?

  • 一方、コミュニティ内では、どのようなコメントに影響を受けたのだろうか。コミュニティ内では、同じような意見となる情報が回って過激化したのだろうか。Facebookコミュニティへの参加者の中には、自分の意見としてコメントしないまでも、多数コメントした者や過激な意見への支持や賛同があったとしてもおかしくはない。そこで、指示や賛同を示すバロメータとして、各コメントへの「いいね」の数を調べた。
  • 図表2にコメント数ごとの「いいね」の数をまとめて示す。全体の結果では、両政党で同様の傾向が見られた。図表2では、各ドットは「いいね」を得られたコメントを表し、縦軸は各コメントが「いいね」を獲得した数を表している。横軸はコメントした参加者1人あたりのコメント総数である。横軸の数値が小さいうちは様々な参加者が「いいね」を獲得しており、図表1に従えば内容も多様性があることになる。一方、数値が40を超えると、もはや特定の1人の参加者のコメントとなり、(2)の結果従えば、内容も一方向に偏りがあるものとなる。そして、ドットはその参加者自身が獲得した「いいね」の数を表している。
  • 図表2(左図)をみると、横軸数値1のドットは、1度しかコメントしていない参加者のコメントを示している。1度きりにもかかわらず、全体の最高値となる50を超える「いいね」を得た参加者がいる。他にもコメント数が少ない参加者にもかかわらず、多くの「いいね」を得ているコメントがあることがわかる。一方で、横軸数値150は、1人で150のコメントをした参加者の「いいね」獲得数を示している。最高で20個の「いいね」を獲得するコメントがある一方で、ドットの総数は16個である。つまり、「いいね」を獲得したコメントは、1割程度にとどまっており、必ずしも多くの賛同を得たわけではないことがわかる。また、他の多数コメントした参加者も同様で、飛び抜けて「いいね」を多く得たわけではなかった。統計処理においても、コメント数の増加と「いいね」の数の間に相関は見られなかった。
  • これらのことから、特定の意見に支持や賛同(「いいね」の数)が集まったとは言えず、意見が集約されたとは言えない。また、多様性あるコメントへの賛同も多く、コミュニティ内で繰り返される同じような情報が支持されるようになったことも考えにくい結果であった。

図表2 コメント数と「いいね」の数の関係(左図:立憲民主党、右図:希望の党)
図表2:コメント数と「いいね」の数の関係(左図:立憲民主党、右図:希望の党)

(出所:調査に基づき富士通総研作成)

5.まとめ

  • SNSは、誰でも気軽に意見表明ができる場である。今回Facebookコミュニティの参加者の中には、一部一方向に偏った過激な意見を持つ人が見られたが、その人たちの多くが回数を重ねるごとに過激化したというよりも当初からどちらかに偏った意見を持ってコメントしているという可能性が強かった。また、情報の伝搬や消費を見た場合には、両政党のFacebookコミュニティに参加した人たち(「いいね」した参加者)の大半は、それら過激なコメントをする人たちに対して過剰に反応はしていないことが示唆される。つまり、情報の消費者は、コメントされた情報を鵜呑みにしたり、強い意見に安易に同調してしまうのではなく、コミュニティの中にどのような意見があることを見極め、自分がそれをどう感じるかを冷静に見た判断をしていることが推察される。
  • 今回のように、SNS上に残るコメント等のデータを分析することで、様々な観点で客観的な判断や評価をできるようになる。一方で、この結果は、今回の参加者に大きな影響をもたらす人がいなかったのかもしれないし、他の要因も考えられるかもしれない。今後も様々な事例を分析し検討していく必要がある。
  • SNSによる情報の獲得と消費は、今後ますます重要になっていくと思われるが、フェイクニュースや誤報なども含め、情報を消費する立場となったときには、内容や状況の判断や評価はより困難なものとなる。こうしたコメントを即時に分析できる技術がより進化することで、人が状況をすばやく理解するのを手助けできるようにしていく必要があるとともに、いつの時代になっても、人は自分が最終的にどのように判断をするかに、どの情報をどのように使うかをしっかりと考えていく必要がある。

参考文献

  • Michela Del Vicario, Gianna Vivaldo, Alessandro Bessi, Fabiana Zollo, Antonio Scala, Guido Caldarelli & Walter Quattrociocchi(2016) “Echo Chambers: Emotional Contagion and Group Polarization on Facebook”, Scientific Reports, volume 6, Article number: 37825.
  • 高村大也, 乾孝司, 奥村学(2006)「スピンモデルによる単語の感情極性抽出」, 情報処理学会論文誌ジャーナル, Vol.47 No.02 pp. 627-637.

注釈

  • (注1)
    2011年初頭から中東・北アフリカ地域の各国で本格化した一連の民主化運動。
  • (注2)
    トランプ大統領の移民政策に対するデモが行われた際、Uberが「ジョン・F・ケネディ国際空港付近のUberは割増料金を停止する」とツイートし、「反対デモを解散させようとしている」「利益を得ようとしている」ととられ、各地で次々とUberのアカウントが削除される事態に発展した。
  • (注3)
  • (注4)
    英政治コンサルティング会社ケンブリッジ・アナリティカは、2016年の米大統領選と英国の欧州連合離脱をめぐる英国民投票の結果に影響を与えるため、数千万人分のフェイスブック利用者の個人データを不正使用したとの疑惑がかけられた。
  • (注5)
    京都大学情報学研究科−日本電信電話株式会社コミュニケーション科学基礎研究所 共同研究ユニットプロジェクトを通じて開発されたオープンソースの形態素解析エンジンであるMeCabを利用した。
    http://taku910.github.io/mecab/Open a new window
  • (注6)
中島 正人

本記事の執筆者

上級研究員

中島 正人

 

産業技術総合研究所、科学技術振興機構を経て、2016年富士通総研入社。 専門は認知科学、サービス科学。ICTを活用したサービス現場のスキル・知識の理解技術の開発などに従事。現在は医療・介護サービスのイノベーション創出に関する研究を進めている。 著書は「サービス工学-51の技術と実践―」(朝倉出版:共著2012)など。 博士(工学)。

濱崎 博

本記事の執筆者

上席主任研究員

濱崎 博

 

MSt (Master of Studies) in Manufacturing, University of Cambridge, Wolfson College, the United Kingdom. MSc (Master of Science) and DIC (Diploma of Imperial College) in Energy Policy, Imperial College Centre for Environmental Technologies (ICCET), Imperial College of Science, Technology and Medicine, University of London, the United Kingdom.
1995年 富士総合研究所(現 みずほ情報総研)入社、1997年 富士通総研経済研究所入社、2007年~2009年 国際公共政策研究センター出向、2009年5月~ 国際公共政策研究センター客員研究員。

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