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米国消費者向けEC業界に見るビジネスモデルの変化

米国の消費者向け(B2C)ECの分野は、今まさに大変化の渦中にある。はじまりは昨年春に起きたNASDAQの株価暴落だった。これをきっかけに、俗にいうネットバブルが崩壊し、インターネット上だけで営業する”ドットコムEC企業(ピュアプレイヤーともいわれる)”のほとんどが、追加資金調達の道を断たれ、資金枯渇による破綻への道を歩んだ。しかし、こうした状況にもかかわらず、市場は順調に成長を続けている。変わりつつあるのは、市場を担うプレイヤーの顔ぶれなのだ。
(富士通総研 倉持真理 2001年7月)

ドットコムEC企業の破綻の本質的な原因を端的にいえば、利益を出せるビジネスモデルではなかったことである。破綻した企業の多くは、仕入れた商品を販売する小売業型のビジネスモデルだったが、売上げから商品の仕入れ代を引いたわずかな粗利では、クレジットカード手数料や配送・注文処理などにかかる最低限の運営コストをカバーするのも難しく、しかも、消費者に馴染みのない新しい企業のウェブサイトに人を集めるためには、多額の広告宣伝費が必要だった。

こうした企業は、そのまま営業を続けても黒字に転換できる見込みはほとんどなかった。ベンチャー投資や株式市場からのドットコムEC企業への資金注入は、今にして思えば、底に穴の開いたバケツに上から水を注ぐに等しい行為だった。

このような経緯で、昨年から今年にかけて多くの企業が姿を消し、現在の消費者向けECの企業数は、一時と比べて減少したと推測される。また、株価絡みのメディア報道も激減したため、消費者向けEC市場自体が停滞してしまったかのような印象すら漂っている。

しかし、現実は必ずしも印象どおりではない。米国商務省統計局の発表した2001年1-3月の消費者向けEC販売額は、前年同期比33.5%増の約70億ドルで、クリスマス・シーズンで売上げが集中する前期(2000年10-12月)の86.7億ドルにはさすがに及ばないものの、その前の7-9月の6.4億ドルと比べて9.4%の増加と、着実に成長している。ネットバブル崩壊や株式市場の動向とかかわりなく、ECは米国消費者の生活にしっかり根づいているのだ。

少数派となったドットコムEC企業に代わって、台頭しつつあるのがクリック&モルタル、またはブリック&クリックといわれる企業群である。これは店舗の建物を表す「ブリック&モルタル(レンガと漆喰)」という表現に、インターネットを意味する「クリック」を混ぜた造語で、店舗や紙のカタログなど、昔ながらの販売チャネルを通じてビジネスを行う企業が、インターネットに進出した状態を指す。複数のチャネルを持つことから、マルチチャネルと呼ばれることもある。

クリック&モルタルの草分けである大手書店チェーンのバーンズ&ノーブルは、1997年にアマゾン・ドットコムに対抗してEC事業を開始した。ウォルマートも同じ年に参入し、1998年以降、ギャップ、トイザらス、JCペニー、ターゲットなど大手の有名小売業が次々とインターネット上に出店した。しかし、これらの企業はウェブサイトの設計・構築能力やネットマーケティングのノウハウ、そしてインターネットに詳しい人材を欠いてたため、進出当初の数年はドットコムEC企業に歯が立たなかった。結局、クリック&モルタルがはじめてドットコムEC企業と互角に渡り合えたのは、昨年のクリスマス・シーズンからであり、これは主にドットコムEC企業が衰退したためだった。

ネットバブルに伴うドットコムEC企業の隆盛と衰退、そしてクリック&モルタルへの主役交代は、当然の帰結のようにも見える。しかし、クリック&モルタルであることは、それだけでEC事業の成功を意味するものではない。

クリック&モルタルの強みは、消費者に浸透したブランド力と、仕入れなどの効率性、そして何より、インターネットで注文して店頭で受け取るといった、複数チャネルを組み合わせた価値を提供できることにあるが、多くの企業は、このうちブランド力しか発揮できていないのが実情だ。さらに、全事業を合算した業績数値に紛れておもてに出ることはないが、EC事業単独で見れば、ほとんどのクリック&モルタルは赤字のはずである。

一方、ドットコムEC企業のなかには、自ら厳しい構造改革に取り組み、なんとか生き延びようとしているアマゾン・ドットコムのような企業もある。今後の業界のリーダーシップを握るのが、生き延びたドットコムか、クリック&モルタルのいずれであったとしても、ECが発展していくためになされるべきことはまだ多い。

この文章は、2001年6月26日付けの電気新聞「IT時代を読む」掲載記事に、一部加筆したものです。


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