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IoTとAIの進展から考える産業革命

発行日 2016年2月25日
主任研究員 湯川 抗

【要旨】

  • 今後産業界全体、あるいは国の制度設計にも大きな影響を与えることになる二つの技術変化が始まっている。ひとつはIoTであり、もうひとつはAIである。

IoTと産業革命

  • ICTの発展がモノやその製造工程にまで環境変化を促してきた結果、近年新たな産業革命に対する期待が膨らんでいる。例えば、GEは2012年にインダストリアル・インターネットを標榜し、これを産業革命、インターネット革命に続く、新たな革命と位置付けている。また、ドイツの産業界は政府を巻き込んで2011年にインダストリー4.0を提唱しているが、これは蒸気機関、電力、生産工場の自動化に次ぐ第4次産業革命という意味を包含している。
  • こうした産業革命を彷彿させるコンセプトが現実味を帯び始めているのは、IoTに関する技術進歩とその市場に関する議論が進展しつつあるためだろう。インターネットに様々なモノが接続可能になることは、リアルな世界をバーチャルな世界からコントロールすることが可能になることを意味し、結果的にこれまでとは異なる大きな変革がおこる。
  • IoTは今後大きな市場を創出し、その経済効果も絶大だとされる。調査会社のIDCは、IoT市場が今後毎年16.9%程度成長し、2020年には2014年の約2.5倍に拡大すると予測している。また、マッキンゼーは、IoTの経済効果は2025年までに6兆2000億ドル程度に達し、クラウドコンピューティングの経済効果よりも大きいと試算する。
  • IoTを製造現場に活用したのが、インダストリー4.0だと考えられる。製造業の輸出主導によって経済発展を成し遂げていたドイツも、アジアの新興国や東欧諸国に製造業が移転する圧力にさらされると共に、熟練技能工の高齢化の問題を抱えるようになっている。現在保有する技術を機械に教え、インターネットで製造現場と顧客、マネジメントを繋ぐことで、マス・カスタマイゼーション(個別大量生産)を可能にし、更には在庫や環境負荷も軽減する。確かに、サプライチェーンマネジメントなど、これまでも製造や在庫を最適化しようとする試みは行われてきたが、適用範囲が一企業をはるかに超えた生産システムを構想している点が産業革命と捉えられる所以だろう。

変化の大きさと日本の今後

  • IoTの普及によって、革新的な取組みを行おうとしているのは、ドイツだけではない。アメリカでは、GEを中心にインダスリアル・インターネット・コンソーシアムがその存在感を増している。インダストリー4.0が製造業を変革しようとしているのに対し、インダスリアル・インターネット・コンソーシアムでは、流通業や小売業などを含む全ての産業を変革しようとする試みを始めていると解釈していいだろう。
  • ドイツやアメリカが狙っているのはスマート化した工場や情報システム輸出、あるいは中小企業のスマート化と考えられるが、こうした活動は将来の標準化を見据えてのものであるため、日本も対抗策が必要であろう。
  • トヨタのジャスト・イン・タイム生産方式をはじめとして、我が国製造業は、新たな産業革命として語られている製造方式をかねてから行っており、企業単位で製造業に蓄積されてきたノウハウは欧米に勝る点も多いだろう。ただ、現在欧米で起こりつつあるのは企業を超えた、取組みである。競争しない領域を決め、それぞれの企業がもつ優位性を活かすための産官学が一体となった取組みが求められる。

AIと産業革命

  • 過去の産業革命は、産業だけでなく、人間の雇用、あるいは生き方にも大きな影響を与えてきた。エリック・ブリニョルフソンとアンドリュー・マカフィーの共著『ザ・セカンド・マシン・エイジ』では、18世紀半ばに起こった産業革命の時代を「第1機械世代(ファースト・マシン・エイジ)」とした上で、コンピュータをはじめとするデジタル化された機械が起こしつつある現在の変化の時代を「第2機械世代(セカンド・マシン・エイジ)」と位置づけている。そして、ファースト・マシン・エイジで蒸気機関が肉体労働に取って代わったように、現在は機械が知的労働を代替しようとしているとする。
  • 新たな技術が人間に取って代わるという議論は、古くからなされてきた。しかし、歴史的に見れば、人間は新たなテクノロジーが生まれるたびに、新たな雇用も生み出してきている。しかし、人工知能は人間そのものを代替するテクノロジーである。
  • モノがインターネットと繋がり、知性を帯びるとすれば、人間は機械と競争しなければならない。当面は既に我々が行っているように、賢くなった機械とどのように分業するのかが重要になるだろうが、2045年には人間を超える人工知能が完成するという研究成果もある。テクノロジーの発展は、これまで個人の力を増幅させてきた。しかし、人工知能の発展は、テクノロジーが人間そのものにとって替わろうとする危機感を抱かせる。
  • 過去の産業革命は50年以上にわたって起こったとされ、この間斬新的に進化した。現在起こっていることは、ほんの始まりに過ぎないだろう。もちろん、インターネットが多くのものを短期間で変化させてきたことを考える必要はあるものの、国家や企業は現在の変化に戦略的に関わる必要があるだろう。また、個人も仕事のキャリアや生き方を再考しなければならない時代になりつつある。今後、クリエイティビティとはなにか、やりたいこととは何かといったことと真剣に向き合う必要があるのだろう。