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国連SDGsの企業戦略への活用

発行日 2016年3月31日
上席主任研究員 生田 孝史

【要旨】

  • 2030年までに国際社会が達成すべき目標としてSDGs(国連持続可能な開発目標)が2016年1月からスタートした。これまでの国際目標MDGs(国連ミレニアム開発目標)と比べ、17目標169ターゲットに対象範囲が拡大し、途上国だけでなく日本を含む先進国にも適用されるものとなり、国際社会の新たな「共通言語」となる。
  • 企業によるSDGsへの貢献に対する期待は大きく、ビジネス機会につながる一方で、ネガティブな影響を与えればリスク要因になる。SDGsの視点は企業報告にも求められるようになり、グローバル市場でのステークホルダーとのコミュニケーションにも有効である。
  • SDGsを「共通言語」として認識したうえで、SDGコンパスなどのツール活用も検討しながら、自社の事業領域との関連を把握し、リスク管理強化とビジネス機会の模索が、企業に望まれる。日本企業の競争力強化には産業界、政府の支援も必要である。

MDGsからSDGsへ

  • 2016年1月からSDGs(国連持続可能な開発目標)がスタートした。SDGsとは、経済成長、社会的包摂、環境保護を核とした持続可能な開発を目的に、2030年までに国際社会が達成すべき目標として、昨年9月の国連総会で採択されたものである。
  • SDGsは、2000年に採択されて2015を目標年としたMDGs(国連ミレニアム開発目標)を引き継ぐものである。しかし、SDGsは、単にMDGsの未達成事項の完了を目指すものではなく、対象範囲や構造などに大きな変化がみられる。
  • MDGsとSDGsの最大の違いは、その対象範囲である。MDGsが8目標21ターゲットであったのに対して、SDGsでは17目標169ターゲットに大幅に増加した。MDGsの目標は、貧困に起因する社会課題の解決を中心としたものだったが、SDGsでは経済成長や社会インフラ、都市問題、人権、気候変動など、多様かつ広範な目標が設定された。
  • MDGsが開発途上国を対象としたのに対して、SDGsは先進国を含めたすべての国に適用される目標とされている。MDGsでは開発途上国のみが進捗状況を報告していたが、SDGsでは先進国にも報告が求められる。日本にとってMDGsは開発支援の際に考慮するような「ヒトゴト」だったが、SDGsは「ジブンゴト」になるのである。
  • SDGsには、MDGs同様、罰則規定はない。しかし、2030年までの持続可能な社会構築のために考慮すべき事柄が、国際社会の「共通言語」として設定された意味は大きい。今後、国内外の社会課題解決に向けた取り組みは、SDGsに照らし合わせて語られ、評価されることになろう。

  • 図表 MDGsとSDGsの比較

    図表 MDGsとSDGsの比較

    注意:カッコ内の数値はターゲット数
        矢印(→)はMDGsの目標とSDGsの目標の関連性を示したもの
        SDGsの中で網掛けされた目標は、MDGsに対応するものがない目標

    (出所:国連資料を基に富士通総研作成)

SDGsを考慮した企業経営が不可欠に

  • SDGsの策定プロセスには、各国政府、国際機関、学術機関、NGOなどに加えて、産業界も参画している。人材・技術・資金力を有する企業が、コアビジネスを通じて、SDGs達成に貢献することへの期待は大きい。
  • SDGsの視点はビジネス機会につながる。SDGsの目標・ターゲットを、国際社会が認識した2030年までに対策が必要な課題であると考えれば、それらの課題解決に資する製品・サービスには、グローバル市場での機会拡大や資本アクセスの緩和が期待できる。SDGsの目標・ターゲット数の多さは、逆にビジネス機会の豊富さとなる。
  • 一方、企業活動がSDGs達成を阻害する可能性も十分ある。リスクマネジメントの観点からもSDGsを考慮した事業活動が不可欠である。バリューチェーンを含めて自社が関与する事業活動について、SDGsの視点からネガティブな影響を及ぼしかねないリスク要因を洗い出すことで、事前対応によるリスク低減を図ることができよう。
  • 環境・社会・ガバナンスという非財務情報を活用したESG投資が普及していることを考慮すれば、投資家やNPOなどが、SDGsの視点から企業評価を行う傾向は強まるだろう。昨今、CSR報告書と年次報告書との「統合報告書」を作成する動きが広がっているが、このような統合報告にもSDGsの視点は欠かせないだろう。
  • 今のところ、事業活動に伴うSDGsへの影響・貢献に関する報告が企業に求められているわけではない。しかし、グローバル市場におけるステークホルダーとのコミュニケーションの円滑化を図るためにも、SDGsの視点から事業活動を説明することを検討してみるべきであろう。

企業戦略への活用が問われる

  • 企業が留意すべきことは、SDGsが日本を含むグローバル市場において今後15年間の「共通言語」になるということである。日本企業にとってもSDGsは「ヒトゴト」ではなく、いかに企業戦略に活用するかを検討する必要がある。
  • SDGsを企業戦略に活用するためのツールも開発されている。例えばSDGコンパスは、国連グローバル・コンパクトとGRI(グローバル・レポーティング・イニシアチブ)、WBCSD(持続可能な開発のための世界経済人会議)が共同開発したものである。
  • SDGコンパスは、5つのステップ((1)SDGsの理解、(2)優先課題の決定、(3)目標の設定、(4)経営への統合、(5)報告とコミュニケーション)から構成される。ウェブサイト上では、多様な事業指標やビジネスツールなどの情報が掲載され、専門家の助言を得ながら、SDGsを考慮した事業戦略の策定の検討を促すものとして設計されている。
  • SDGコンパスは、大手グローバル企業を主対象としたものだが、中小企業でも変更を施しながら利用可能である。また、企業レベルでの活用が想定されているが、製品、拠点、部門、地域の各レベルにも適用可能である。SDGsと自社活動の関連付けを検討する際など、SDGコンパスが参照される機会は増えるであろう。
  • まずは、SDGsを「共通言語」として認識したうえで、自社の事業領域との関連を把握し、リスク管理を図りながら、ビジネス機会を模索することが望まれる。多くの企業にとって、169のSDGsのターゲット全てが関連するわけではない。自社事業の把握だけでなく、主要顧客・市場における社会課題の洗い出しにもSDGsの活用が検討できよう。
  • 持続可能な社会の構築への貢献と持続可能な経営の両立のために、SDGsをうまく活用できるかどうかが、今後の企業競争力を左右するであろう。2030年の国際社会において日本企業が存在感を示すためには、日本企業それぞれの取り組みに加えて、日本企業の強みを生かすための産業界全体及び政府の支援もまた求められよう。