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Eビジネスのマーケット分類と3つの課題

富士通総研 田中秀樹

Eビジネス以前にも、EDI(Electronic Data Interchange)やCALS(Commerce at Light Speed)のように、ネットワークを使った事業活動の概念は提示されていたが、これらは閉じたネットワークを前提としていたため、コストが高い、業界ごとに標準が異なる、といった導入障害があった。インターネット技術の登場により、通信やネットワーク構築のコストダウンが図れ、ネットワークが世界的に広がるようになると同時に、これらの概念はEビジネスのなかに取りこまれたといえるだろう。

Eビジネスはテクノロジー先行のイメージを持たれがちだが、Eビジネスを価値あるものにするには、ビジネスモデルの評価が必要であり、テクノロジーとビジネスモデルを一体化させてはじめて、Eビジネスを成功に導くことができる。単に業務や取引を電子化するだけではなく、ビジネスプロセスの効率化や組織のリエンジニアリングを行うことが成功の秘訣である。

Eビジネスの影響

Eビジネスの影響としては、まず、ビジネスの効率化があげられる。インターネットは低コストでの情報流通が可能なツールであり、ほぼ全ての産業で、いかなる戦略にも活用でき、一企業の業務効率化や生産性向上から、業界構造変革にまで貢献する。インターネットにより、流通チャネルや情報収集力によって守られてきた既存産業構造の重要性が薄れて参入障壁が低下し、新規参入が容易になる。この結果、産業構造改革の可能性も生まれた。

また、企業の競争基盤が価格にシフトする、という影響もある。情報の発信コストが低いインターネットでは、既存のメディアと異なり膨大な情報が掲載されている。理論的には、買い手が多くの情報を持つほど交渉力が強まり、逆に売り手は不利になる。インターネットにより、買い手と売り手の間にあった情報量の非対称性(偏り)が解消され、買い手に優位な状況が築かれると、売り手は価格競争に陥る可能性が高い。

また、ウィナー・テイク・オールという現象も挙げられる。買い手や売り手が細分化されている場合は、買い手の交渉力は変化しない。ネットオークションのように、細分化された買い手や売り手の集積を作りだすと、ネットワーク効果が現れ、1社か2社で市場を独占することが可能になる。

Eビジネス市場分類

テキサス大学のeコマース研究センターは、Eビジネスとほぼ同義のインターネットビジネス市場を

  1. ISPや通信会社等のインフラ
  2. ブラウザーやDBソフト等のアプリケーション
  3. 広告ビジネスや証券サービス、ネットオークション等の仲介
  4. eコマース

の4階層に分類している。

2000年第2四半期の米国マーケットサイズは、(1) 752億ドル、(2) 389億ドル、(3) 367億ドル、(4) 670億ドル  となっており、Eビジネスの主力を担うイメージが強いeコマース市場より、実はインフラ市場の方が大きい。また、ビジネスの対象を基準にすると、イントラネット、BtoB、BtoCに分けることができる。この区分に従って、それぞれの概要と日本の市場規模を解説していく。

(1)イントラネット

イントラネットとは、企業などの組織内で情報共有や業務支援に活用するための、インターネット技術を使ったネットワークシステムのことを指す。文書情報の共有や電子メールなど、イントラネットの用途はグループウエアと重なる部分が多い。また、統合基幹業務ソフトのERP(Enterprise Resource Planning)、社内の知識共有を促進するナレッジ・マネジメント(Knowledge Managemen)、意思決定に必要な情報を抽出するBI(Business Intelligence)もインターネット技術を使うケースが多く、イントラネットに含まれる。

(2)BtoB

BtoBは、企業対企業という意味で、企業同士がインターネット等を利用して商取引の情報を交換したり、実際に取引を行ったりすることを指す。

市場を分類すると、

  1. 自社が運営するネット上で発注を行うインターネット調達
  2. 従来担当者が行っていた見積や発注確認等をネット上で行うインターネット販売
  3. 第三者企業によって運営されるオープン市場のeマーケットプレイス
  4. そしてシステムの企画や設計・保守を行うソリューション

の4つに分けることができる。市場拡大が先行したのは消費者向けのBtoCだったが、規模としてはBtoBの方が巨大な市場であり、2000年は21.6兆円、2005年には110.6兆円になると予測されている。

(3)BtoC

BtoCとは、Eビジネスで消費者向け取引または消費者向けビジネスを指す言葉である。BtoCは、大きくECとコンテンツに分けられる。

BtoCのECは、24時間営業の利便性、無限の陳列スペース、商品検索・比較の容易性といったメリットを持ち、コンピュータ関連商品、旅行、書籍などの商品を中心に利用が進んでいる。自社で仕入れた商品を販売する「小売型」と、商品の在庫を持たずに注文だけを伝える「仲介型」に分けることができ、プレイヤーは、ピュアプレイヤーとも呼ばれるインターネット上だけで営業するドットコムEC企業と、店舗やカタログ販売の小売事業からネットに進出したクリック&モルタルに分けられる。

日本のインターネットショップは2000年に2万7000店を超え、楽天市場に代表されるインターネット上の商店街オンラインモールや、ネットオークション、旅行、不動産、自動車等の仲介型も盛んになってきた。市場規模は、2000年8240億円(小売りに占める比率0.26%)、2005年13兆3000億円(同4.1%)と予測されている。

コンテンツビジネスでは、消費者に無料でコンテンツを提供し、Webサイトや電子メール等に広告を表示し、広告主から収入を得る事業がほとんどである。インターネット広告は、ユーザーとのインタラクティブな対応や、ワン・トゥ・ワン・マーケティングが可能といった既存のマスメディアとは異なる特性を持つ。2000年の市場規模は590億円で、総広告費の0.97%を占める。

Eビジネスの理想と現実

Eビジネスは、世界経済の牽引役として大きな期待がかけられ、数多くの企業が積極的に取り組んできたが、最も大きな期待を抱いたのは利用側よりも資本市場だった。

インターネットによる革新は産業革命に匹敵するとされ、1990年代後半には膨大なリスクマネーがベンチャーキャピタルに集まり、資金を求めるスタートアップ企業に流れ込んだ。アマゾン・ドットコムや、イーベイ等のネットベンチャーが短期間で成長できたのは、優れたテクノロジーや他社を寄せつけないビジネスモデルといった理由に加え、ベンチャーキャピタル(VC)と新規株式公開(IPO)による資金調達が可能だったためである。

全米ベンチャーキャピタル協会によると、1997年は172億ドルだった投資額は、1998年は227億ドル、1999年は638億ドルと急増し、2000年には1,026億ドルに達していた。しかし、Eビジネスの効果が過剰期待だったとの認識が広まると、資金はベンチャーキャピタルや株式市場から急速に流失し、2000年にネットバブルは崩壊した。

Eビジネスの旗手として注目されたネットベンチャーは、豊富な資金に後押しされ、先行優位を勝ち取るべく赤字覚悟で売上や顧客数拡大に走っていたが、資本市場の環境激変に伴い、従来企業と同じ利益重視の経営に急シフトした。だが、多くのネットベンチャーはこの環境変化に対応できず、閉鎖や破綻、リアルビジネスの配下へと追い込まれた。

ネットバブル崩壊により、Eビジネスに懐疑的な声も一部で出始めたが、2000年来の変調は過剰期待に対する一時的な反動であり、Eビジネスの可能性自体が失われたわけではない。目先の変動に惑わされない、継続的なEビジネスへの取り組みが求められている。

Eビジネスの課題

Eビジネスが広がるにつれ、今までの法規制では対応できない問題点や課題が表面化してきた。

 (1)セキュリティとサイバーテロ

  現在のインターネットでは完全なセキュリティが保証されていないだけでなく、他人になりすまして取引を行うことも可能だ。この対策として、公開鍵等の暗号方式、取引相手の信用を保証する第三者機関(Certification Authority)、指紋や瞳の虹彩といった人間の体の一部を使って認証を行うバイオメトリクスの導入が進められているが、全ての取引で認証が使われるようになるには時間がかかるだろう。

  また、サイバーテロの問題もある。ホームページの改ざんやデータの破壊などのネットワークへの不正侵入、大量の接続要求を送りサーバをパンクさせるサービス許否攻撃(DoS)、コンピューターウィルスの流布が主な手口だ。2000年にはヤフーやアマゾン・ドットコムといった米国の有力ネット企業がDoSの集中攻撃を受け、2001年にはSirCam、Code Red、Mimda、Badtrans Bとワーム型コンピューターウィルスが世界中に広まって感染する企業が続出し、情報インフラの脆弱性や破壊による脅威がクローズアップされている。米シマンテックによると、セキュリティー不履行やウィルス攻撃による全世界での経済的損失は年間1兆6,000億ドルに達するとされる。

 (2)税制問題

  ECの国際的な課税でも問題が発生している。消費者が海外のネットショップから購入した時、商品がモノの場合は税関で課税できるが、ダウンロードして購入するデジタルデータは補足が難しく事実上非課税となっている。

  経済協力開発機構(OECD)は、ダウンロード販売に関し、BtoBは輸入した企業が消費税を自ら納める「自己申告制」、BtoCは配信業者を消費者の住む国の税務当局に登録させ、登録業者から消費税を徴収する「登録制」を提案したが

  1. 取引相手が法人か消費者かの区別は困難
  2. 外国の税務当局登録して納税することが可能か
  3. 米国のように州政府に徴税権がある国では合意形成が難しい
  4. この提案に従う義務はない

といった理由で、課税がすぐに実現する可能性は低いと見られる。

 (3)著作権問題

   インターネットにより、消費者への音楽等のデジタルコンテンツの直接配信が容易になったという利点がある反面、簡単にコピーでき、不正コピーがナップスターのようなP2Pファイル交換で広範囲に拡散するといった新たな問題も発生した。

   不正コピーの蔓延を防ぎ、安全かつ合法的なデジタルコンテンツ流通を促進するには、

  1. 不正コピーや不正利用から著作物を保護する技術的手段の確立
  2. 著作権料の徴収・分配に関するシステムやルールの構築
  3. 著作権のほか、関連する著作隣接権・著作者人格権・肖像権などを含めた権利処理の簡便化

といった技術面、制度面の仕組み作りが必要となる。

【2002年1月作成】

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