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BtoBサイトの利用状況と効果的な仕掛け

2015年10月16日(金曜日)

法人向けビジネス(BtoB)では、NCネットワークなどの中堅中小企業の製品やサービスを集約したプラットフォーム型のサイトや、MonotaRO(モノタロウ)のような間接資材の販売サイトが以前から普及していた。一方、個社のWebサイトは会社紹介の役割が主で、必ずしも製品販売に大きな効果があるとは言えなかった。ところが、最近になって、自社のBtoBサイトがビジネスに貢献するようになってきた。ただ、BtoBではリアルとWebサイトを組み合わせた販売スタイルが一般的なため、Webサイトだけの貢献が見えにくい。そこで、BtoBサイトの利用状況を分析したケーススタディを基に、BtoBサイトの貢献と活用のポイントを考える。

1. BtoBの購買プロセス段階

BtoBの営業活動と言えば、以前は展示会などで見込み客を獲得し、営業担当が訪問して提案する形が一般的だった。電話だけでは信頼が得られず、遠くであっても面談するのが当たり前といった商習慣の会社もあったほどだ。しかし、今では顧客が自らWebサイトを使って必要な情報を集めて比較検討した上で、問い合わせるケースが増えている。顧客からコンタクトがあった段階では製品や発注先候補の選定は終えており、勝負はすでについていると言われるほどだ。

Webサイトの利用が増えたといっても、商品紹介から注文までBtoBサイト上で完結するビジネスはまだ少なく、リアルの販売活動とBtoBサイトを組み合わせる販売スタイルが一般的だろう。このため、BtoBサイトが利用されていることは分かっているが、販売活動における貢献度合いが分からず、社内でBtoBサイトの価値をアピールできない担当者も多いのではないか。そこで、BtoBサイトの具体的な貢献を明らかにするために、顧客の購買プロセス段階別に利用状況を分析する。

顧客の購買プロセスは一般的に次のような流れになる。まず、業務上の課題を解決するために必要な製品の情報を収集し、要件と照らし合わせながら最適な製品を絞り込んでいく。そして、製品や業者の候補が決まったら、条件を交渉して、稟議などの社内手続きを経て購買に至る。このような購買プロセスは、いくつかの段階にまとめることができる。例えば、「(1)情報収集」、「(2)製品検索」、「(3)評価・稟議・決裁」、そして「(4)購買」の4段階だ。この区分に従ってBtoBサイトの利用状況を分析した調査結果を紹介する。

2. 購買プロセス段階別のBtoBサイト利用状況を調査

「BtoBサイト上での購買プロセス遷移調査」は、BtoBサイトが購買プロセス上でどのような貢献をしているのかを明らかにすることを目的として、公益社団法人日本アドバタイザーズ協会 Web広告研究会が2014年の10月~11月に実施した。

「住宅設備・建材」、「ITサービス・ソリューション」、「オフィス機器」、「法人向けエネルギー」、「太陽光発電」、「医療介護施設」、「FA(制御機器)」の7業種を対象として、それぞれ代表的な2社を選び、そのBtoBサイトにアクセスしたことがある買い手側の100人前後(業種毎)を調査した。

調査内容は、購買プロセス別のBtoBサイトのアクセス状況に加えて、メルマガなどの各種サービスの利用状況やニーズの充足度などだ。この調査結果の中から、1つの例として「住宅設備・建材」業種を取り上げて、BtoBサイトにおける購買プロセス別の利用状況を紹介する。

3. 「住宅設備・建材」サイトは「製品検索」での利用が多い

まず、購買プロセスのどの段階からBtoBサイトを利用し始めたのかを見ていこう。【図1】の中央にある「流入」が利用し始めた段階を示している。「住宅設備・建材」のBtoBサイトを利用した98人の内訳は、「(1)情報収集」から利用し始めた人が38人、「(2)製品検索」からが44人、「(3)評価・稟議・決裁」からが16人となっており、「(2)製品検索」から利用し始めた人が一番多い。

「(1)情報収集」ではなく「(2)製品検索」の方が多かった理由としては、以前から知っていたので情報収集は不要であったか、展示会やカタログなど情報収集はリアルで済ませ、詳細な製品情報を調べるために「(2)製品検索」段階でWebサイトを使う購買者が多かったことが考えられる。

【図1】「住宅設備・建材」サイト訪問者の購買行動推移
【図1】「住宅設備・建材」サイト訪問者の購買行動推移
出所:日本アドバタイザーズ協会 Web広告研究会「BtoBサイト上での購買プロセス遷移調査」結果報告セミナー資料に基づいて富士通総研作成

次に、顧客は購買プロセスの複数段階でBtoBサイトを利用しているはずなので、購買プロセス段階毎の利用状況を紹介しよう。【図1】の「BtoBサイト内行動」が段階ごとの利用者数を示しており、「(1)情報収集」が38人、「(2)製品検索」が50人、「(3)評価・稟議・決裁」が27人となっている。この3つの段階を合計すると、のべ115人で、回答者1人当たり約1.2段階で利用していることが分かる。

一番利用者が多かった「(2)製品検索」の、BtoBサイトを利用した目的に応えられていたかを聞いた「ニーズ充足率」は69.9%となっており、サイトは販売活動に貢献していたようだ。また、「(2)製品検索」を利用した50人のうち、「(3)評価・稟議・決裁」も利用したのは11人だった。残りの人達は購買プロセスの次の段階に進まなかったわけではなく、14人は最終的に購買していた。これは、担当営業などBtoBサイト以外のリアルの営業活動やアプローチを経由して購買した結果と考えられる。

なお、業種によって購買プロセス別の利用状況は異なる。例えば、「ITサービス・ソリューション」業種は、「(1)情報収集」が48人、「(2)製品検索」が46人、「(3)評価・稟議・決裁」が30人と、「(1)情報収集」が「(2)製品検索」より多い(【図2】)。また、「オフィス機器」業種は、「(3)評価・稟議・決裁」が32人と、「住宅設備・建材」や「ITサービス・ソリューション」よりやや多くなっている。業種により営業スタイルや顧客ニーズが異なり、BtoBサイトの役割が異なっているのだろう。

【図2】業種別の購買プロセス段階別利用者数比較
【図2】業種別の購買プロセス段階別利用者数比較
出所:日本アドバタイザーズ協会 Web広告研究会「BtoBサイト上での購買プロセス遷移調査」結果報告セミナー資料に基づいて富士通総研作成

4. BtoBサイトをより活かすための「仕掛け」

この調査結果から何が分かるのだろうか? まず、購買プロセス別にBtoBサイトの利用状況を見た場合、顧客は購買プロセスのすべての段階でBtoBサイトを使うのではなく、必要な一部の段階だけで使っている様子が読み取れる。このため、購買プロセスの段階ごとに異なる顧客ニーズをきちんと把握し、そのニーズを充足させる適切なWebエクスペリエンスを提供することが重要になる。

また、BtoBサイトのコンテンツや機能に、アクセスした人の購買プロセス段階が分かる仕掛けをしておくことで顧客の検討状況を把握でき、営業上の強力な武器になる。実際、ある企業でアクセス状況を確認していたところ、顧客の1社が「製品検索」で突然利用し始めていることが分かった。そこで、営業担当者に知らせて取引先に問い合わせたところ、「決裁者が変わったので製品や取引先を見直している」という重要な情報をキャッチでき、いち早く取引先をフォローすることで、顧客損失を回避できたという。

今回紹介した利用状況は調査対象2社のケーススタディであり、個社によってBtoBサイトの利用状況は異なるだろう。自社サイトの購買プロセス別利用状況を「見える化」することで、サイトの役割を明確にすることができると同時に、改善の方向も見えてくる。さらに、利用者個別のアクセス状況を把握するための「仕掛け」を設けることで、BtoBサイトはよりビジネスに貢献し、社内で存在感を示すようになるはずだ。


田中 秀樹

田中 秀樹(たなか ひでき)
株式会社富士通総研 経済研究所 担当部長
マーケティング戦略支援コンサルティングなどを担当した後、経済研究所にてICTが企業や社会に与えるインパクトの調査に従事。著書に『プラットフォームビジネス最前線』(共編著)、『インターネット広告実践法』(共著)の他、『インターネット白書』等に記事原稿を多数掲載。