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増加する再生可能エネルギーによる電力供給不安定性へのドイツの挑戦 ―日本では水素が解決策になりうるのか?―

発行日 2015年9月15日
上席主任研究員 濱崎 博

【要旨】

  • 再生可能エネルギーを中心としたエネルギーシステムへの転換を目指すドイツでは、風力・太陽光といった不安定再生可能エネルギー普及による電力システムの不安定性対策の必要性が高まっている。
  • アウディは不安定再エネの電力を利用した水素を介したメタン製造(e-gas)を行う。ドイツのスタートアップ企業Ubitricityは街灯を電気自動車の電源ソケット化し、電気自動車に電力を供給し、将来的には、自動車を電池として活用した電力システムの安定化を目指している。これらの取り組みは、ドイツのインフラなどの現状を検討した上での対応策である。
  • 日本も、2030年に電力に占める再生可能エネルギーの割合22~24%を目指しているが、今後再生可能エネルギーに起因した電力システムの不安定性対策を講じる必要性が出てくる。
  • 昨今注目される水素は単にエネルギーとしてではなく、電力から水素を作るなどエネルギーを貯める蓄エネとしての側面も有する。日本の現状のインフラなどを考慮した結果、水素は再生可能エネルギーが普及すればするほどその不安定性解決の経済合理的手段としてその役割が高まる。

再生可能エネルギー普及に伴う電力システム不安定性へのチャレンジ

  • Energiewende(エネルギーヴェンデ(大転換))の旗印のもと、ドイツは再生可能エネルギーを中心としたエネルギーシステムへの転換を推し進めている。その結果、ドイツにおける再生可能エネルギーの総発電量に占める割合は上昇しており、2014年には26.2%と4分の1を超えた。発電量の調整が難しい不安定再生可能エネルギーである風力や太陽光のシェアも増加しており、今ではその割合は総発電量の14.8%(2014年)を占める。
  • 年間では14.8%であるが、風況がよく、また日射量の多い時には、風力、太陽光発電で多くの発電が行われ、ある一時点での不安定再生可能エネルギーの発電量に占めるシェアは高くなる。Energy Charts(注釈1) によると、例えば2015年8月25日19:00時点の太陽光は15.78GW、風力は23.20GWであり、この時点でのドイツの発電量の約半分を不安定再生可能エネルギーが供給していた。
  • こういった不安定な再生可能エネルギーの不安定性解消のためには石炭火力の稼働変動で対応しているのが現状であり、これは電力システム全体で見た場合のコスト増につながる。たたでさえ、FIT(再生可能エネルギー固定価格買取制度)による賦課金が電力価格の上昇圧力となっている現状において、このような不安定対策によって生じる電力価格上昇は最低限に抑える必要がある。
  • このように、再生可能エネルギー先進国であるがために、システム全体でのエネルギーコスト低減圧力に直面しているのがドイツであり、実際に様々な取り組みが行われている。

AUDIのE-gasプラント

  • 世界的自動車メーカーであるAudiによると、ライフサイクルで見た自動車のCO2排出量の66%は自動車の使用時に発生している。Audiでは、この66%を低減するための一つの回答として、Audi e-gasプロジェクトを実施している。Audi e-gasプロジェクトでは、風力発電や太陽光といった再生可能エネルギーで作った電力を用いて電気分解で水素を製造する。さらに、バイオガスプラントで発生するCO2と水素を使ってメタンガス(CH4)を製造する。
  • このメタンガスはガスグリッドへ供給されるとともに、メタンガス車へも提供される。メタンガスを使用する際に当然であるがCO2が発生するが、電気も再生可能エネルギー由来、CO2もバイオガスで発生するCO2を使用するため、使用時に発生するCO2はオフセットされる。ライフサイクルで生じるCO2は一般的なガソリン車の70%減と大幅に削減を実現できる(Audi)。
  • 図表1:E-gasプラント及びA3 g-tron

    図表1:E-gasプラント及びA3 g-tron  
  • 特徴的な部分としては、水素を直接、燃料電池で利用するのではなく、さらにCH4へとメタン化して利用を行う点である。当然ではあるが、メタン化するプロセスが一つ増えることでエネルギー効率は下がるが、ドイツには37万5千kmにも及ぶガス・パイプライン網(注釈2) が整備されており、この既に存在するインフラを活用できるのが大きな理由である。

スタートアップ企業Ubitricityの街灯の電気自動車充電への活用

  • 昨今ベルリンはスタートアップ企業による活動が活発であるが、Ubitricityもその一つであり、設立は2008年の企業である。会社名であるUbitricityとは、Ubiquitous(どこにでもある)とElectricity(電力)を合わせた造語であり、電力自動車普及の問題の一つである充電場所の不足をビジネス化することを目的としている。
  • 彼らの主張では、電力は既にいたるところで入手可能であるが、それを商業的に成功させる解決策が不足しているとのことだ。具体的に説明すると次のとおりである。街中いたるところに存在する街灯に注目し、電気自動車の充電可能となるようにソケット(システム・ソケット)を組み込む。契約者は、自動車の充電ケーブル(スマートケーブル)を携帯する。路肩に駐車スペースが存在するドイツでは、街灯を充電ポストとして利用できれば駐車中に充電することが可能となり、またわざわざ充電場所を探す必要もなくなる。
  • 各充電ケーブルにはSIMカードが搭載されており、誰がどこでどのくらい充電を行ったかがわかる。電気自動車普及の阻害としては、充電に要する時間と、一回のフル充電での収入の低さである。例えば、24kWhのバッテリーを搭載する電気自動車の場合200Vの普通充電で8時間(注釈3) 、そこで得られる電気収入も24kWhに電力料金をかけると算出できるが、仮に20円/kWhとした場合、一回のフル充電では480円に過ぎない。
  • このことからも従来のガソリンステーションのようなビジネスモデルでは成り立たないことがわかる。街灯を充電ポストとして活用することは、これらの問題への回答である。街灯を充電スポットにする場合、初期費用は非常に低く抑えることが可能であり、ケーブル自体に通信機能を持たせているため、ソケット側のランニングコストも非常に低い。
  • Ubitricityのビジネスモデルは、ドイツの直面する再生可能エネルギー普及に起因した不安定性解消にも有効である。街灯で充電を行っている電気自動車は充電池であると考えることもでき、再生可能エネルギー普及による電力システムの不安定性解消が可能である。現状では、電力システム安定化に大きな寄与をするほど顧客の数は多くないが、今後契約者を増やすことで巨大な電力ストレージとしての機能を果たすことが可能となる。VPP(ヴァーチャル・パワープラント)の一種と言えよう。
  • 図表2:ソケットと充電ケーブル

    図表2:ソケットと充電ケーブル

    (出典)Ubitricity

水素は日本での電力システム不安定性への解決策となるのか?

  • 既に日本でも再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)を契機に太陽光発電を中心に再生可能エネルギーの導入が進んだが、2014年9月の電力会社による接続回答保留など再生可能エネルギーの不安定性による問題点も出始めている。この解決策には、蓄電設備の拡充や送電網の連系線強化など様々な手法が考えられる。
  • ここでは、昨今特に注目をされている水素の蓄電機能の有効性に注目し評価を行う。日本の特殊性を考慮した詳細な技術評価手法モデルであるJMRT(Japan Multi-regional Transmission Model)(注釈4) を用いて、エネルギー自給率、温室効果ガス削減など様々な条件を変化の組み合わせを行ったシステムズ分析を実施し、水素の蓄エネ機能に関して定量評価を実施した。
  • 2050年時点の不安定再生可能エネルギーによる発電量と電力起源の水素生産量の関係性を示したものである。水素と再生可能エネルギーはCO2削減において競合関係にあるとの意見もあるが、ここで見るように不安定再生可能エネルギーによる発電の増加するにつれ、水素生産が増えている。水素の有するエネルギーを貯める蓄エネの機能が活用されていると言える。
  • 図表3:不安定再生可能エネルギーと水素の関係性(TWh)

    図表3:不安定再生可能エネルギーと水素の関係性(TWh)

    (注)エネルギーモデル(JMRT)を用いた計算

  • 以上まとめると、水素と再生可能エネルギーの普及は、温室効果ガス削減において競合関係にあるとの指摘もあるが、日本の現状では水素は再生可能エネルギーの不安定性解消の手段として日本の現状を考慮した結果、経済合理性のある手段の一つであると言えよう。

(注釈1): https://www.energy-charts.de/power.htm

(注釈2): http://www.eon.com/en/business-areas/gas-storage-and-transport/transport-systems/pipeline-constructions.html

(注釈3): http://www.tepco.co.jp/life/custom/faq/faq_06-j.html 参照

(注釈4): 国際機関及び各国政府で用いられているTIMES (The Integrated MARKAL-EFOM System) を活用した技術モデル( http://www.iea-etsap.org/web/Times.asp

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