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98年米国ホリデイ・シーズン開幕。

オンラインショッピング飛躍の鍵はギフト対応にある?

木曜日がサンクスギビング・デイ(感謝祭)となる11月第4週からクリスマスにかけては、ホリデイ・シーズンと呼ばれ、米国では1年中で最も消費が活発になる時期だ。小売業種によっては、年間売上の半分までが集中するといわれるこの時期は、発展途上にあるオンラインショッピング市場にとっても、今年の成長幅をどこまで伸ばし、翌年以降につなげられるかを占う上で重要な意味を持つ。今シーズンのオンラインショッピング市場に関する二種類の予測と、今年からはじまったオンラインショッピング振興策をレポートする。

ジュピター予測:市場は伸びるがギフト利用は手

調査会社ジュピター・コミュニケーションズ(http://www.jup.com)によれば、今年のホリデイ・シーズンのオンラインショッピング売上は23億ドルにのぼり、前年の11億ドルから倍以上の成長を遂げる。同社は今年のオンラインショッピング市場はトータルで58億ドルと予測しており、ホリデイ・シーズンの売上はその約4割を占めることになる。

しかし、この時期のショッピング需要の原動力といえるギフトの売上は、23億ドルのうち16%にしかならないという。調査によれば、オンラインショッピング経験のあるユーザーのうち、これまでオンラインで費やした金額の多くをギフト購入にあてたと答えたのはたった11%で、ユーザーの59%は、ギフトにかけた金額は全体の10%未満と答えていた。つまり、オンラインショッピング市場は、自分用の買い物をする「セルフバイヤー」によって支えられているといえる。

ホリデイ・シーズンは、これまでオンラインショッピング経験のないユーザーを新規顧客として獲得するのに最適な時期ではあるが、今年はそれに加え、既存ユーザーの利用金額をさらに増やすことが課題になると同社は指摘。そのためには、ユーザーを「セルフバイヤー」から「ギフトバイヤー」に変えられるかどうかが、飛躍の鍵を握る最大のポイントになると予想している。

背景には、オンラインショッピングも市場が成熟するにつれ、成長の基盤を新規顧客の獲得から既存顧客の維持・育成に重点を移す時期に来ていることがある。オンラインショップにとっては、既存顧客のギフト利用の開拓こそ、顧客の支出における自社のシェアを高める維持・育成戦略につながる、というのが同社の見解だ。

ギフト利用を引きつけるための具体的な方策として同社は、ギフト・レジストリー機能の付加を挙げている。ユーザーが自分のほしいものをオンライン上のリストに登録し、ギフトを贈る側が、このリストを見て本人の希望する品を購入する仕組みのため、オンラインショップのレジストリーにほしいものが登録されれば、贈り手が品物をそのショップで購入する可能性が高まると考えられるのだ。ギフト・レジストリーに限らず、このようなユーザーの情報を取る仕組みで顧客データベースを強化し、顧客のライフタイム・バリューを最大化する努力をすべきだと、同社は提言している。

なお、同社提言のギフト・レジストリーについては、筆者も多少の考察を加えてみたい。本来、個人のほしいものリストには、一カ所の店での買い物では済まないさまざまな品物が載せられるはずなので、レジストリーは個々のオンラインショップに備えられるより、ショップから独立した場所に備えられる方がユーザーにとっては使いやすい。このためシーズン本番に向け、ポータルやショップ検索サービスなどにレジストリーが付加されることも予想される*1。その場合、レジストリーは個々のショップの顧客囲い込みや売上強化策にはつながらないが、オンラインショッピング市場全体の引き上げには功を奏すはずである。

NRF/ディロイト&トゥーシュ予測:総予算の27%がオンラインに

もう一つの予測は、米国小売業協会(National Retail Federation、略称NRF、http://www.nrf.com)が毎年行っているホリデイ・シーズン消費ムード調査*2だ。オンラインショッピングを含む小売業全体の動向を占うこの調査では、今シーズンの小売売上は、94年以降二番めに高い成長率を記録すると予想している。

調査によれば、消費者は今シーズン前年比4.5%増の一人あたり814ドルを費やす予定であることが判明。しかし、ここ数年、消費者は金額を低く見積もる傾向にある上、堅調な経済が続いていることも手伝って、実際の消費金額はもう少し増える。株式市場が夏の値下がりから回復すれば、さらに予定と実際の金額の差は拡大するという。結果として、11月と12月の小売売上は前年比5−6%増となり、ホリデイ・シーズンに売上が集中する家電や玩具、衣類、家具、家庭用品などの売上は、1720億から1740億ドルに達すると予測している。

消費者はこの時期、一人あたり平均25個のギフトを購入するが、40個以上という人も五人に一人はいるという。ギフトの中身は従来と変わらず、衣類と玩具が圧倒的な人気を持つ。近年は商品券の人気も高いそうだ。

全体的な楽観ムードのなか、ショッピング・チャネルとしてのインターネットの重要性も引き続き高まり、インターネット・ユーザーの30%がオンラインでのギフト購入を予定。総予算の27%にあたる270ドルをオンラインで費やそうとしていることが判明した。オンラインでの購入予算の比率は、前年の25%に比べ2ポイント上昇している。

このほか調査では、小売業者が今年のシーズンはじまりを例年より前倒しし、ホリデイ・ショッピングのムードを早くから盛り上げようとしていることも明らかになった。業者のこの作戦に消費者は積極的な反応を見せ、すでに10月末までの時点で163ドルを消費。前年の74ドルに比べ、かなり前倒し分が増えている。その一方で、クリスマス過ぎの値下がりを待とうとする人も増えているため、今年のシーズンは前後に長くなると予想されている。

「ナショナル・オンラインショッピング・ウィーク」開始

好調が期待される今シーズン、業界内では一致協力したオンラインショッピング振興策も打ち出されている。11月27日から12月4日までの1週間をナショナル・オンラインショッピング・ウィークと定め、大々的なキャンペーンを行おうとする試みがその代表的なものだ。

今年が第1回めとなるこのキャンペーンは、マスターカードとオンラインショップの業界団体shop.org(http://www.shop.org)、双方向メディア協会(The Association of Interactive Media、http://www.interactivehg.org)など*3が中心となって企画するもので、一定基準を満たしたオンラインショップに参加資格が与えられる。参加条件は、最新のセキュリティ・トランザクション・プロトコルの採用と、オンラインでのプライバシー・ポリシー公開に加え、期間中ユーザーに送料・ギフトラッピングの無料サービスやディスカウント、特別プレゼント、くじ引き、慈善事業への寄付といったインセンティブを提供できることだ。

キャンペーンでは、中心となるWWWサイト(http://www.OnlineShoppingWeek.com) を設け、ユーザーにオンラインでの支払いセキュリティに関する情報やショッピングのアドバイスなどを提供する啓蒙活動とアンケート調査を行うほか、参加ショップで受けられる期間中の特別サービスを紹介し、リンクを置く。参加ショップは、それぞれのWWWサイトにオンラインショッピング・ウィークのロゴマークやバナーを飾って、キャンペーンへの参加を示す。

個々のオンラインショップの売上効果というより、全体的なムードの盛り上げ効果を狙うものとはいえ、このようなキャンペーンは、オンラインショッピングの定着を世間に印象づけ、これからの時期、WWWに彩りと賑やかさを加えると期待される。

*1 ライコスがすでに実施中(http://pagebuilder.lycos.com/wishlist/gallery/)。ユーザーは個人用ホームページにほしいもののリストを載せたページを加える方式。リスト上の商品名をクリックすると、該当商品を扱っているライコスの提携ショップにリンクする仕組みにできる。

*2 調査タイトル『Mood Survey: Retail Holiday Outlook 』。毎年秋に、各小売業種を代表する大小規模の小売企業50社へのアンケートと、全米の人口統計の構成に合わせた1000人の消費者への聞き取り調査を実施し、結果をまとめて発表している。調査実施はコンサルティング会社のディロイト&トゥーシュ(http://www.dttus.com)が行った。

*3 マスターカード、shop.org、双方向メディア協会のほか、オンライン・プロモーション業者のEZスプリー(http://www.ezspree.com)、コンピュータ雑誌『ファミリーPCマガジン(http://www.familypc.com)』が協力している。


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