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持続可能な生産と供給確保に向けた認証制度利用

– パーム油生産の例 –

発行日 2016年6月16日
上級研究員 加藤 望

【要旨】

  • 国連の持続可能な開発目標(SDGs)の決定やパリ協定採択により、企業はこれまで以上に持続可能な生産を行うことを求められている。それを促す仕組みの一つとして、持続可能性に関する基準に従った製品に認証を与える認証制度があり、市場でも存在感を現し始めている。
  • 日本が全量を輸入しているパーム油にもRSPOという認証制度があるが、認証油の使用を促す政策や需要が存在しないため、現状では流通量は非常に少ない。
  • 将来的には、持続可能でない生産を制限する国際的な枠組の構築によって従来の生産ができなくなる可能性もある。RSPOの利用は、将来も制限される恐れのない生産農園や調達ルートを今のうちから確保する、サプライチェーンマネジメントの一つともいえる。
  • RSPOの基準と運用面での制度改善は、従来の生産方式が制限されることへの懸念とともに、世界の認証油への需要を拡大すると考えられる。その際に認証油の供給を確保できるよう、パーム油を使用する日本の業界全体で認証制度への参加を検討しておく必要がある。

持続可能な生産への認証

  • 国際的な重要課題に関して、2015年に二つの大きな動きがあった。国連の持続可能な開発目標(SDGs)の決定と、気候変動対策の新たな国際枠組であるパリ協定の採択である。
  • 2016年は、掲げられた目標の達成に向けて、政府・企業・市民が最初の一歩を踏み出すべき重要な年といえる。中でも企業は、持続可能性にも温室効果ガス排出にも大きく関わる生産・消費の中心となっており、こうした国際的な動きの影響を反映した企業活動が求められることになる。
  • 持続可能な生産・消費の拡大への取組は、これまでも行われてきた。認証制度はその一つで、持続可能性に配慮した製品を求める消費者やNGOと、それに応えようとする企業が中心となってできたものである。認証制度の下では、対象となる製品の生産・加工・流通における原則や基準が策定され、それらに従った製品に認証が与えられる。
  • 木材の森林管理協議会(FSC)や水産物の海洋管理協議会(MSC)、持続可能なパーム油生産のための円卓会議(RSPO)などが代表的な国際認証として挙げられる。それぞれの総生産量に占めるシェアを下図に示す。いずれもまだ1~2割程度であるが、各市場において存在感を発揮し始めている。

  • 図 総生産量に占める認証を受けた生産物の割合

    図 総生産量に占める認証を受けた生産物の割合

    出所:FSC、MSC、RSPO各ウェブサイトより富士通総研作成

認証製品の流通の例:RSPO認証パーム油

  • これらの認証制度は、生産・流通過程が見えにくい輸入品については特に意義が大きい。例えば、日本が全てを輸入に頼るパーム油は9割近くがインドネシアとマレーシアで生産されているが、生産により熱帯雨林の減少や土壌汚染、労働者の不当な扱いなどの問題が起きている。パーム油の認証制度RSPOは、原料であるアブラヤシの新規農園開発を原生林でしないことや、労働者の交渉の権利を確保することなどを求めている。
  • RSPOによる認証を受けたパーム油の日本での流通量は非常に少ない。その背景として、認証油の輸入を推進する政策が無いこと、認証油への需要が低いこと、コスト競争の激しさなどがある。
  • 欧州では、認証油であることをパーム油の輸出条件としている国もあり、認証油を利用した製品は広く流通している。当然このような政策の影響は大きいが、消費者の関心の高さも企業が認証油を調達したり使用したりする大きなインセンティブとなっている。

ビジネス戦略としての認証制度の利用

  • 需要が低く政策もない日本で、認証油を調達する意義はあるのだろうか。前述の通り、SDGsやパリ協定によって、企業はより持続可能な生産を行うことを求められる。また、持続可能でない企業活動に対しては、それを制限する枠組が構築され、従来の生産ができなくなる可能性もある。
  • パーム油生産に関しても、気候変動への影響を抑えるため、CO2吸収源である森林やCO2を大量に排出する泥炭地でのアブラヤシ農園開発が禁止または制限されることが例として考えられる。
  • このような国際枠組の構築に先んじて、より持続可能な生産、調達、流通を行っている企業が、RSPOに参加している。つまり、将来も制限される恐れのない生産農園や調達ルートを今のうちから確保する、サプライチェーンマネジメントの一つともいえる。
  • 日本でも、生産者から直接パーム油を調達する大手商社は、認証を取得して認証油を供給できるようにしている。しかし、製造業や小売業においては認証油を利用した製品を製造・販売する企業が少ないため、現状では商社が調達量を増やす必要に迫られることはない。

需要拡大に備えた認証制度参加の必要性

  • RSPOについては、問題点も指摘されている。森林の種類や状況によっては新規開発を制限できないなど基準に関する問題と、基準を満たしていない農園や企業にも認証が与えられているなど運用に関する問題の両方がある。これに対し、RSPOは基準の厳格化や運用の改善を試みている。
  • RSPO Nextは、現行の基準よりも先進的な取組に対応したボランタリーな仕組みである。RSPO認証に求められることを上回る取組を行う企業が、差別化のために利用することができる。詳細な指標等については作成中であるが、開発の制限対象となる土地利用の拡大などの厳格化がされる見込みである。
  • 2013年からは、持続可能性に関するイニシアチブの品質保証を担うAssessment Service International (ASI)によるRSPO認証機関の認定が本格的に行われるようになった。第三者機関であるASIによる認証機関の評価は、認証機関の公平性や能力を証明し、消費者や供給者、調達者による制度への信頼を確保することにつながる。
  • RSPOは、持続可能なパーム油生産に関する実効性と国際的な認証制度としての信頼性を高めつつある。このことは、従来の生産方式の制限に対する懸念とともに、世界の認証油への需要を拡大すると考えられる。
  • そうなった場合に、日本企業が認証油の調達をすぐに増やすのは難しい。認証油を調達・供給するには、自社だけでなくサプライチェーンに関わる全ての事業者が認証を取得していなければならず、認証を持つ農園との新たな契約が必要となるからだ。
  • 安定供給の確保という利点をRSPOから引き出すためには、パーム油を使用する日本の業界全体で、今のうちから認証制度への参加を検討しておく必要がある。

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SDGs時代のビジネスリスクと機会

  • 開催日時: 2016年7月14日(木曜日) 13時30分~17時
  • 会場: ベルサール汐留2階Bホール (中央区銀座8-21-1 住友不動産汐留浜離宮ビル)
  • 共催: WBCSD、富士通、富士通総研