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インターネット・ショッピングの現状と法的課題

(「財経詳報2000年9月5日」掲載原稿 富士通総研 田中秀樹)

インターネットでマンションが売れている。と言ってもインターネット上で契約されるわけではなく、ホームページや電子メールを通じた問い合わせがきっかけとなった販売のことだ。

不動産流通最大手の三井不動産販売では、インターネットをきっかけとする成約件数が1998年度の603件から、1999年度は1,668件と2.8倍に増えた。2002年度には、全取扱件数の3割にあたる1万件に伸ばすことを目標としている。「ライオンズマンション」で有名な大京でも、1999年度には前年度の3.6倍の1,091戸、396億円もの契約がインターネットを通じて発生した。

インターネット・ショッピングの現状

日本のインターネットはユーザー数2,000万人を超え、本格的な普及段階に入った。ユーザーの増加と経験年数の経過に伴い、インターネットを通じたショッピングの利用も急速に進んでいる。電子商取引実証推進協議会(ECOM)とアンダーセン・コンサルティングが推計した1999年の消費者向けEC市場は、対前年比517%の3,360億円に急拡大した。以後も順調な成長を続け、2000年の7,730億円を経て、2004年には6兆6,620億円に到達すると予測されている。さらに、この予測での家計消費支出に占めるEC支出の比率は、1999年で0.1%、2004年でも2.2%ときわめて低いため、市場規模はそれ以上に拡大する可能性もある。

EC市場規模とEC率

商品ジャンル別の市場内訳は、1999年では大きい方から不動産(880億円)、自動車(860億円)、パソコン(510億円)であった。それ以前からパソコン、旅行、書籍など、実際に手に取らなくても購入に踏み切れる品目が売れはじめていたが、この年にはネットによる不動産や自動車の商品情報仲介が急速に増え、上位を占めるようになった。

商品ジャンル別消費者EC市場規模

ネット・ショッパー像

富士通総研の今年2月の調査によると、インターネットで一度でも買い物をしたことがあると答えた人(ネットショッパー)はネット利用者の71.8%にのぼり、一年前の調査時の64.6%から10ポイント以上も増加した。男女別では、男性76.1%、女性67.5%と、男性のほうがやや高い。年代があがるほど比率が高まる傾向にあるが、ネットショッパー全体を100とした場合の年代構成比は、30代(43.1%)と20代(36.4%)で8割近くを占める。これはまだ、ネット利用者の年齢構成が30代以下の若い層に偏っているためだ。

ネットショッパーのこの半年間の利用状況は、1回(23.9%)と2−4回(46.8%)が合わせて7割を占め、全体的にはそれほど頻繁に利用しているわけではない。半年間でネットショッピングに費やした金額も、1万円未満が25.0%を占めるが、これは購入した商品の種類にもよるため、5万円以上も23.8%と広く分布している。回数の多い積極的なネットショッパーの中には書籍やCDを海外から購入するケースも見られ、12.3%が海外ショップを利用したことがある。

ショッピングの結果については、「非常に満足(40.4%)」と「まぁまぁ満足(55.1%)」が合わせて95%を超える反面、21%の人が何らかのトラブルを体験している。

ショップ間の格差が開く

では、インターネットで商品を販売する"ネットショップ"はどのような状況にあるのだろうか。現在、日本には2万8千店以上のネットショップがあると言われているが、ある程度の知名度を持ち、メディアに年間売上高が公開されるような大型店は全体のごく一部にすぎず、ほとんどは小規模なショップで構成されている。

主要ネットショップの売上高

富士通総研ではネットショップの実態把握を目的に、1999年4月に375店(回答146店)を対象としたアンケート調査を行った。ただし、この調査は日本のネットショップ全体の傾向を把握することを意図したものではないので、結果はあくまで対象範囲を限定したケーススタディと捉えていただきたい。

調査によると、ネットショップの運営主体は株式会社が32.2%、有限会社などそれ以外の法人が30.1%、残りの37.7%は個人であった。平均運営人数は専任者1名、兼任者1.6名と小人数だ。ネットショップだけを事業とする専業比率は全体で16.4%だが、個人運営に限ると25.5%に増える。これは、ネットショップで新たに独立開業した個人の存在を示している。

事業規模を示す平均月間売上高は70万9,726円で、100万円を超えるショップは5.7%と少ない。しかし、なかには月間売上高800万円という回答もあり、売れるショップとそうでないショップに格差があることが読み取れる。

規模の差は収支面にも表れている。1998年度の単年度収支は黒字が39.0%、収支均等21.2%、赤字32.2%と大半が採算を確保しているが、月間売上高が10万円未満の小規模ショップで黒字は15.2%に留まる。

ネットショップの新規開業数が増えた98年は、ネットショップの「わずかな資金で開業・成功できる」側面がマスコミなどでさかんに強調された時期と重なる。小規模事業がほとんどを占める背景には、安易な参入ラッシュがあったといえなくもない。実際に、4,000店が出店しているインターネットモールの「楽天市場」では、1店あたりの平均月間売上は50万円で半数が赤字といわれ、撤退していくショップも多い。

ネットショップの特徴

実際の店舗と比較した場合、ネットショップが自然に備える先天的な利点は、世界を相手に24時間営業できる「地理的・時間的制約の克服」、無限の陳列スペースで多種の品ぞろえを可能にする「物理的制約の克服」、そして、店舗の開設・維持コストや中間業者を省くことによる「価格の優位性」の3つに集約される。

また、ネットショップ間の価格を比較できる検索機能や、オークションなどの新しい販売形態の導入、ユーザー一人ひとりの嗜好に合わせた商品を推薦する技術といった環境的な要素も、消費者にとってのネットショップの魅力を高めている。商品を手に取って確かめられない欠点は、商品の種類によるが、売り手が提供する詳細な商品情報や、ネット上でユーザー同士が交換する情報で補うことも可能だ。

しかし、こうした利点や魅力だけで、ネットショップを成功させることはできない。実際の店舗と異なり、ネットショップには宣伝やプロモーションを行わない限り、誰も客はやって来ない。事業規模を拡大しようとすれば、それなりのマーケティング・コストをかける必要がある。また、先天的な利点だけに頼りにし、商品やサービス面の差別化要素を持たないショップは、消費者の支持を得られない。

消費者向けEC業界の淘汰がはじまっている米国の状況からは、仕入れた商品を販売する「小売業型」のネット専業ショップは、採算が取れないというビジネスモデル上の問題点も浮かび上がっている。ネットショップ運営は、けして簡単なものではない。

浮かび上がってきたさまざまな問題点

インターネット・ショッピングが急速に広がっていくにつれ、さまざまな問題点が浮かび上がってきた。

国民生活センターに寄せられたインターネット・ショッピングに関する苦情・相談件数は、1996年度の59件から、1999年度には12倍の710件に膨らんだ。色々なネットショップで商品を見比べながら、ホームページ上ですぐに注文ができるというインターネットの便利さが、逆にトラブルの原因となっている。二重に申し込んでしまったり、値段をはっきり意識しないまま、誤って申し込むケースも少なくない。特に海外ショップを利用する場合に多く見受けられる。

また、ネットの普及とともに、販売要員をねずみ算式に増やすマルチまがい商法などのトラブルも増えている。これまでは、友人や親戚などを対面勧誘することが多かったが、ネット上では個人が簡単に情報発信が出来るため不特定多数のユーザーを一度に勧誘することができ、さらにそのユーザーを即座に勧誘員として加えられることが急増の一因となった。

ネットを悪用した犯罪も増えている。警視庁によると、今年上半期の犯罪件数は200件を越え、昨年1年間の8割に達している。わいせつ物頒布が大半だが、ネットオークションを使った詐欺事件、未認可の医薬品販売、劇物の無許可販売なども含まれている。

消費者保護

こうした苦情や犯罪防止の対策として、日本通信販売協会と日本商工会議所は、申請した業者が審査基準を満たしていれば、いわゆる「マル適マーク」を与える、「オンライン・トラスト・マーク制度」を6月から開始した。8月時点で付与業者は既に100を超え、初年度目標の300社を上回る可能性が大きい。

通産省でも、訪問販売法を改正して消費者保護を強化する方針だ。訪問販売法は、その名の通り、訪問販売業者と消費者の取引公正化と消費者保護を目的として1976年に制定された。通信販売や電話勧誘販売の規定も追加されたが、インターネット特有の問題は想定されていない。例えば、現行法では通信販売業者に商品の内容、価格、事業者名、解約条件を広告上で表示するよう求めている。消費者は手元の広告を見て、電話や郵便で申し込みをするので、誤って申し込む可能性は少ない。しかし、ネットショップでは、表示が複数のページに分かれているため、ユーザーに分かりにくいことがある。このような場合、通産省が改善命令を出せるようにし、業者が従わない場合は罰則を科す規定も設ける。さらに、受注確認の電子メール配信、消費者が購入を取り消すための画面設置、消費者との取引きすべての記録などを義務づけるJIS規格を定め、2001年からの導入を目指している。

また、マルチまがい商法に対しては、誇大広告を禁止した訪問販売法の広告規制対象を現行の会社だけから、ネット上で不特定多数の消費者を簡単に勧誘できるようになった一般勧誘員にも広げる方向で検討している。

ネット取引課税

インターネット・ショッピングに課せられる税金も問題である。売上に対して一定割合を課す消費税や売上税のことだが、消費者が海外のネットショップから購入した時、商品がモノの場合は税関で課税できるが、ダウンロードして購入するソフトウェアや音楽データなどのデジタル商品については、補足が難しいので事実上非課税となっている。マーケットが小さいうちは無視できる存在だったが、ここ数年のマーケットの急成長で税当局としては見逃すわけにいかなくなった。経済協力開発機構(OECD)は、書籍などのモノについて、消費者のいる国の税務当局が販売したどの国の業者にでも徴税できる消費国主義とすることを1998年に結論したが、音楽配信などについてはルールが確立していなかった。7月に行われた沖縄サミットで、日本政府はネット取引課税の必要性に関し、首脳間の基本合意をとりつける考えだったが、採択されたIT憲章では、国際ルール作りの重要性を指摘しただけに留まった。この背景には欧米の思惑がある。

欧米の対立

欧州委員会はネット販売の課税方式を決定し、来年にも導入する予定だ。販売業者がネット経由で販売した商品にかかる付加価値税をまとめて消費者のいる国の税当局に納税する、日米など販売企業が域外の場合は欧州連合(EU)のいずれか一国の税当局に納税する、という課税方式を決定した。販売拠点がない外国企業にも納税を義務づけたのが特徴である。

これに対し米国は、産業の発展を妨げるとして慎重だ。欧州では付加価値税の税率が16−25%と高いのでネット課税に積極的だが、米国ではネット関連企業の雇用の創出や法人税収入への期待がある。

さらに米国内の問題も絡んでいる。米国では、州毎に税率の異なる売上税があり、徴税権は州政府が持っている。販売業者と消費者が同じ州内の場合は、販売業者が消費者から売上税を預かり州政府に納税する。しかし、州外の業者からモノを買うと、消費者は自分で納税書類を作り居住地の州政府に申告する義務が発生する。だが、自己申告する人はまずいない。このため、音楽配信だけでなく、書籍販売なども事実上課税されていない。各州が平等に徴収できるシステムができるまで、連邦政府は課税を暫定的に停止している。

テネシー大学のドナルド・ブース教授は、このネットの非課税販売が大問題になりそうな兆しが見えると警告した。今年行った調査では、2003年のカリフォルニア州の売上税収入損失は14億9000万ドルとなり、全州合計では110億ドルに達すると予測している。過去の経緯から、税収損失分を州の売上税率引き上げでまかなうと、各州は2003年までに税率を0.5~1%引き上げる必要があると指摘している。

規制緩和の要望書

問題点への対応が急がれる一方で、インターネット・ショッピングを普及させるための動きも活発である。経団連は「IT立国に向けた提言」と題する、インターネットで商取引を行う際に障害となる規制の緩和を求めた要望書を政府に提出した。内容は、書面交付を義務づけたり、対面販売を原則としているなど、ネット時代に適合しない規制を見直すことが中心となっている。

経団連の要望事項

例えば、通信販売業者は申し込み者から申し込みを受け、その対価を受け取ったときには、書面で申込内容を承諾したか否かを書面で通知しなければならない、と現行法では定められている。しかし、電子メールなら即時に連絡できるものを郵送していては時間がかかり、インターネットを使うメリットが少なくなる。旅行約款や旅行条件書の書面送付を義務付けられている旅行取引も、同様に電子化を求めている。ほかにも、書面による重要事項の直接説明が必要な生命保険、店舗構造設計基準や薬剤師による対面販売が前提となる医薬品など、ネット販売が認められていない分野の解禁も含まれる。
消費者保護を配慮しつつ、成長の見込めるネット産業振興に向けた環境整備が急がれている。


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