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イノベーションを発展のコンセプトとする中国のゆくえ

発行日 2016年2月17日
上級研究員 趙 瑋琳

【要旨】

  • 2015年10月に中国政府は「第13次5ヵ年計画」を公表し、「イノベーションと発展」をコンセプトにした2020年までの発展方針を打ち出した。
  • 中国の国内総生産に占める研究開発費用の割合は1991年の0.7%から2014年の2.1%まで増加しており、世界特許登録における出願件数も学術論文の数も急増したが、まだイノベーション国家になっていない。
  • 中国がイノベーション国家を目指すためには、人材育成や適当な資源配分による研究水準の向上、インセンティブの付与による研究成果の応用などを追求し、イノベーションを起こしやすいメカニズムや環境づくりに注力しなければならない。
  • 日系企業は、中国のイノベーション国家の実現の取り組みをチャンスとして捉え、中国のイノベーションリソースを十分に活かすべきであり、中国での産学連携を強化することで、現地市場にもっともマッチする製品やサービスの提供が期待できる。

イノベーションによる発展を強化する中国

  • 中国経済が減速しているなか、従来のような労働・資本大量投入による経済発展のモデルは限界だと認識されている。今後、高い生産性が期待される新たな企業・産業の発展に注力せざるをえない。
  • 2015年10月に中国政府は「第13次5ヵ年計画(2016年-2020年)」を公表し、五つの発展方針、すなわち、「イノベーションによる発展」、「協調的発展」、「グリーンな発展」、「開放的発展」、「分かち合う発展」を打ち出した。
  • とりわけ、2020年に2010年と比べて国内総生産(GDP)を倍増する目標を達成させるために、「イノベーションによる発展」をコンセプトにし、新たな成長のエンジンを育成しようとしている。
  • 一国のイノベーション能力を評価する一つの基本的な指標として、GDPに占める研究開発(R&D)費用の割合があげられる。中国では、図表1が示しているように、1991年からR&D費用が増え続けており、GDPに占めるR&D費用の割合も1991年の0.7%から2014年の2.1%まで確実に増加した。

  • 図表1. 中国における研究開発費用の増加(1991-2014)

    図表1. 中国における研究開発費用の増加 (1991-2014)

    (資料) 中国統計年鑑をもとに作成

  • 世界主要国のGDPに占めるR&D費用の割合と比べると、2013年のOECD全体の平均値2.36%に対して、中国は2.01%であり、世界の主要国と遜色のない数値になっている(図表2)。

  • 図表2. 世界主要国のGDPに占める研究開発費用の割合(2013)

    図表2. 世界主要国のGDPに占める研究開発費用の割合 (2013)

    (資料) Main Science and Technology Indicator (2015), OECD

  • 一方、2014年の世界特許登録における中国からの出願件数は92万件で、世界一になっており、学術論文の数もこの10年間に100万編を超え、2014年に世界2位を果たしたが、論文の被引用数や出願の技術応用の不足および中国発ブランドの少なさを考えると、中国はイノベーション国家と言い切れない。

2020年にイノベーション国家の実現を目指す

  • 2006年に行われた全国科学技術大会では、2020年にイノベーション国家の建設という目標を掲げられた。第13次5ヵ年計画のコンセプトである「イノベーションによる発展」の遂行で、この目標を実現させようとしている。
  • 中国が国を挙げている体制で、GDPに占めるR&D費用の割合、論文や特許の数などのような数値目標を容易に実現できるかもしれないが、これから、数値目標の実現より研究のクオリティを追求し、真のイノベーション国家を目指さないといけない。
  • そのために、中国がイノベーションを起こしやすいメカニズムや環境づくりに注力しないといけない。具体的な政策としては、人材育成や適当な資源配分による研究水準の向上、インセンティブの付与による研究成果の応用などがあげられる。
  • 同時に、企業側も、短期的な利益を重視する近視眼的な考えを捨て、積極的にR&Dに費用を投入し、消費者のニーズを意識したものづくりに専念する忍耐精神の育成も必要になってくる。

中国のイノベーションリソースを活用する

  • 2015年に日本経済新聞社が行った企業のR&D活動に関する調査では、日系企業が海外で研究拠点や人材の配置を進めており、東南アジアなどの主要大学と産学連携に取り組む企業も増えている。
  • 中国はイノベーション国家の実現に向けて、イノベーションリソースの強化が一層強まり、中国は世界の工場から世界の市場、さらに世界のR&D拠点になる可能性も高くなっている。
  • 日系企業は、中国のイノベーション能力の向上をチャンスとして捉え、中国のイノベーションリソースを十分に活かすことを検討すべきである。中国での産学連携を強化・加速させることによって、現地市場にもっともマッチする製品やサービスを作り出し、事業機会を見出すことが期待できる。