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社会課題の解決に関心が高まるアジアの動向

―AVPN年次会議に参加して―

発行日 2016年6月16日
上級研究員 趙 瑋琳

【要旨】

  • 2016年5月23日から25日まで香港理工大学でAVPN(アジア・ベンチャー・フィランソロフィ・ネットワーク)年次会議が開催され、39カ国から約620人が参加した。会議はソーシャルイノベーションを中心に様々な議論が行われた。
  • AVPNは設立してからわずか5年でメンバーや影響力が拡大し、急成長している。その背景には社会課題の解決に対する関心の高まりがある。
  • AVPNの活動から、アジアにおけるソーシャルイノベーションの動向を考察・把握し、アジア諸国の経済社会の変化を捉えることができる。また、ソーシャルイノベーションの成功には社会起業家や社会的企業を含め、多種多様なステークホルダーによる協働が必要であることも分かる。

アジアで社会課題の解決に関心が高まっている

  • 2016年5月23日から25日まで香港理工大学でAVPN年次会議が開催され、39カ国から約620人が参加した。会議の内容はソーシャルイノベーション、社会投資、社会的企業の成長、国別の発展状況、政府政策のあり方など多岐にわたり、様々な議論が行われた。
  • AVPN(Asian Venture Philanthropy Network:アジア・ベンチャー・フィランソロフィ・ネットワーク)は、2011年12月に設立され、シンガポールを拠点に、より高いソーシャルインパクトを目指して活動するコミュニティーである。
  • AVPNのメンバー数は2012年の105から2015年の290までに拡大し、急成長している。メンバーはNGO・NPO、社会的企業、ベンチャーフィランソロフィ、基金、ネットワーク組織、政府関係部門や研究機関などであり、多様化している。
  • 北アジア(日本、中国、韓国、香港、台湾 (注釈) )からのメンバーが最も多く、全体の34%を占めている。東南アジアは約32%で続いている(図表1)。国・地域別のメンバー数から見ると、シンガポール、香港、インド、中国、米国が上位5位で、全体の約66%を占める。

  • 図表1. AVPNメンバーの地域別構成図

    図表1. AVPNメンバーの地域別構成図

    (出所)AVPN

  • AVPNの急成長の背景には、社会課題の解決に対する関心の高まりがある。アジアでは、環境、少子高齢化、格差、貧困など共通の社会課題が多く、年々深刻化している。

アジア諸国のアクション状況

  • アジアでは、社会課題の解決を目指したソーシャルイノベーションが注目されており、各国で様々なアクションが始まっている。
  • 日本では、2011年の東日本大震災以降、多くの社会的企業が復興に参加しており、社会的企業に関する認証制度や支援などの新たな政策の策定を促している。中国では、団体活動がまだ危惧されているが、公共リソースの不足と社会貢献意識の萌芽を背景に、社会起業家の育成が盛んに行われており、持続可能な社会へ転換しようとしている。韓国でも、政府が2007年に「社会企業促進行動」を打ち出して、政策支援が積極的に行われている。
  • シンガポールは、AVPNのような新たな組織形態の活動への支援を契機として、アジアにおけるソーシャルイノベーションを先導しようとしている。タイ、インドネシア、フィリピンなど東南アジアの国々では、海外からの開発支援組織以外に、現地生まれの社会的企業が雨後の筍のように現れている。

誰が担い手になるか

  • 近年、社会課題の増加とともに、経済的価値を超えた新しい社会的価値の創造が求められている。革新的な方法で社会課題を解決し、社会的価値を創出するソーシャルイノベーションの重要性が認識されるようになっている。ソーシャルイノベーションを事業として始める個人が社会起業家と呼ばれ、彼らが設立した企業が社会的企業と呼ばれている。
  • 社会起業家と社会的企業はソーシャルイノベーションの重要な担い手として注目を集めているが、進取の気性を持つ社会起業家を育成させ、社会的企業を成長させる仕組みづくりが極めて重要である。
  • 同時に、ソーシャルイノベーションにおける新しいうねりとしては、行政、既存の営利企業、市民組織等多様なステークホルダー間のリソース交換や共有と新しい結合が新たな可能性を生み出していると考えられており、ソーシャルイノベーションを成功させるには、一つのプレイヤーだけでなく、多様なステークホルダーによる協働が不可欠である。
  • 社会課題の解決を新たなビジネス機会として捉える企業が増えている中、企業が重要なプレイヤーとして果たすべき役割が問われている。企業は経営環境の変化を踏まえ、多様なステークホルダーと協働し、社会課題の解決を通じ、競争力を高めることが期待されている。

(参考)
ソーシャルイノベーションに関する先行研究や営利企業の役割に関する議論に関しては、研究レポートNo. 427(「ソーシャルイノベーションの仕組みづくりと企業の役割への模索―先行文献・資料のレビューを中心に」)を参照されたい。


注釈

AVPNの地理的分類では、日本や香港、台湾なども北アジアに含まれる。