Skip to main content

English

Japan

「循環型による認知症の医療・介護等の提供のあり方に関する調査研究事業」(老人保健健康増進等事業)の実施について

富士通総研では、厚生労働省「平成28年度老人保健健康増進等事業」(国庫補助事業)として、「循環型による認知症の医療・介護等の提供のあり方に関する調査研究事業」を実施致しました。

お問い合わせ先

担当:コンサルティング本部 行政経営グループ 東史人、藤原律子

電話:03-5401-8396(直通) Fax:03-5401-8439

背景と目的

認知症の人が、できる限り住み慣れた地域で暮らし続けられるためには、居宅や通所・施設での介護サービスや医療サービス等の各種の支援環境等が地域で整っている必要があります。特に、行動・心理症状(BPSD)や身体合併症への対応における専門科の協力や退院パスウェイの設定等、入退所・入退院を含む医療・介護の有機的な連携を行う循環型の仕組みが必要であり、新オレンジプランでもその仕組みの構築が目指されているところです。

全国の各地域で、この循環型の仕組みを構築していくにあたり、医療・介護等の連携における要の役割を期待されている認知症サポート医(以下「サポート医」と略)は、養成開始から約10年が経過し6,700名まで増え、5,000名という当初の量的目標は達成されたことから、今後は地域で実働できるサポート医を増やしていく必要があります。

そのため、本事業では、循環型による認知症の医療・介護等の提供体制を具体的に地域で構築し、医療・介護等の連携を実践できている全国各地のサポート医から、連携関係の構築や維持に係る具体的な方法や実践上のポイント等を収集・分析し、全国で共有・展開できるよう、他のサポート医等の参考となるノウハウ等を抽出することをめざしました。

事業概要

循環型の仕組みの要となるサポート医が、実際に地域において他職種と連携し活動できるよう、どう動けば活動の場ができ、関係の構築・維持がうまくいくか等の手法を明確化するには、アンケート調査票のやり取りで必要十分な情報を確実に収集するのは困難なことから、本事業では、サポート医への訪問ヒアリングにて調査することとしました。

サポート医の好事例の収集の前提となる調査対象の適切な抽出、的確な調査項目の設定や、実査後の報告書とりまとめにおける参考となる点の的確な抽出・整理のため、全国的に好事例を熟知し、実践状況の実態をよく知る、代表的な有識者を委員とする調査検討会を設計・設置して議論・検討を行いました。

事業の結果

本事業により、認知症の人ができる限り住み慣れた地域で暮らし続けるために必要となる循環型の仕組みにおける要となるサポート医は、どのように活動すれば期待されている役割を果たせるかが明確になりました。その主なポイントとしては次の通りとなります。

  1. 連携関係の主な構築方法には、在宅医療や精神科等自院の医療機能へのニーズを契機としたパターンと、通常の診療以外の連携の機会(定期的な勉強会等の活動)を意識的に設ける(主催や参加等)ことで始まったパターンがある。構築より難しい関係の維持には、地域づくりや連携の必要性等各職種の基本姿勢、共に連携の推進に尽力する同志、実際の連携実績の蓄積、そのための継続を優先した様々な努力、が必要。
  2. これまで関係のない他職種と医師自ら関係を構築するにはコミュニケーション能力を要するが、必ずしも医師が主導しなくとも地域を知る繋ぎ役(地域における認知症地域支援推進員、院内での連携担当職員、等)によるコーディネートがあれば連携は進む。
  3. 職種間での認識・理解・方向性の差異は必ず顕在化するが、議論・意識合わせ等実績の積み重ねにより極小化が可能。

報告書の公表

以上のような本事業で得られたノウハウ等が、今後、各地域でサポート医等に積極的に活用・実践され、新オレンジプランに基づく循環型の仕組みの構築等が進むことで、認知症の人ができる限り住み慣れた地域の良い環境で暮らし続けることができる社会が早期・着実に実現されていくことを期待し、報告書として取りまとめましたので、公表致します。今後の各地域での循環型の仕組みづくりに広くご活用いただけますと幸いに存じます。

調査検討会の委員各位、ヒアリング調査対象のサポート医の先生方等をはじめ本事業にご協力賜りました関係の皆様方には、深く感謝申し上げます。ありがとうございました。