GTM-MML4VXJ
Skip to main content

English

Japan

  1. ホーム >
  2. 調査・研究成果 >
  3. ニューズレター >
  4. 2016年 >
  5. インバウンド観光とシェアリング・サービス

インバウンド観光とシェアリング・サービス

発行日 2016年1月15日
研究主幹 浜屋 敏、実践知研究センター 研究員 永田 将克

【要旨】

  • 訪日外国人観光旅行(インバウンド観光)とシェアリング・サービスの動向を把握し、両者の関係を分析することを目的として、アンケート調査を行った。
  • 本調査で対象としたアメリカとオーストラリア在住のスポーツ・アウトドア愛好者の中では、日本の伝統文化や普通の市民の生活を体験できるような旅行に対する希望が多かった。一方で、宿泊や移動にかかるコストを不安視する声も多かった。
  • 宿泊場所や移動手段のシェアリング・サービスを普段から利用している人は回答者の3割から5割を占めていた。日本への旅行でもそのようなサービスを利用したいという回答は一定数あり、コスト削減だけでなく、外国人観光客に日本の生活を経験してもらうという意味でもシェアリング・サービスの活用と普及が期待される。

アンケート調査の概要

  • 訪日外国人観光旅行(インバウンド観光)の促進は、地方創生などを実現する重要な施策の一つとして考えられている。一方で、宿泊場所や移動手段を共有するシェアリング・サービス(注釈1) も脚光を浴びている。そこで、両者の動向を把握し、関係を分析することを目的として、インターネットを利用したアンケート調査を行った。調査の実施時期は、2015年9月である。
  • アジア各国の在住者を対象としたインバウンド観光に関するアンケート調査はすでに行われている(注釈2) ため、今回は、観光目的の海外旅行を経験したことのあるアメリカおよびオーストラリア在住者を対象とした。また、なるべく具体的なイメージを知るために、対象者をスポーツ、アウトドア活動の愛好者に限定し、場所を特定地域(長野県)にしぼった質問も用意した。両国ともサンプル数は400名であり、その性別・年代別の分布は下表のとおりである。
  • 表. 回答者の性・年代別構成

    15017 表:回答者の性・年代別構成

    (出所:筆者作成)

日本への観光旅行

  • 今回の調査対象者に、次にもっとも観光旅行で行ってみたい国・地域を答えてもらったところ、日本という回答は多く、アメリカでは1位(対象者の13.5%)、オーストラリアではカナダ、アメリカに次いで3位(9.5%)となった。
  • 日本に行きたい理由をきくと、「自然がよい(富士山、雪、山岳、花、四季など)」「伝統を体験してみたい(日本旅館、お茶、そば打ち、相撲観戦など)」「文化に関心がある(音楽、着物、アニメ、漫画など)」「食事、日本酒を楽しみたい」「歴史的名所に関心がある」という回答が多かった。オリンピック招致の際に話題になった「おもてなし」を挙げる人は、少数であった(下図参照)。
  • 図. 日本に行きたい理由(複数回答)

    15017 図1. 日本に行きたい理由(複数回答)

    (出所:筆者作成)

長野への観光旅行

  • 日本観光の具体的なイメージを知るため、地域を絞って長野県への観光についても調査した。長野の主な観光地の中から行ってみたいところを答えてもらうと、スノーモンキー(注釈3) 、上高地・日本アルプス、松本城、温泉といった回答が多かった。
  • 長野旅行の際に体験してみたいことをきくと、下図にあるように、自然の鑑賞や歴史的建築物の見学だけでなく、和食や温泉、日本文化などを「体験」したいという回答が多かった。「普通の市民の人々との交流」を期待する回答者も50%以上いる。
  • 図. 長野・信州の観光旅行で体験したいこと(複数回答)

    15017 図2. 長野・信州の観光旅行で体験したいこと(複数回答)

    (出所:筆者作成)

  • 最近は、中国人観光客の「爆買い」が注目を浴びているが、アメリカやオーストラリアからの観光客は、ショッピングだけではなく、地方で日本の伝統や文化、生活を体験することを期待していることがわかる。
  • また、長野を旅行するとすれば何が不安かということをきくと、一番は言葉の問題だったが、それに次いで多かったのは滞在費や国内移動の費用であった。

シェアリング・サービスの利用

  • シェアリング・サービスの代表例として、自宅の部屋を旅行者と共有するAirbnbや自家用車をタクシーのように共有するUberがあるが、Airbnbを利用したことのある人の比率は、アメリカで35.8%、オーストラリアで35.5%であった。また、Uberを利用したことのある人の比率は、アメリカで48.5%、オーストラリアで31.8%であった。どちらも生活の中にある程度浸透していることがわかる。
  • 日本、特に長野を旅行するにあたって、Airbnbのようなルームシェアサービスの利用意向についてきいた結果をまとめたのが下図である。「宿泊費が安くなるのであれば使いたい」という意見がもっとも多いが、「市民の生活が体験できるので使いたい」という意見に対しても回答者の過半数が肯定的に答えている。わが国ではAirbnbのようなサービスは「民泊」と呼ばれることもあり、旅館業法などで規制される場合もある。しかし、今後さらに増加する訪日観光客に対する日本の魅力を高めるためには、何らかのかたちでシェアリング・サービスを認めたうえでサービスの品質を高めていくことも求められているのではないだろうか。
  • 図. 日本旅行におけるルームシェアサービスに対する意識

    15017 図3. 日本旅行におけるルームシェアサービスに対する意識

    (出所:筆者作成)

参考資料

インバウンド観光とシェアリング・サービス利用の動向 アンケート調査集計結果 (1.32 MB )


注釈

(注釈1):
具体的には、代表例として、Airbnb(宿泊場所の共有)とUber(移動手段の共有)がある。

(注釈2):
たとえば、「DBJ・JTBF アジア8地域・訪日外国人旅行者の意向調査(平成27年版)」((株)日本政策投資銀行(DBJ)、公益財団法人日本交通公社(JTBF))など

(注釈3):
長野県下高井郡山ノ内町にある地獄谷野猿公苑では、温泉に入る野性のニホンザルが「スノーモンキー」と呼ばれ、外国人の人気を集めている。