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期待されるeラーニング

(電気新聞「IT時代を読む」2001年10月16日掲載記事・富士通総研 田中秀樹)

ネットバブル崩壊の影響は、ネット通販やインターネット広告といった消費者向けビジネスだけでなく、eマーケットプレイスのような企業向けビジネスを手がける企業にも見られるようになり、Eビジネス全体に対する懐疑的な声も出始めている。このような低迷状態の中にあっても有望視されている数少ない分野の一つがeラーニングだ。

eラーニングでコスト削減が可能に

eラーニングとは、Web-Based Trainingとも呼ばれるように、インターネットを使った教育のことだが、広くITを活用した教育システムを意味することもある。従来から行われていたパソコンを使った教育(CAI)とはネットワークを活用している点が異なる。

eラーニングは、講師と受講者が教室に集まる集合教育方式と違い、必ずしも一ヵ所に集まる必要がなく、利用者の都合の良い時間や場所で受講でき、移動に必要な費用の削減や時間短縮が図れる。さらに、メールやチャットを使ったインストラクターとの対話型教育やパーソナライズが可能といった特徴もあるので、受講者のスキルに合わせたきめ細やかな対応も可能だ。また、高速アクセスが可能なブロードバンド・インフラを使うと、高品質の動画や音声の再生が可能となり、語学教育では正確な発音が表現できる等、eラーニングの効果が更に高まる。

eラーニングの対象分野は、1.初等・中等教育、2.大学やMBA等の高等教育、3.社内教育等の社会人教育、4.生涯教育、に分けられる。eラーニングには、パソコンやネットワーク・インフラが必要ということもあり、現在はIT企業の社内教育やMBA等の高等教育で主に利用されているが、今後は一般企業や初等・中等での利用も進むと予想される。

米国ではトレーニングコスト半減のケースも

ネットワーク機器ベンダーの米シスコシステムズでは、技術進歩が速く効率的な教育が求められるフィールドセールス要員のトレーニングに約500コースのeラーニングを導入している。これにより、教育コストを約50%削減でき、同時にセールス要員の本来のミッションである顧客への対応時間を増やすことができた。同社では、社内教育だけでなく、販売パートナー企業や顧客向け教育にもeラーニングを活用している。

オフィス機器メーカーの米ハーマンミラーでは約5000人のディーラー担当者を対象としてeラーニングを導入し始めた。トレーニングコースは、自己学習型、学習者とインストラクターが対話可能な非同期型、学習者同士がやり取り出来るライブ型があり、学習状況や参加対象に合わせて楽しめる工夫も取り入れている。また、同社のシステムには、学習状況を把握するトラッキング機能も備わっており、学習者の進捗状況が瞬時に把握できる。

調査会社の米IDCの予測によると、米国のeラーニング市場規模は、2003年は114億ドル、2004年は230億ドルに達し、対象分野もIT企業以外に広がると指摘している。

日米で普及環境が異なる

日本でも、日本IBMが全部で約500ある社内研修コースのうち43%をeラーニングに切り替える等、IT企業を中心に利用が始まった。また、最近は人材派遣のリクルートスタッフィングが派遣登録者の自宅学習用に導入したり、厚生労働省が離職予定者の公共職業訓練での活用を検討する等、IT企業以外にも利用が広がりつつある。

先進学習基盤協議会(ALIC)よると、2003年に1135億円の市場規模は、2005年には約3100億円に達すると予測されているが、これは米国と比較するとかなり小さい市場規模になっている。

この日米の差には、環境の違いが影響している。国土が広く移動に時間がかかる米国では、電話会議が一般的になっているように、移動コスト削減の意識が強く、eラーニング普及の土壌が出来ている。また、人材の流動化が進み、MBA取得をはじめとしたスキルアップニーズも高く、在宅での義務教育を認める自治体が多いことも米国のeラーニング普及のプラス要因だ。

教育に人と人が向き合って実施する部分は不可欠だ。従来の教育方法が全てeラーニングに置き換えられるわけはないが、様々なメリットを持つeラーニングを活用しない手はない。知識はeラーニングで取得させ、スキルは実技研修を行うといった使い分けの中で、eラーニングを普及させていく必要があるのかもしれない。


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