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再生可能エネルギー事業の地域への波及効果

発行日 2016年9月15日
上級研究員 渡邉 優子

【要旨】

  • 2017年4月から「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」が改正され、これまで導入が進まなかったリードタイムが長い再生可能エネルギーが促進される。自家消費や熱供給事業等、再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)対象外事業への補助・助成金も拡がっている。
  • これらから、多様な再生可能エネルギー事業の推進というエネルギーミックスの取組みが本格化する。再生可能エネルギーは、種別により地域での利活用ポイントが異なる。地域(産業)とのつながりの濃淡や技術動向等から各事業の利活用ポイントを考えると、従来の大規模集中型事業より、小規模・分散型事業の方が、地域の未来につながるだろう。
  • 再生可能エネルギー事業の効果を地域で最大限発揮させるためには、地域資源への深い認識と、地域における様々なプレイヤーが主体となって事業検討をしていくことが重要である。

1. 多様な再生可能エネルギー事業の推進

  • 2016年5月、「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」の改正(以後、改正FIT法)が参院本会議で可決・成立し、2017年4月から施行されることとなった。改正FIT法は、再生可能エネルギー(以後、再エネ)賦課金の国民負担を抑制しつつ、バランスよく多様な再エネを最大限導入することを目指している。2015年7月、経済産業省の「長期エネルギー需給見通し」に示されたエネルギーミックスへの取組みが始まったのである。
  • 改正FIT法の主な見直し点は2つある。PV(特にメガソーラー)偏重の是正と開発期間等リードタイムが長い再エネ事業の推進である。後者の対象は、地熱、風力、中小水力、バイオマスである。これら再エネの事業予見性の向上と規制緩和の推進を行うことで、事業者の参入を促進していこうとしている。
  • 近年、FIT対象外の事業への補助・助成金は拡大傾向にある。FITを利用しない自家消費の発電事業や元々FIT対象外である熱供給事業(注釈)を対象にした補助・助成金が目立ってきた。その多くが、設備導入や事業可能性検証事業に対する補助・助成であるため、事業継続においては、自力で対応していくしかないのが現状であるが、見方を変えれば、自律的な事業展開を図ることもできる。

2. 再生可能エネルギーの種別に応じた地域での利活用ポイント

  • エネルギーミックスの推進に伴い、今後、多種多様な再エネ事業の推進が期待される。しかし、再エネは種別により異なる利活用ポイントがあるため、再エネの組合せの検討や取捨選択することが重要となってくる。
  • PV(メガソーラー)、風力、地熱のエネルギー源は、立地・天候に依存し、発電事業が主流である。また、事業設計・運営が比較的容易である。一方で、大規模な資本が必要なため、資本力や資金調達力を持つ大企業の寡占状態となっている。さらに、傘下企業に設計・調達・建設や管理・運営などを任せており、実質大企業1社で完結してしまうため、地域との接点が薄くなりがちである。
  • バイオマスや熱供給事業は、農蓄林業との関連性が高く、地域と密接に関わる事業展開が可能である。ただし、原料・燃料調達から地域の農蓄林業との連携まで川上から川下まで一体となって考えることが必須であり、地域におけるサプライチェーン構築が重要となる。そのためには、原料・燃料への理解及び調達方法の検討や、需要(特に熱)の的確な把握とそれに見合った設備設計・導入、地域産業創生など、様々な専門的な知識が必要である。
  • 中小水力は、古くから国内で技術が確立し、近年は従属発電であれば許可制から登録制になることで手続きが簡略化するなど規制緩和が進み、事業環境は整備されている。しかし、基本的な手続きは依然として非常に煩雑であるとともに、地域、地点でかなり大きい経済的な差が出るという問題もある。
  • 再エネ種別に応じた利活用ポイントは次のとおりである。PV、風力、地熱の場合、地域還元の検討、あるいは地域が核となった事業主体の検討である。バイオマスや熱供給事業は、専門家による事業設計とサプライチェーンマネジメントである。中小水力は、開発しやすい自治体管理のものから進めるなど、地域の実情に合わせた開発である。
  • 地域における再エネ事業は、開発の容易性や安定した高収益性などから、メガソーラー等大規模集中型事業が進んだが、開発されつくしたこともあり、転換期に来ている。今後は、地域主導の小規模・分散型事業が主流となっていくだろう。地域の身の丈に合った事業規模にするとともに、将来に拡がりある自律的な事業展開を考えていくことが重要となる。

  • 図. 大規模集中型事業から地域主導の小規模・分散型事業への転換

    図 大規模集中型事業から地域主導の小規模・分散型事業への転換

    (出所:富士通総研作成)

3. 地域で再生可能エネルギー事業の効果を最大限活かすためには

  • 再エネ事業はFITの功罪相半ばである。特に地域視点から見ると、再エネ導入は飛躍的に伸びたが、事業の経済性にのみ焦点があたっている現実がある。結果、地域が入り込む余地の少なさや限定的な地域への波及効果から、貴重な地域資源が大企業群に吸い取られていく構図が浮かび上がる。
  • 今後の再エネ事業は、貴重な地域資源を活かした地域のためになる事業展開が求められる。各特性や利活用ポイント、賦存量等地域資源への十分な理解と、地域民間企業、NPO等団体、地域住民、行政、地域金融機関等地域主体による資源活用事業の展開により、地域再生の狼煙をあげることが期待される。

  • ■再エネ事業の現状

    再エネ事業の現状

    ■再エネ事業が今後目指すべき方向性

    再エネ事業が今後目指すべき方向性

    (出所:富士通総研作成)


注釈

「熱供給事業」:冷水や温水等を一ヶ所でまとめて製造し、熱導管を通じて、複数の建物に熱を供給する事業。再エネを活用した熱供給事業としては、バイオマスや地中熱が知られているが、その他、雪氷熱、海水や河川水、下水等水温と外気温との温度差利用、太陽熱等があり、地産地消型再エネとして、近年注目されている。