GTM-MML4VXJ
Skip to main content

English

Japan

  1. ホーム >
  2. 調査・研究成果 >
  3. ニューズレター >
  4. 2017年 >
  5. 休眠預金活用法がもたらす影響と課題

休眠預金活用法がもたらす影響と課題 -ソーシャルイノベーションの加速につながるか-

発行日 2017年1月25日
上級研究員 趙 瑋琳

【要旨】

  • 休眠預金の活用に関して、積極的に推進してきた英国や韓国などに続き、日本でも2016年12月9日に「民間公益活動を促進するための休眠預金等に係る資金の活用に関する法律」が公布された。
  • 2010年~2013年度の休眠預金の平均発生額は約1,050億円で、年々増加している傾向である。この巨額の資金を国が定めた管理機構に移管し、公益活動の財源として活用される。
  • 休眠預金の活用によって公益事業の資金源の充実につながる期待が高まる一方、活用にあたって、国民の理解、資金調達における透明性の確保や第三者による監督機能の強化が必要である。

休眠預金活用法の成立

  • 2016年12月9日に「民間公益活動を促進するための休眠預金等に係る資金の活用に関する法律」(以下、「休眠預金活用法」)が公布され、公布後1年半以内に全面施行される。
  • これまでは公益活動(ここでは主に民間による社会福祉の向上を目指す社会的活動を指す)の多くが助成金や補助金に依存し、活動の資金確保に努めている状況である。「休眠預金活用法」の成立で、休眠預金がNGOやNPO法人など公益活動の財源として活用される予定である。
  • 一般的に、休眠預金とは、預金保険の対象となる金融機関の預金口座において、一定年数以上資金移動のない預金を指す。「休眠預金活用法」では、預金等であって、当該預金等に係る最終異動日等から十年を経過したものと定義している。
  • 当然、「休眠預金活用法」が施行されても、従来と同じように、預金者からの請求があれば、何年が経過しても、休眠預金の払戻請求に対応することと定められている。
  • 金融庁の調査によれば、休眠預金の発生規模は2008年~2010年度の平均額が約874億円/年で、2010年~2013年度の平均額が約1,050億円/年となり、年々増加している傾向である。
  • 休眠預金の活用において、海外では、韓国が2008年、英国が2010年に休眠口座に関する基金を設立し、医療、教育、社会起業などの分野へのサポートを積極的に推進している。両国とも管理機関を設けて、休眠預金を管理する方法をとっている。
  • 日本の場合、「休眠預金活用法」によると、韓国と英国と同様に、国が管理する「預金保険機構」に休眠預金を移し、「指定活用団体」による「資金分配団体」の選定と貸付を行うことになる

影響と課題

  • 近年、国内外で革新的、持続的な解決法で社会課題に取り組んで、新たな社会価値の創出を目指すソーシャルイノベーションの機運が高まりつつあり、社会的起業家や社会的企業が増えている。社会的起業家や社会的企業は、従来のNGO・NPOの社会貢献に加え、今後の公益活動の重要な担い手として期待されているが、起業段階や事業拡大における資金源の確保が常に課題になっている。
  • 「休眠預金活用法」によって、休眠預金が公益活動の資金として活用される意義は大きい。公益活動の資金調達源は図表に示すとおりだが、休眠預金が新たに加わることによって困難な状況が改善でき、資金源の拡充につながるとの期待が高まっている。

  • 図表:公益活動(NGO・NPO、社会的企業)の資金源

    図表:公益活動(NGO・NPO、社会的企業)の資金源

    (出所)山本隆編著『社会的企業論―もうひとつの経済』(法律文化社,2014)をもとに作成

  • 一方、休眠預金といっても、国民の財産であり、休眠預金の活用は国民の財産を扱うことになる。口座の預金が勝手に使われるという懸念を払拭するため、国民にその活用の重要性を訴え、その活用に関する国民からの理解を得る必要がある。
  • 休眠預金の活用で、公益活動の資金源がより充実していくと予想されるが、「指定活用団体」がどのように「資金分配団体」を選び、貸付を行うかという団体選定・資金分配のプロセスの透明性を保つことが求められる。また、貸付を受けた公益事業は社会福祉の増進に資したか、貸付効果を検証するフェーズも重要である。
  • ここ数年、ソーシャルインパクト、すなわち社会的事業の成果を評価する方法の整備に対するニーズが高くなってきているが、活動分野の違いや規模など、事業の多様性が高いために定量評価が難しく、標準化がなかなか進んでいない状況でもある。「休眠預金活用法」の成立が、社会的事業の評価の整備を推し進める新たな一歩となるのか注目したい。