GTM-MML4VXJ
Skip to main content

English

Japan

  1. ホーム >
  2. 調査・研究成果 >
  3. ニューズレター >
  4. 2015年 >
  5. 林業・バイオマス-からの地方再生

林業・バイオマス-からの地方再生

発行日 2015年6月8日
上席主任研究員 梶山 恵司

【要旨】

  • 地方経済の疲弊が指摘されるが、足元には大きな可能性が広がっている。林業とバイオマスだ。日本の森林資源はいまや世界有数の蓄積を誇るまでに成長した。
  • 林業・バイオマス利用を支えるシステムは共通であり、ひとたびそのモデルができれば、どこでも応用可能である。しかも、森林はどこにでもある資源であることから、林業再生とバイオマス利用は、地域、ひいては日本経済の活性化に大きな貢献を果たす。
  • このようなことから筆者は岩手県遠野市において、市や地元企業と連携して熱利用をベースとしたバイオマスの総合利用の実証事業を始めた。真のモデル事例とすべく、欧州の専門家のサポートを受けて、最先端の技術を取り入れたものである。今年度に設備導入がなされることから、そう遠くないうちに結果がでるだろう。

先進国における林業の位置づけ

  • GDP比でみれば、林業の規模は1%にも満たない。しかし、林業はすそ野が広く、地域で材が生産されれば、製材や合板、製紙などの一次加工、さらにそれを家具や住宅などで利用する2次加工へと拡大していくことから、その波及効果が極めて大きい。
  • たとえば、日本と並ぶ工業国であるドイツの森林面積は日本の4割にすぎないが、そこから生産される材は日本の3倍にも達し、それを利用する木材関連産業全体の雇用は100万人を超えるほどである。近年ではバイオマス利用も拡大の一途をたどっており、これが地域に多大な恩恵をもたらしている。
  • これは何もドイツに限ったことではない。オーストリアや北欧など、森林資源が豊富な欧州の国・地域では林業は当たり前に成立しているし、これが地域経済を支える大きな柱となっている。
  • これら欧州の林業条件は、決して恵まれているわけではない。たとえば、オーストリアである。東欧に深く食い込んで立地しているオーストリアでは、ベルリンの壁崩壊以降、東欧から外材が大量に輸入されるようになったし、アルプス林業地帯の地形は相当に険しい。小規模所有で所有形態が複雑化するのは先進国共通の現象で、オーストリアも同様である。それにもかかわらず、オーストリア林業は健全で、そこで生産加工された材がはるか日本にまで輸出されるほど、強い競争力を有している。
  • 林業が先進国で成立しうる理由は、木の特性にある。木材は重くてかさばるわりに単価が安く、生産原価に占める輸送経費の比率が特に高いのが大きな特徴である。このため、丸太を動かす回数が多くなればなるほど、運ぶ距離が遠くなればなるほどコストがかかる。可能な限り資源に近いところで加工して材積・重量を半減し、付加価値をつけたうえで需要地に輸送するのが、林業・木材産業の競争優位性を発揮する基本である。
  • だからこそ、世界の木材産業は資源立地が原則であり、丸太は基本的に国内消費がほとんどである。また、木材は、製材品にしても物流経費の比率が高いという商品特性に変わりはなく、需要地に近ければ近いほど競争優位性を発揮できる。この点、先進国であれば、足元に大きな需要が存在することから、立地優位性はさらに高まる。森林資源が豊富な先進国において、林業はおのずと地域経済・国民経済を支える大きな柱となっているのは、このためである。

いまや世界有数の資源に成長

  • それでは欧州と異なり、日本の林業はなぜ低迷してきたのだろうか。その最大の理由は、戦後の復興需要で材価が異常に高かった時代に、木を伐りつくしたことにある。60年代の木材生産は6000万立方メートルに達していたが、森林蓄積はわずか20億立方メートルにすぎなかった。このことは、30年で日本のすべての木を伐りつくす勢いで木材生産を行っていたことを意味する。つまり、林業は持続可能ではなかったということだ。日本の木材生産量が60年代半ばをピークに、以降、一貫して下落傾向を続けているのはこのためである。他方で、戦後日本は、毎年1億立方メートルもの木材を需要し続けており、国産材の供給力減退を補ったのが外材だった。つまり、日本林業の低迷は、外材とは何ら関係ない。自らまいた種である。
  • 図 木材生産と森林蓄積の推移
  • もっとも、戦後復興期の森林伐採は、同時に木を植えることでもあった。そうした植林によって、日本の森林蓄積は60億立方メートル(モニタリング調査結果等による推計。公式統計では50億立方メートル)と、世界有数の資源量を誇るまでに成長した。ドイツやスウェーデンは世界有数の林業国だが、日本の森林蓄積はその倍に達する規模であることを考えると、資源量がいかに膨大であるかがわかる。
  • 森林を健全に保つには、成長量の6~8割を定期的に間伐する必要があるが、日本の森林の成長量は1億立方メートルを優に超えていることから、木材需要量7000万立方メートルは十分に自給可能である。
  • 利用段階に入った森林のポテンシャルを引き出すには、林業の抜本改革が不可欠だ。
  • 従来の林業は、歩いて現場まで行き、不要木を単に伐採して放置する、伐り捨て間伐がもっぱらだった。ところがこれからの林業は、間伐した木を運び出して利用する利用間伐の時代に入る。
  • チェーンソー1本で済んだ伐り捨て間伐と異なり、大型の林業機械が必要となる利用間伐では、高度な技術力・経営力が現場に要求される。林業機械を効率的に使いこなしつつ、多面的機能に優れた森林へと誘導していくには、路網などのインフラ整備が不可欠となるし、高度な技術力を持った人材を育成するシステムも必要となる。欧州では、戦後林業政策の最優先課題が、路網整備だった。流域全体を俯瞰し、まずは大型トラックが通れる道を整備してきた。これによって、合理的な木材生産とその材を運び出して利用することを可能とする基盤が構築されたわけである。
  • 欧州の林業従事者の生産性の高さは、日本のそれとはけた違いだが、それも充実したインフラが存在していればこそ可能となることだ。

バイオマスの基本は副産物利用

  • インフラ整備が進み、木材生産が増加していくとなると、次なる課題は、木材価格の安定である。戦後、異常ともいえるほどに高騰した材価は、いまでは国際価格よりも大幅に低い水準にまでに下落しており、これが林業の疲弊に拍車をかける結果となっている。このような状況で木材生産を増加させれば、さらなる材価下落を招きかねない。
  • 木材価格を安定させる方法は大きく、1)製材などの木材加工品の付加価値を最大限引き出す木材利用と、2)木材生産・製材加工などで必然的に発生する残材の付加価値を上げるバイオマス利用の2点に集約される。
  • ここでは、後者を詳しく見てみよう。
  • バイオマス利用の基本は、森林資源を副産物利用 することによってゴミを宝にすることにある。木材はこれを生産・加工する過程で様々な残材が発生する(写真)。たとえば、木材生産の現場では、枝葉や丸太にならなかった端材(林地残材)が大量にでる。製材や合板などの木材加工工場では、樹皮(バーク)の処理が重荷となっている。木材加工では、丸太の4~6割が残材になるほどで、これにいかに付加価値をつけるかは木材産業の国際 競争力強化のためにも不可欠である。剪定枝も現状では、焼却処分されるだけだ。
  • これら残材は、水分管理や灰の処理などで、丸太からつくるチップに比べれば取扱いには注意が必要だが、熱量としては丸太チップと同等である。つまり、木材の生産や利用の段階で必然的に発生する残材は、バイオマスとして利用することによってはじめて、それがもつ本来価値を最大限引き出すことができる。
  • ところが、日本でバイオマス利用というと、そのためにわざわざ木を伐りだして使うという発想が強い。これでは、バイオマス利用のために木材生産をするということになり、主産物利用になってしまう。コストが大幅にかかるのみならず、せっかく大量に発生している残材利用にもつながらない。

図 多様な残材

 

地域が潤うバイオマスの熱利用

  • その典型が、バイオマス発電である。
  • 日本におけるバイオマス発電計画の多くは、5000KWを超える大型で大量の燃料を消費するものである。残材利用すれば、それだけ燃料調達は容易になるはずだが、日本のバイオマス発電では、わざわざ丸太から作る良質なチップを燃料とするものがほとんどである。つまり、バイオマス発電ではそのために丸太を集めるのに必死になる一方で、林業や製材工場の現場では、これら残材はそのまま捨てられるか、カネを払って処分するかで、頭を抱え続けることになる。
  • その背景にあるのが、日本のボイラー技術の問題である。木質バイオマスは化石燃料と異なり、形状や水分がさまざまである。このため、これら多様な燃料をいかに効率よく燃焼し、熱を回収するかは、ボイラーの技術力に大きく左右される。具体的には、ボイラーの性能は、炉の構造や燃焼方法、空気の送り方、灰の処理方法など、様々な要因の組み合わせで決まる。この点、ドイツやオーストリアでは、20年以上にわたるバイオマス利用の歴史があり、ボイラーも技術改良が積み重ねられてきた。
  • 他方、日本のボイラーは、石炭火力や焼却炉由来の技術をバイオマス用に転用したものである。つまり、ベースとする技術は、多様なバイオマス燃料をいかに効率よく燃焼し、熱を回収するかといった目的に基づいて設計されたものではない。だからこそ技術的な制約を受けてしまう。
  • バークの廃棄処理コスト負担と、残材のチップ利用ができない機会損失という二重のハンディを背負うことになる。欧州からボイラーを輸入できればこうした問題はクリアできるが、熱用とは異なり発電用ボイラーの輸入は、電気事業法により難しいのが現状である(経産省が規制緩和を検討中)。
  • 林業および地域再生の視点からみて急がれるバイオマス利用は、発電よりは熱利用である。日本で熱利用というと需要がないといわれるが、実際には最終エネルギー消費の5割は熱である。電力は4分の1に過ぎない。給湯や暖房、農業施設、産業用プロセス熱など、さまざまな場面で大量の化石燃料が消費されている。これらは基本的に、バイオマスに代替可能である。
  • 熱利用であれば、地域に存在するし、輸送コストも大幅に抑えることができる。また、化石燃料の高騰から、バイオマスの価格競争力も高まっており、ユーザーにとってもメリットが大きい。他方、林業にとって熱用のチップ価格は製紙用や発電用チップよりも高く売ることができる。つまり、バイオマス熱利用は、使えば使うほど地域が潤うことになる。

遠野市におけるモデル事例構築の試み

  • 日本でいまもっとも求められるは、さまざまな残材をその特性に応じたバイオマス利用を図ることによって、残材の付加価値を最大限引き出す具体的事例の構築である。このようなことから筆者は岩手県遠野市において、市や地元企業と連携して熱利用をベースとしたバイオマスの総合利用の実証事業を始めた。これは、環境省・林野庁の補助事業を活用した2014年-2016年の3か年事業であるが、真のモデル事例とすべく、欧州の専門家のサポートを受けて、最先端の技術を取り入れたものである。
  • その主な内容は、1)バークなど水分の高い低質なバイオマスも燃料利用できる大型の産業用ボイラーの導入、2)品質管理されたチップを燃料とする、使い勝手に優れ、価格も安い量産型の小型ボイラーの導入、3)バイオマスの特性に合わせて品質管理できるチップヤードなどの燃料供給体制の整備、4)さまざまな残材もチップ化できる移動式チッパーの導入、である。今年度に設備導入がなされることから、そう遠くないうちに結果がでるだろう。
  • 林業・バイオマスを取り巻く課題は全国共通であり、だからこそモデルができればおのずと全国展開が可能となるはずだ。

関連ページ

FRI経済研ワークショップ
自然資本地方創生論 ~世界屈指の林業・バイオマスのポテンシャルを活かせ~

  • 開催日時: 2015年6月16日(火曜日) 15時~17時30分
  • 会場: イイノホール&カンファレンスセンター Room A