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デジタル&ネットワーク・マーケティングセミナー


デジタル&ネットワーク・マーケティングセミナー


インターネットリサーチの可能性と限界
萩原 雅之氏 株式会社 リクルートリサーチ調査部

インターネットリサーチへの関心

私、仕事と趣味を兼ねましてインターネットサーベイ・ウォッチングという、インターネット関係の調査を簡単に紹介したサイトを作りました。このサイト上のメーリングリストでどんなディスカッションが行われているかといいますと、大きく分けてこの2つになると思います。

ひとつは、従来の調査会社がやっている調査にインターネットを使えないかと。要するに、調査ツールとしての利用ということなんです。例えば、今の質問紙アンケートですとか、電話調査、こういったものの代替が効くかとか、あるいは、インターネット上で無作為抽出みたいなものができるかとか、そういったことを議論しているわけですね。
もうひとつは、インターネット自体をマーケット、市場として見てディスカッションをする。これは、いわゆるネットビジネスですとか、インターネットマーケティングと言われる分野でして、このサーベイメールに限らず、非常にいろんな形で話題にはなっているところで、世の中の関心で言いますと、前者と後者の比率はおそらく1対100ぐらいではないかと思うんですが、サーベイMLでは両方がバランスよく話がされています。

本日は、リサーチというテーマということもございますので、主に前者の視点からお話をさせていただきます。

ネット上のアンケート調査

ここで調査というのは、とりあえずアンケート調査に限らせていただきますけれども、今、Web上あるいは電子メール、オンラインでやっているアンケートというのは、大きく分けてこの3つのタイプがございます。
一番目が、例えば調査会社等があらかじめ調査協力者パネルというのを作って、その人たちにアンケートをかける。これをパネル調査といいます。
二番目が、何らかのかなり大きな電子メールリストを使って、その中から抽出をしてアンケートをかける。サンプリング調査と書いていますけれども、そういったタイプの調査がございます。電子メールリストといいましても、インターネット上では事実上ありませんので、実際にやられているのは、プロバイダーの契約者のリストですとか、あるいは、別の目的で集まった何万人とか、そういったリストを使ってアンケートをかける。
3番目が、適当な呼び方がないので、広く呼びかけるアンケートと書きましたけれども、これはインターネットの非常に特徴的な調査方法ですけれども、例えば、バナー広告ですとかメール広告で広く告知してアンケートページへ誘導する。これは、従来型の調査というのがアンケートをお願いしますというふうに個人にお願いするのに対して、参加したい人は参加してくださいというような意味で、セルフセレクション調査という言い方がされております。
今、ネット上でやっているアンケートのほとんどは、このどれかに分類されるわけなんですけれども、実は、こういった手法というのが、調査の専門家とか研究者からは評判があまりよろしくありません。

調査の専門家、研究者からの批判

インターネット調査は、ネットに接続している人しか相手にできないし、もちろん全家庭に普及する見込みはない。だから、調査のインフラとしてはダメですよ、という意見ですね。
景品とか懸賞で参加したい人だけを呼び込んだような方法のWeb調査、もちろんパネル調査にしましても、パネルを集める時に景品で釣れば一緒ですので、そういった形で集めたような調査というのは、駅前アンケートとか人気投票と同じで到底調査と言えるものではないと。
全部もっともなんですが、こういう状況を称して、インターネット調査というのは素人の遊びだよとか、あるいは、これは調査ではなくて、単なる個人のケースの寄せ集めではないかというような声も聞いております。

調査結果は調査手法を反映する

こういった調査の専門家と言われる人たちが気にしているのは何かということを突き詰めますと、やはり母集団とサンプリングの問題ということになります。すなわち、私どものような調査会社にずっといて昭和30年代ぐらいからの教科書を使ってやった人間にとっては、誰を測定したんですかという母集団ですね。それから、測定しようと思った集団の中から、どうやって調査に協力してもらったんですか、調査に回答した人は誰ですかという、その枠組み。つまり、サンプリングというのを絶えず、これが何事にも優先するみたいな考え方がとてもあります。こういうことを念頭に置いたままですと、例えばデジタルカメラを使ってみたいという人が60%という数字が出た時に、これはネットに接続している人の60%なのか、あるいは、例えば20代の人たちだけに調査をかけたら、それは20代のデジタルカメラの購入意向が60%というふうに言っていいのかという問題がどうしても残ります。

サンプリングのほうにしましても、参加したい人だけデジタルカメラについてのアンケートを実施していますと。商品はデジタルカメラですよというようなアンケートをやって、そこでデジタルカメラの購入意向をとりましても、出てきた数字をどう解釈していいのか従来のマーケットリサーチャーは大変困るわけですね。

インターネット調査の適用段階を整理する

調査ツールとしてどのくらい使えるかという話に進めます。ネット上の調査を分類する時に3つの段階というのを設定しておりました。
第1段階として、インターネットというのはまだ全然普及していないので利用者も大変特殊な人たちであると。じゃあ、どう特殊なのかとか、どこが違うのかということをきちんと調査した利用者の基本情報ですね。この中には、属性、プロフィールですとか利用環境ですね。家からだとか、モデムの速さは幾らだとか、そういったことの基本情報があります。
その次の段階として、母集団をネット利用者として考える調査というのが結構あります。つまり、Webの閲覧状況ですとか、特定のWebの評価ですとか、あるいはオンラインショッピングの経験ですとか、バナー広告の効果測定ですね。こういったものというのはネット上で完結しておりますので、第1段階の基本的な状況を押さえた上で、ネット利用者を母集団とするような調査というのが成立するだろう。現にそういう調査も集めております。
その3段階目に来るのが、母集団を一般消費者、一般生活者と考えて、従来のマーケットリサーチが対象にしてきたような調査も代替しようというような考え方の調査というのがございます。これは、例えば、本当にインターネットには触らないような主婦を対象とした商品開発ですとか、ブランドの認知度の測定ですとか、究極的には、例えば世論調査みたいなものですね。
こうやって段階的に考えますと、先ほどの母集団を明確にするということは、ある程度きちんと整理されるんじゃないかと思います。

調査ツールとして利用される必然性

母集団ですとかサンプリングのいろんな批判はあるんですけれども、私自身は、こういったことは前向きに考えていくべきだと思いますし、ある程度の条件とか制約はあっても、できるところから、あるいは使いやすいところから入れていくべきだろうというふうに思います。
それは別に根拠のないことではなくて、いろんな必然的な要因というのがございます。まず、調査会社というのは意外と昔ながらの手法というのをそのまま使っておりまして、本当にアンケートを作って調査員が各家庭を訪問してみたいな話というのは、もう何十年も同じ方法をやっているわけですね。ただ、ここ10年ぐらい、調査票を作るところとか、あるいは出てきたデータを集計してレポーティングするというところは、ほとんどパソコンを使ってやるような形になってまいりました。

唯一残っていたのがフィールドワークの分野なんですが、こちらも、インターネットが出てくる前から、CATIとかCAPIですね。CATIというのは、電話をかける、あるいは電話で質問をした結果を入力する、そういうのを全部オペレーターが端末のパソコンで処理するというもです。CAPIというのは、面接法の紙の代わりにPDAみたいな携帯端末とかノートパソコンとか、そういったものを使ってインタビューを進めていく。まずひとつは、こういう調査業務プロセス全体がデジタル化する勢いがあるということですね。

もうひとつは、アンケート調査の場合は、突き詰めると、調査を実施したい側が、調査を回答している側からどうやってデータをとるかと、手段的にですね。ということなんですが、昔から行われてきたのは、人がそのまま家へ行って聞き取りをする、あるいは郵送で紙を送って、答えてもらったものを返してもらうという方法だったわけです。これが、例えば、電話が出てくると電話調査というのが出てきましたし、ファクスが出てくるとファクス調査というのが普及してきた。そういうインフラというのが世の中の進化に従って出てきているわけですね。
そういったデジタル化とネットワーク化というのがございますから、インターネットを使おうというのは非常に自然な流れでございます。

利用環境の変化が適用可能性を広げる

もうひとつは、インターネットの市場そのものの変化です。大きく分けると、たぶん利用者の変化と、その技術の変化ということになるんでしょうけれども、2年ぐらい前のイメージとは、やはりかなり変わってきていると思います。
技術のほうにしましても、今は当たり前のようでも、2年前は全然なかったよ、みたいな話というのはインターネットの世界では日常茶飯事でございまして、結局、利用者の状況が変わって、技術も変わっていきますので、その時点その時点の調査設計ですとか、あるいは結果の解釈の仕方、こういったものを最適化することによって、だんだんノイズを小さくしていけるんじゃないかというふうに思います。

注目される動向(サーベイ系)

これからどういうことがインターネット調査で出てくるかということをアンケート調査系でまとめてみました。まずひとつはデジタル調査票。例えば、動画をアンケート用紙の中に組み込むみたいな話というのは、2年前はとんでもない話だったんですね。これは間違いなく組み込まれていくだろうというふうに思います。

サンプリングのコントロールということにつきましても、いろんな可能性が出てきております。一例としまして、Webサイトの訪問者に対する調査をやりたいと思った時に、今まではサイトのトップページに「現在アンケート実施中」という形にやっておいて、そこをクリックしてもらうという方法が主流だったと思うんですが、例えばJavaScriptを使うと、来た人の1,000番目に調査依頼の文面を出してお願いしますと言って、OKであれば飛んでもらうというような方法。Cookieを使えばダブリの問題もなくなりますので、そういった形で、Web訪問者の無作為抽出調査というのも技術的に問題なくできるようになってきた。

アンケートの告知方法も、最近はものすごい訪問者を集める大きなサイトも出てきていますし、電子メールのメールマガジンですとか、わざわざ行かなくても情報が届く仕組みというのがかなり浸透していますので、告知方法も、かなり工夫の余地が出てきたなというふうに思います。

注目される動向(データマイニング系)

サーバーログの分析というのは昔からやっていたわけなんですけれども、これを実際に、例えばサイトの仕組みをちょっと変えて、それに、どういうふうに訪問者が動くかみたいな記録を取って、そこで仮説検証をしたり、モデルを作ったりする。
2番目は、これはまだ日本では公式には出ていないですけれども、米国では、既にローカル側のログ分析というのを商売にしている会社というのが、ニールセンとか結構やっておりまして、これはテレビの視聴率と同じですから、当然このニーズはあるだろうというふうに思います。

それから、コンテンツ分析ですね。定性データ分析とありますが、要するにアンケートであれば自由回答ですとか、掲示板ですとか、メーリングリストですとか、チャットですとか、膨大な消費者の書き込みがあるわけで、これを全部定性データとして収集することができる。最近、そういう定性データをいかに分析するかというようなソフトウエアの開発ですとか調査研究というのに各社しのぎを削っております。
あと、バーチャル・ショッピングですね。パッケージテストみたいなものは、今まで、もちろんパソコンを使ってもできるんですけれども会場テストみたいな感じで実際に来てもらって見なきゃいけなかったんですが、すごいリアリティの高い表現ができるとすれば、家にいながら全国の人を対象にしたパッケージテストをインターネットを使ってやることができるとか思います。

マーケットリサーチ業界にとっての問題

こういう明るい話はあるんですけれども、ただ、あまり「明るい、明るい」と言っているだけではいけないと思っておりまして。マーケットリサーチ業界からいいますと、ここにあるような問題が起こっております。

今まで調査会社というのがなぜ成立していたかというと、調査員を大量に抱えていて、その人たちの教育をもきちんとやってきました。ですから、全国で1,000サンプル、2,000サンプルをやってくださいと言ったら、普通はできないんですが、調査会社ならできるということだったのですが、インターネット調査に関しましては、こういった仕組みが必要ありませんし、従来調査会社にあったモラルですとかノウハウ、これが特に気にされずにリサーチをやっているケースというのが非常に目立つということですね。

それから、低コストと短期間。これ自体は、もちろんお客様にとっては非常にいいことなんですけれども、やはりどうしても、安いですよ、早いですよ、ということだけで受注が決まることになりますと、当然クオリティ面というのを犠牲にする側面というのが出てまいります。

最後に、これはたぶん後ほどのディスカッションでも出てくると思うんですが、ダイレクトマーケティングですね。要するに、プロモーションですとか、セールスとか、こういったものの境界が、従来の調査手法以上に不明瞭になる可能性があるということです。
サーベイMLのディスカッションを見ていて思いますのは、調査というのは科学であって、正確でなくてはならないというような考え方と、調査というのはツールなんだから、役立てばいいんじゃないかという考え方の、その差が非常に大きいんですね。ただ、インターネットの場合は技術が先行しておりますし、マーケティングへの応用というのが緊急の課題になっておりますので、先ほど申し上げたような母集団の話、サンプリングの話をきちんと追求することと、与えられたコストですとか制約条件の中で最善の手法を選んで、モラルの高い仕事をすることというのは分けて考えて、両方ともきちんと追求していくべきではないかなというふうに思います。


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