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気候変動対策支援におけるビジネスチャンス―COP21の結果を受けて―

発行日 2016年1月15日
上級研究員 加藤 望

【要旨】

  • 2015年11月末からパリで開催された国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の締約国会議(COP21)での交渉の結果、2020年以降の新たな国際枠組みである「パリ協定」が合意され、先進国に加えて新興国および途上国も温室効果ガス排出削減目標を持ち、その達成に取り組むこととなった。
  • 途上国における気候変動対策への資金支援として、2020年以降官民あわせて年間1千億ドル以上が先進国から拠出されることも決定した。対策の手段となりうる技術や製品を持つ企業にとっては、大きなビジネスチャンスが創出されることになる。
  • このチャンスを日本が活かすためには、途上国や国際社会から評価される支援を2020年までに見極めておくことが必要となる。日本が独自に構築した二国間クレジット制度(JCM)はその機会となりうる。企業は、現行制度を利用して経験を積みながら、途上国側の要望や国際的な流れを注視して、国際社会に高く評価される対策によるビジネス展開を目指すべきである。

気候変動を巡る国際交渉と「パリ協定」

  • 先進国のみが排出削減の義務を負った京都議定書の第一約束期間が2012年に終了し、2013~2020年の第二約束期間においては、EU等の限られた国々の参加にとどまっている。その他の国々は、2020年までは自主的な目標や行動を掲げて削減に取り組むこととなった一方で、2020年以降の新たな国際枠組みの構築に向けて交渉が続けられてきた。
  • パリで開催されたCOP21は、その新たな枠組みを決定する重要な節目の会議であった。京都議定書の第二約束期間には参加しなかったため、気候変動対策への関心が近年薄れていた日本も、COP21での決定に大きな影響を受けることになる。
  • COP21で合意され、「パリ協定」と名づけられた枠組みには、産業革命前と比べて2度未満の気温上昇に抑える(さらに、1.5度未満での抑制も視野に入れて努力する)ことや、各国は目標を作成・提出し5年毎にその見直しを行うこと、途上国における気候変動対策への資金支援を先進国に義務付けることなどが盛り込まれた。また、今世紀後半までには温室効果ガスの排出と吸収の均衡を目指すという、エネルギーシステムやインフラをはじめとする社会のあり方の大転換が必要となる内容も含まれた。
  • 2020年以降、途上国を含む全ての締約国が排出削減に取り組む新たな枠組みが合意されたことは画期的である。目標達成自体は義務ではないが、目標達成のための国内対策の整備も義務付けられた。
  • しかし、現在各国が約束している目標が全て達成されても、気温上昇を2度未満に抑えることは出来ないことが指摘されている。5年毎の目標見直しによって、今後いかに各国の目標レベルを引き上げ達成させることができるかが、2度未満を実現するために非常に重要になってくる。

途上国への資金支援とその使途

  • 途上国における対策への資金支援については、先進国と途上国との対立軸の一つとなっていたが、2020~2025年の間、先進国による年間1千億ドルを超える拠出が義務付けられた。日本が発表した拠出額1.3兆円は、特に大きいといえる。
  • 巨額な対策資金によって、様々な分野でのビジネスチャンスが創出される。再生可能エネルギーや省エネなどの排出削減手段のほかに、気候変動による被害を防止または軽減する手段も対象となる。異常気象を察知・警戒するシステムや、水資源の効率的な利用システムがその一例である。
  • 途上国については、自主的な資金拠出が奨励されている。歴史的に排出量の多い先進国と、そうでない途上国に差をつけるべき項目の一つとして、多くの途上国は資金拠出に否定的であった。しかし、中国は以前から「南南協力」を掲げてむしろ積極的な姿勢をとっている。インフラ整備などで途上国への進出が著しい同国が、資金支援をさらなるビジネスや国際社会における存在感を発揮する機会としてとらえていると考えられる。

ビジネスチャンスを見据えた現行制度の活用を

  • このように、パリ協定への合意によって世界が大きく動き出そうとする中で、日本が資金支援に伴うビジネスチャンスを活かすためには、途上国からも国際社会からも評価される支援を実施する必要がある。支援をめぐる途上国側の要望に沿うことや、排出削減という究極目標に貢献することがポイントとなるだろう。
  • したがって、日本が2020年までに現行制度の下でそのような支援を見極め、普及させるための知見を蓄積しておくべきである。排出削減対策については、日本が独自に構築したJCMがその場となりうる。JCMは、(1)優れた低炭素技術等の普及を加速し、途上国の持続可能な開発に貢献、(2)排出削減・吸収への日本の貢献を定量的に評価し、日本の削減目標達成に活用、(3)UNFCCCの究極的な目標達成に貢献、の3つの基本概念に基づいた制度である。
  • (2)の日本の削減目標達成に活用という点以外は、資金支援の場合にも通じる概念であり、2020年以降に向けた準備の場に適しているといえる。しかし現状では、制度の先行きが不透明なことやプロジェクトの方法論開発の難しさ等の課題により、企業の参加はあまり進んでいない。
  • COP21で2020年以降の国際枠組みができたことを受け、これらの課題を解決すべく制度整備がさらに進むことが期待される。企業はその動向を注視しつつ、以下の点にも留意しながら2020年以降を見据えてJCMへの参加を検討すべきである。
  • JCMプロジェクトにおける削減手段は日本企業によって提案されている。これまでにクレジット発行を目指して計画されているプロジェクトは、需要サイドの省エネと再生可能エネルギーが中心となっている(図1)。
  • 図1 環境省JCM資金支援事業案件(2013~2015年度) 注)のプロジェクト種類内訳

    16001 図1 環境省JCM資金支援事業案件

    (出所)環境省資料を元に富士通総研作成
    注)JCMプロジェクトとして登録済みの案件も含む。

  • 資金支援に伴うビジネス展開の際には、途上国が整備する国内対策に広く対応できるよう、これ以外にも様々な手段を提供できることが必要となる。また、欧米で進む脱石炭化の動きが途上国にどの程度及ぶかなど、ビジネス拡大に影響する国際的な動きも注視しておくべきである。
  • また、排出削減のMRV(計測、報告、検証)は、目標を持つようになる途上国にとって不可欠である。JCMを通じて、途上国と一緒に日本企業もMRVの経験を積むことで、資金支援において貴重な付加価値を提供できるようになることに加え、MRV に必要な技術やインフラの分野でのさらなるビジネスチャンスにも結びつく可能性がある。
  • 2020年までに残された時間はわずかである。既に運用されている制度を最大限活用し、2020年以降に資金支援が生むビジネスチャンスを確実に掴むための準備に役立てることが望まれる。