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  5. 再生可能エネルギーの総合利用による地域経済活性化

再生可能エネルギーの総合利用による地域経済活性化

発行日 2015年8月7日
シニアリサーチアナリスト 渡邉 優子

【要旨】

  • 経済産業省は、4年目を迎えた再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)について、PV(太陽光発電, photovoltaics)偏重の是正を要点として、FITを規定する再生可能エネルギー特別措置法の改正も含めた抜本的な見直しに乗り出した。FITの設備認定量の9割を占めたPVだが、今後は収束していくだろう。
  • FIT見直しのカギは、ベストミックスであり、多様な再生可能エネルギーをバランスよく導入していくことにある。開発時間がかかる風力、バイオマス、水力、地熱の事業予見性を高めるため、各種規制緩和を進め、事業者の参入を促す。
  • 地域に多く存在する再生可能エネルギー資源だが、種別により地域還元の大きさが異なる。多様な再生可能エネルギーに焦点が当っている今こそ、各特性を理解し、総合利用することによって、地域経済活性化に繋げていくことが重要である。

1)PV(太陽光発電)偏重の終焉

  • 2015年6月、経済産業省は、2012年開始から4年目を迎えた再生可能エネルギー(以降、再エネ)の固定価格買取制度(FIT)の法改正を含む抜本的な見直しに着手した。PV(太陽光発電, photovoltaics)偏重の是正が大きな要点である。
  • FITによる設備認定量(国によって買取が決定した電力量)の約95%にあたる8,263万kWがPVである(2015年3月末時点)。PV以外の再エネが、採算ライン相応の買取価格であったのに対し、PVは高めに価格設定されたことや、開発期間の短さから、投資事業として注目されたことが要因である。
  • 特に2014年度は、PVの設備認定の駆け込み需要が発生した。2015年度から、FITの2大優遇措置(利潤上乗せと税控除)の廃止に加えて、PVの買取価格の大幅引き下げが予想されていたためである。
  • 一方で、設備認定を受ければ、その時点の高い買取価格が適用されたため、着工せずにパネル等の値下がりを待つ滞留案件が既に多く出ていた。実際、PVの導入量(買取が開始された電力量)は、2015年3月末時点でも、設備認定量の2割程度に過ぎない。
  • この結果、5電力会社が、PVを中心に新規買取手続きを保留した。2014年9月に起こった「九電ショック」である。その後、FITの運用は改善されているが、今回の抜本的見直しは、滞留案件対策の強化や買取価格決定時期の変更、PVの設定容量の管理等、FITを規定する再エネ特別措置法の改正まで踏み込んだものになるだろう。
  • 安定した高収益事業として、設備認定が急速に伸びたPVだが、2015年度に入り、買取価格の引き下げによる利回りの低下で、急速に人気が衰えている。さらに、今回の見直しによって、全量買取の保証や買取の長期空白期間が生まれる可能性が出てきた。このような事業リスクの高まりにより、今後、PVの設備認定量の伸びは収束していく見通しだ。
  • 図表1:PVにおけるFITの買取価格(10kW以上)と設備認定量の推移

    図表1:PVにおけるFITの買取価格(10kW以上)と設備認定量の推移

    (出所:資源エネルギー庁資料を基に、富士通総研作成)

2)FIT見直しはベストミックスがカギ

  • 今回のFITの抜本的な見直しは、再エネ全体の均衡の取れた振興を目指すことにある。2015年7月、経済産業省は、2030年時点の望ましい電源構成(ベストミックス)として、現在約11%の再エネ比率を最大24%に高める計画を公表した。
  • ベストミックスのポイントは、電源の特性に合わせて比率を定めたことである。天候に依存し変動するPVと風力を合計9%弱に留める一方、安定して発電できるバイオマスや水力、地熱を最大15%程度確保するとしている。
  • 風力、バイオマス、水力、地熱は、事業化検討から買取価格決定までの期間が長いのが課題である。環境等の事前調査に数年から10年を越す場合もある。
  • これら再エネの導入量拡大のため、各種規制緩和を進める。例えば、事業予見性を高めるために、設備認定と価格決定時期の前倒しの可能性を検討するなど、事業者が参入しやすい環境を整備する。
  • FITは、国民全員負担のもと、再エネ賦課金を徴収して成立している。この負担抑制をしつつ、バランスよく多様な再エネを導入するため、ベストミックスのPV比率は下げられている。しかし今後、滞留案件解消により、FIT初期に認定された高額案件が、低い買取価格の案件に置き換わることにより、PV導入量が増える余地はある。

3)地域経済活性化に繋がる再エネの特性の理解

  • 再エネ資源は、地域に多く存在している。広大な土地や森林等の貴重な地域資源を活用するからには、地域経済に恩恵があることが必須だ。しかし、再エネの種類によって、地域還元の大きさが異なる。
  • PVと風力は、事業性としての魅力が大きい。他の再エネよりも開発期間が短く、FITによる収益を早く得ることが出来る。また、立地・気象条件により事業規模の想定がつきやすい。建設さえすれば発電できてしまうため、参入障壁は低い。
  • しかし、大きな初期投資が必要であるため、資金調達力のある大企業中心に開発が進んでいる。結果、適地がある地域の参画余地は少なく、地域視点が欠けやすい。また、地域への経済還元は、一時的、限定的(地代、固定資産税に留まり、波及効果なし)で、20年後の空洞化の懸念もある。
  • 一方、バイオマスは、地域との関連が強い。燃料・原料の収集が不可欠であり、農林業と密接に関連した事業展開となることが多い。また、エネルギー効率から熱利用を考えると、限定された範囲での事業設計とサプライチェーンの構築が前提となる。
  • バイオマスのポテンシャルは高い。木質バイオマス燃料として、日本は世界トップレベルの森林蓄積量(60億㎥)を誇り、バイオガスは国内どこでも原料調達可能(家畜ふん尿や食品残渣等)である。
  • バイオマス導入の課題は、事業整備のために時間とコストがかかる点である。一方で、地域資源に基づいているために、恒常的にニーズがあり、景気に左右されない。一つ一つの事業は小さいが、その分空洞化リスクも少ない。何より、地域が主体となって参画できる。
  • 再エネの特性をうまく組み合わせて、地域発展に結びつけることが重要だ。比較的早く資金化できる再エネ事業をまず展開し、FIT収益の一部を基金化する。その基金を、開発期間はかかるが、将来的に地域で発展させやすい事業に投資し、地場産業に育て上げる。小さいながらも数多く生み出すことで、集合体となって、経済的には強い基盤を作り上げる。
  • 地域経済活性化のためには、目先のFIT収益だけに着目した再エネ事業を考えるのではなく、大局的な視点で再エネ事業を捉えることが必要である。多様な再エネに焦点が当っている今こそ、総合的に利用することによって、持続可能なまちづくりに繋げることが望ましい。
  • 図表2:再エネの総合利用による地域経済活性化ロードマップ(例)

    図表2:再エネの総合利用による地域経済活性化ロードマップ(例)

    (出所:富士通総研作成)


渡邉 優子(わたなべ ゆうこ)
株式会社富士通総研 経済研究所 シニアリサーチアナリスト
自治体や中央省庁における計画策定支援・行政経営改革や地域経済活性化に関わるコンサルティングおよび調査・研究に従事。